物理 / 電流と磁場

磁場中の斜面をすべる帯電した小球が斜面から離れる

★★★★ 難関ローレンツ力斜面上の運動垂直抗力

問題

傾きの角 のなめらかな絶縁体の斜面がある。斜面の最大傾斜の方向を含む鉛直な面(紙面)に垂直に、紙面の表から裏の向きに磁束密度 の一様な磁場がある。質量 、電荷 の小球を、斜面上で静かに放す。小球は斜面に沿って下向きにすべり始める。重力加速度を とし、空気の抵抗は無視する。

30°+q磁場(紙面の表から裏)
傾き 30° のなめらかな斜面と、紙面の表から裏の向きの磁場。帯電した小球を斜面上で静かに放す

(1) 小球が斜面に沿って下向きに速さ ですべっているとき、小球が受けるローレンツ力の向きと大きさを述べよ。

(2) 斜面に沿う方向の加速度は、ローレンツ力によって変化しないことを説明せよ。

(3) 小球が斜面から受ける垂直抗力を で表し、小球が斜面から離れるときの速さを求めよ。

(4) 放してから斜面を離れるまでの時間と、その間に斜面に沿って進む距離を求めよ。

(5) 磁場の向きが逆(紙面の裏から表)の場合、小球は斜面から離れるか。また、放してから 後の垂直抗力を求めよ。

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ローレンツ力は速度とどんな向きの関係にあるか。斜面に沿ってすべる小球では、それは斜面に対してどの向きか。垂直抗力が になるのは、どんな条件のときか。

解答・解説

方針

ローレンツ力は速度に垂直で、斜面に沿ってすべる小球では斜面に垂直な向きになる。そのため斜面に沿う運動は加速度 の等加速度運動のままで、垂直抗力だけが速さとともに変化する。垂直抗力が になる速さで、小球は斜面から離れる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) ローレンツ力は常に速度に垂直なので、斜面に沿ってすべる小球には、斜面に垂直な向きにはたらく。斜面に沿う方向の運動には影響せず、重力の斜面に沿う成分だけで加速する。

斜面に垂直な方向では、重力の成分、垂直抗力、ローレンツ力がつり合う。速さが増加するとローレンツ力が大きくなり、垂直抗力が になったとき、小球は斜面から離れる。

① ローレンツ力。 正の電荷が斜面に沿って下向きに進み、磁場が紙面の表から裏の向きのとき、フレミングの左手の法則からローレンツ力は斜面に垂直で斜面から離れる向きである。大きさは である。

② 斜面に沿う加速度。 ローレンツ力は速度に垂直で、斜面に沿う成分をもたない。斜面に沿う方向に力を及ぼすのは重力の成分 だけなので、加速度は のまま変化しない。

③ 垂直抗力と離れる速さ。 斜面に垂直な方向のつり合いから、次のようになる。

mgNqvBv
小球にはたらく力。ローレンツ力 qvB は斜面に垂直で斜面から離れる向きにはたらき、垂直抗力 N を小さくする

になる速さで、小球は斜面から離れる。

重要ローレンツ力は速度に垂直なので、斜面に沿う運動を変化させず、垂直抗力だけを変化させる

④ 時間と距離。 斜面に沿う方向は加速度 の等加速度運動なので、次のようになる。

⑤ 磁場が逆向きのとき。 ローレンツ力は斜面に押しつける向きになり、 は速さとともに増加するので、小球は斜面から離れない。 後の速さは である。

まとめ ローレンツ力は速度に垂直で仕事をしないので、斜面に沿う運動は磁場がない場合と同じである。斜面に垂直な方向のつり合いで垂直抗力が定まり、それが になる速さ で小球は斜面から離れる。

発展。 斜面を離れたあとは、重力とローレンツ力を受けて、斜面から離れる向きに曲がる運動になる。このとき小球は、重力の向きに垂直な方向に平均して一定の速さで移動しながら、上下に振動する運動をする。

答

(1) 斜面に垂直で斜面から離れる向き、大きさ (2) ローレンツ力は速度(斜面に沿う向き)に垂直で、斜面に沿う成分をもたないから (3) 。離れるときの速さは約 (4) 約 、約 (5) 離れない。垂直抗力は約

別解

別解:エネルギーの保存から離れる位置を求める。 ローレンツ力は仕事をせず、斜面はなめらかなので、力学的エネルギーが保存される。斜面に沿って距離 すべると、高さは だけ減少する。

離れるときの速さ を代入すると となり、④と一致する。ローレンツ力があっても、速さと高さの関係は磁場がない場合と同じである。

ポイント

  • ローレンツ力は速度に垂直なので、斜面に沿ってすべる小球には斜面に垂直にはたらく
  • 斜面に沿う運動は加速度 のまま。垂直抗力は
  • 垂直抗力が になる速さ で斜面から離れる

よくある間違い

  • ローレンツ力によって斜面に沿う加速度も変化すると考える。ローレンツ力は速度に垂直で、斜面に沿う成分はない
  • 斜面から離れる条件を、ローレンツ力が重力 に等しいときとする。つり合うのは斜面に垂直な成分 である
  • ローレンツ力の向きを、磁場の向きを確認せずに斜面から離れる向きと判断する。磁場が逆向きなら斜面に押しつける向きになり、小球は離れない