物理 / 気体の熱力学
ヒートポンプは電気の何倍の熱を運ぶか
問題
温度 の物体と温度 の物体の間ではたらく可逆なカルノーサイクルの熱効率は、 である。可逆なサイクルは逆向きに運転でき、そのときは外から仕事を受けて、低温の物体から熱を吸収し、高温の物体に熱を放出する。
冬に、外気 から熱をくみ上げて室内 を暖める暖房機(ヒートポンプ)を、このカルノーサイクルを逆向きに運転するものとして考える。
(1) と の間ではたらくカルノーサイクルの熱効率を求めよ。
(2) このヒートポンプで室内に の熱を放出するために必要な仕事と、外気から吸収する熱を求めよ。
(3) 同じ の熱を電熱線のヒーターで発生させるときに必要な電気エネルギーと比較せよ。また、ヒートポンプの方法はエネルギー保存の法則に反しないかを説明せよ。
(4) 外気が に下がると、(2)の仕事は何倍になるか。
(5) 同じサイクルを冷蔵庫として運転し、 の庫内から熱を吸収して の室内に放出する。 の仕事で庫内から吸収できる熱は、最大で何 J か。
ヒントを見る
順向きのカルノーサイクルで、高温から吸収する熱・仕事・低温に放出する熱の比はどうなっているか。逆向きでは、その3つの矢印の向きがどうなるか。室内に放出される熱は、何と何の和か。
解答・解説
方針
可逆なサイクルを逆向きに運転すると、熱と仕事の矢印がすべて逆になり、量の比は変化しない。順向きで「高温から吸収した熱の 倍が仕事になる」なら、逆向きでは「高温に放出する熱の 倍の仕事が必要」である。室内に放出する熱は、受けた仕事と外気から吸収した熱の和になる。
解答
⓪ 発想(どう考え始めるか) 順向きのカルノーサイクルは、高温の物体から熱 を吸収し、その 倍を仕事 に変換し、差の を低温の物体に放出する。
可逆なサイクルを逆向きに運転すると、3つの矢印の向きがすべて反対になり、量の比はそのまま保たれる。つまり、仕事 を受けて低温から を吸収し、高温に を放出する。必要な仕事は放出する熱の 倍である。
① 熱効率。
② 必要な仕事と吸収する熱。 室内に放出する熱 の 倍が、必要な仕事である。
外気から吸収する熱は、その差である。
③ 電熱線との比較。 電熱線では、電気エネルギーがそのまま熱になるので、 の熱には の電気エネルギーが必要である。ヒートポンプでは で、 である。
ヒートポンプは熱を発生させているのではなく、外気がもつ の熱を室内へ運んでいる。室内に放出する は、受けた仕事 と外気から運んだ の和なので、エネルギー保存の法則には反しない。
④ 外気が冷えたとき。 と の間では、 である。同じ を放出するのに必要な仕事は で、 倍になる。温度差が 倍になると、必要な仕事もほぼ 倍になる。
⑤ 冷蔵庫として運転するとき。 今度は庫内から吸収する熱 が目的である。、 なので、次のようになる。
の仕事で、最大 の熱を庫内から運び出せる。
まとめ 可逆なサイクルを逆向きに運転すると、仕事を用いて低温から高温へ熱を運べる。運べる熱は仕事の何倍にもなり、その倍率は で、温度差が小さいほど大きい。
発展。 暖房で室内に放出する熱と、受けた仕事の比を、成績係数(COP)という。この問題の理想的な値は である。実際の機器では、熱を伝達するときの温度差や摩擦などの損失があるので、成績係数はこの上限よりかなり小さくなる。
(1) (2) 仕事 、外気から吸収する熱 (3) ヒーターでは の電気エネルギーが必要で、ヒートポンプではその の電気エネルギーで同じ熱が得られる。室内に放出する は、受けた仕事 と外気から運んだ熱 の和なので、エネルギー保存の法則に反しない (4) 倍 (5)
別解
別解:可逆なサイクルで成り立つ を用いる。 熱効率の式 を比較すると、可逆なカルノーサイクルでは熱の比が温度の比に等しい。これは逆向きに運転しても成り立つ。
熱効率を経由せず、②の値が直接得られる。冷蔵庫の場合も、 と同じ形で表せる。
ポイント
- 可逆なサイクルを逆向きに運転すると、仕事を受けて低温から高温へ熱を運ぶ
- 室内に放出する熱 = 仕事 + 外気から吸収した熱。ヒートポンプは熱を発生させるのではなく運ぶ
- 必要な仕事は放出する熱の 倍。温度差が大きいほど仕事が増加する
よくある間違い
- 必要な仕事を とする。逆向きの運転では、仕事は放出する熱の 倍であり、 で割るのではない
- 室内に放出する を、仕事と外気の熱の差と考える。和である
- 温度をセルシウス温度で計算する。カルノーサイクルの式は絶対温度で用いる