物理 / 気体の熱力学

ガソリンエンジンの理論効率は圧縮比で定まる

★★★★ 難関熱機関断熱変化熱効率

問題

ガソリンエンジンを理想化したサイクル(オットーサイクル)を考える。 mol の2原子分子理想気体(定積モル比熱 、比熱比 )に、次の変化をこの順に行わせる。

A→B: 断熱圧縮。体積を から にする(圧縮比 )

B→C: 体積を一定に保って加熱する(燃料の燃焼にあたる)

C→D: 断熱膨張。体積を にもどす

D→A: 体積を一定に保って冷却する(排気にあたる)

断熱変化では が一定である。A の温度は 、C の温度は とし、 とする。

VPOABCDV₁/8V₁
オットーサイクル。A→B と C→D は断熱変化、B→C と D→A は定積変化

(1) B と D の温度を求めよ。

(2) B→C で吸収する熱に対する、D→A で放出する熱の比を求めよ。また、このサイクルの熱効率を求めよ。

(3) 熱効率が C の温度によらず、圧縮比だけで定まることを導け。

(4) 同じ と の間ではたらくカルノーサイクルの熱効率 と比較し、オットーサイクルの熱効率のほうが低い理由を述べよ。

ヒントを見る

A→B と C→D は、どちらも体積が 倍異なる2つの状態を結ぶ断熱変化である。それぞれの温度の比はいくらか。熱を吸収するのはどの区間で、放出するのはどの区間か。

解答・解説

方針

断熱変化の 一定 で B と D の温度を求める。熱の出入りは定積の2つの区間だけで、どちらも で表せる。2本の断熱線は体積の比が同じなので、温度の比も同じになり、熱の比が圧縮比だけで表される。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 4つの区間のうち、熱が出入りするのは定積の B→C と D→A だけで、断熱の区間では熱の出入りがない。そこで、まず断熱変化の式で4点の温度をすべて求め、2つの定積の区間の熱を で表す。

2本の断熱線は、どちらも体積が 倍異なる状態を結んでいる。そのため温度の比はどちらも で等しく、熱の比が圧縮比だけで定まることが予想できる。

① B と D の温度。 A→B では が一定なので、次のようになる。

C→D でも体積が 倍になるので、温度は 倍である。

② 熱の比と熱効率。 定積の区間の熱は である。B→C で吸収する熱と D→A で放出する熱の比は次のとおりである。

熱効率は である。

公式熱効率

③ 圧縮比だけで定まる理由。 圧縮比を とすると、、 である。これを代入すると、次のようになる。

熱効率は で、 は消去される。、 なら で、②と一致する。

VPOA 300 KB 690 KC 1800 KD 783 K吸収放出
4点の温度。熱を吸収するのは 690 K から 1800 K に上昇する B→C、放出するのは 783 K から 300 K に下がる D→A

④ カルノーサイクルとの比較。 カルノーサイクルの熱効率は である。

カルノーサイクルは、最高温度 で熱を吸収し、最低温度 で熱を放出する。オットーサイクルは、温度が から まで上昇する間に熱を吸収し、 から まで下がる間に熱を放出する。吸収する熱の一部は最高温度より低い温度で、放出する熱の一部は最低温度より高い温度でやりとりされるので、効率が低くなる。

まとめ オットーサイクルの熱効率は で、燃焼の温度ではなく圧縮比で定まる。最高と最低の温度だけで熱をやりとりするカルノーサイクルの効率は、同じ温度の範囲では上回れない。

発展。 圧縮比を大きくすると効率は上がるが、ガソリンエンジンでは圧縮した混合気の温度が高くなりすぎ、点火する前に燃料が自然に発火しやすくなる。空気だけを圧縮して燃料を噴射し、自然に発火させるディーゼル機関は、この制約がないので、より大きな圧縮比で運転される。

答

(1) 、 (2) 比は 、熱効率は約 (3) 、 より、 で、熱効率は (4) カルノーサイクルは約 。オットーサイクルは、熱を吸収する温度が から にわたり、放出する温度も から にわたるので、最高と最低の温度だけで熱をやりとりするカルノーサイクルより効率が低い

別解

別解:温度の比に着目して、A と B の間のカルノー効率に帰着させる。 2本の断熱線の温度の比が等しいので、 である。この比を とおくと、、 なので、次のようになる。

熱効率は である。オットーサイクルの効率は、圧縮の始めと終わりの温度 と の間ではたらくカルノーサイクルの効率に等しい。燃焼でどれだけ高温にしても、効率を決定するのは圧縮で到達する温度である。

ポイント

  • 断熱変化の 一定 で、4点の温度を求める
  • 。熱効率は圧縮比だけで定まる
  • 熱効率は、A と B の温度の間のカルノー効率 に等しい

よくある間違い

  • 断熱変化の式を 一定 とする。圧力と体積なら 、温度と体積なら が一定である
  • B→C や D→A の熱を で計算する。体積一定の変化なので を用いる
  • 熱効率の分母に、放出した D→A の熱も含める。分母は吸収した B→C の熱だけである