物理 / 電流と磁場
張力をかけた柔らかい導線は磁場中で円弧になる
問題
十分に柔らかく軽い導線の両端を、 離れた2点 A、B に固定し、導線に大きさ の張力を保つ。導線を含む平面(紙面)に垂直に、紙面の表から裏の向きに磁束密度 の一様な磁場がある。導線に の電流を A から B の向きに流すと、導線は紙面内で曲がった形になって静止した。導線の長さは十分にあり、重力は無視する。
(1) 導線の微小な部分(長さ )が磁場から受ける力の大きさと向きを述べよ。
(2) 導線の微小な部分の両端にはたらく張力と、(1)の力のつり合いから、導線は半径 の円弧になることを説明し、 の値を求めよ。
(3) 導線の中央の点は直線 AB から何 m 離れているか。
(4) 電荷 、運動量の大きさ の荷電粒子が、同じ磁場の中で描く円の半径は である。導線の形がある荷電粒子の軌道と一致する条件を、、、、 で表せ。
(5) 速さ の陽子(質量 、電荷 )の軌道を、電流 の導線で再現するには、張力をいくらにすればよいか。
ヒントを見る
曲がった導線の微小な部分の両端では、張力の向きがわずかに異なる。その合力の大きさを、張力と微小な部分の曲がりの角度で表すとどうなるか。
解答・解説
方針
導線の微小な部分は磁場から導線に垂直な力 を受ける。両端の張力は大きさが等しく向きがわずかに異なり、その合力 が磁場からの力とつり合う。どの部分でも曲がり方が同じなので、導線は半径 の円弧になり、荷電粒子の円運動の半径 と同じ形の式になる。
解答
⓪ 発想(どう考え始めるか) 導線は軽いので、どの微小な部分でも、両端の張力と磁場からの力がつり合っている。張力は導線に沿う向きで、曲がった部分の両端では向きがわずかに異なるので、合力が残存する。
この合力と磁場からの力のつり合いの式は、荷電粒子の円運動の運動方程式とよく似た形になる。導線の形と荷電粒子の軌道は、同じ考え方で求められる。
① 微小な部分が受ける力。 磁場に垂直な導線の部分は大きさ の力を受け、その向きは導線と磁場の両方に垂直である。導線は紙面内にあり、磁場は紙面に垂直なので、力は紙面内で導線に垂直な向きである。
② 円弧になる理由。 微小な部分の両端の張力は大きさ で、向きの違いを とすると、合力の大きさは で、曲がりの内側を向く。これが磁場からの力とつり合う。
は曲がりの半径で、、、 はどの部分でも等しいので、導線は一定の半径の円弧になる。
③ 中央の点のずれ。 弦 AB の長さは で、円の中心から弦までの距離は である。中央の点は直線 AB から 離れている。
④ 荷電粒子の軌道との対応。 半径が等しい条件 から、次のようになる。
導線の張力が粒子の運動量に、電流が電荷に対応する。
⑤ 陽子の軌道を再現する張力。 陽子の運動量は で、 である。
このとき導線の半径は で、陽子の軌道の半径 に等しい。
まとめ 柔らかい導線の微小な部分では、張力の合力 と磁場からの力 がつり合い、導線は半径 の円弧になる。 のとき、導線の形は荷電粒子の軌道と一致する。
発展。 磁場の分布が複雑な装置では、張力と電流を調整した導線を設置し、その形から荷電粒子の軌道を求める方法が用いられたことがある。磁場が一様でなくても、各部分で同じつり合いが成り立つので、導線の形は粒子の軌道と一致する。
(1) 大きさ で、導線に垂直な向き (2) 微小な部分の両端の張力の合力は、中心角を として で円の中心へ向かう。 と から (3) (4) (5)
別解
別解:導線の半分にはたらく力のつり合いで考える。 導線を中央の点で2つに分割し、A 側の半分を考える。この部分には、A 端と中央の点で張力がはたらき、磁場からの力の合力は、弦(A から中央の点まで)の長さを として で、弦に垂直である(曲がった導線が受ける力は、両端を結ぶまっすぐな導線が受ける力に等しい)。
半径 の円弧で、A 側の半分の弦の中心角を とすると、2つの張力の合力は で、弦の長さは である。つり合いの式 から となり、②と一致する。
ポイント
- 微小な部分の両端の張力の合力は で、曲がりの内側を向く
- から、導線は半径 の円弧になる
- のとき、導線の形は荷電粒子の軌道と一致する
よくある間違い
- 張力は導線に沿う向きなので、磁場からの力とつり合うことはないと考える。曲がった部分の両端では張力の向きが異なり、合力が生じる
- 導線の中央だけが大きく曲がる形になると考える。どの部分でも 、、 が等しいので、曲がりの半径は一定である
- 導線と荷電粒子の対応を、張力と速さ、電流と質量の組み合わせと考える。半径の式を比較すると、張力と運動量、電流と電荷が対応する