物理 / 気体の熱力学
浮沈子はどの深さで沈み始めるか
問題
質量 のガラスの小さな試験管に空気を封入し、口を下にして水に浮かべる。ガラスそのものの体積は で、水面に浮いているとき、中の空気の体積は である。
この試験管を水中に押し込み、深さ で静かに放す。水の密度を 、大気圧 を水深 の水圧と等しい とし、水温は一定とする。試験管の大きさは より十分小さく、中の空気の圧力は深さ の水圧に等しいとみなす。
(1) 水面に浮いているとき、水面より上にある部分の体積を求めよ。
(2) 深さ [m] での中の空気の体積を で表せ。
(3) 試験管が浮きも沈みもしない深さを求めよ。
(4) 深さ と で放すと、試験管はそれぞれどうなるか。理由とともに述べよ。
(5) 水面に浮いている試験管を、水を満たして密閉したペットボトルの中に浮かべ、ボトルを手で押して中の圧力を高める。試験管が沈み始めるのは、ボトル内の圧力を大気圧よりどれだけ高めたときか。
ヒントを見る
浮力を決定するのは、水を押しのけている体積である。深く沈めると、どの部分の体積が変化するか。つり合いの深さより少しだけ深くすると、浮力は重さより大きくなるか、小さくなるか。
解答・解説
方針
浮力は水中にある部分の体積で定まる。ガラスの体積は一定で、空気の体積だけが深さとともに減少する。ボイルの法則で空気の体積を深さの式にし、浮力と重さが等しくなる深さを求める。つり合いの深さから少しずれたとき、浮力が元の深さへ押し返す向きにはたらくかどうかで、つり合いの安定・不安定を判断する。
解答
⓪ 発想(どう考え始めるか) 試験管にはたらく力は、重さと浮力の2つである。重さは 分で一定だが、浮力は押しのけている水の体積で定まる。ガラスの体積は変化しないので、変化するのは中の空気の体積だけである。
空気は深いところほど大きな水圧で圧縮される。そこで、ボイルの法則で空気の体積を深さの式にし、浮力が重さと等しくなる深さを求める。最後に、その深さからずれたときに浮力が「元に戻す向き」にはたらくかを考える。
① 水面に浮いているとき。 重さ と浮力がつり合うので、水中にある部分の体積は、水 分の である。全体の体積は なので、水面より上にある部分は次のとおりである。
② 深さ での空気の体積。 深さ [m] の水圧は で、 は水深 の水圧なので と表せる。温度一定だから、ボイルの法則より次の式になる。
で、体積は半分の になる。
③ つり合いの深さ。 試験管全体が水中にあるとき、浮力は水 分の重さである。これが 分の重さと等しいので、条件は である。
空気が から に縮む、つまり圧力が 倍になる深さである。
④ つり合いの安定性。 深さ では で、浮力が重さより大きいので浮かび上がる。浮かぶと水圧が下がって空気がさらにふくらみ、浮力は増加する一方なので、そのまま水面まで上がる。
深さ では で、浮力が重さより小さいので沈む。沈むと空気がさらに縮んで浮力が減少するので、そのまま底に達する。
つり合いの深さからずれると、ずれた向きにさらに移動させる力がはたらく。 のつり合いは不安定なつり合いである。
⑤ ペットボトルの浮沈子。 試験管のある位置は浅いので、空気の圧力はボトル内の圧力とみなせる。沈み始めるのは空気が まで縮んだとき、すなわち圧力が になったときである。高める圧力は次のとおりである。
手をゆるめて圧力を元の値にすると、空気がふくらんで再び浮かび上がる。
まとめ 浮力は押しのけた体積で定まるので、気体を含む物体の浮力は深さとともに変化する。体積が深さとともに減少するので、つり合いの深さは不安定になる。
発展。 硬い物体なら体積は深さによらないので、浮力も深さによらない。気体を含む物体だけ、深さによって浮力が変化する。スキューバダイビングでは、浮力調整具の中の空気の量を深さに応じて調節し、この不安定さを補っている。
(1) (2) (3) (4) では水面まで浮かび上がり、 では底まで沈む。深いほど空気が縮んで浮力が減少するので、 のつり合いは不安定である (5)
別解
別解:体積の式を立てずに、圧力の比で考える。 つり合いの条件は、空気の体積が 、つまり水面での の になることである。ボイルの法則では体積と圧力が反比例するので、圧力が 倍の になればよい。
水圧が だけ増加するのは深さ なので、 だけ増加するのは である。⑤のペットボトルでも必要な増加は同じ で、「深く沈める」ことと「ボトルを押す」ことは、どちらも空気の圧力を上げる方法である。
ポイント
- 浮力は押しのけた体積で定まる。気体の部分の体積だけが深さで変化する
- ボイルの法則で体積を深さの式にする。深さ ごとに、水圧は大気圧の分だけ増加する
- ずれた向きにさらに力がはたらくつり合いは不安定。深い側では底まで沈む
よくある間違い
- ガラスの体積 を浮力に含め忘れて、空気の体積が になる深さを求めてしまう
- 水圧を だけとして、大気圧 を加算し忘れる。水面でも空気は で押されている
- つり合いの深さで放すと静止するので、その前後で放しても元の深さに復帰すると考える。浮力の変化の向きを確認すると、不安定なつり合いである