物理 / 電流と磁場
水素原子の電子が原子核の位置につくる磁場
問題
水素原子では、電子が原子核(陽子)を中心とする半径 の円軌道を、クーロン力を向心力として等速円運動をしているとみなす。電子の質量を 、電気素量を 、クーロンの法則の比例定数を 、真空の透磁率を とする。
(1) 電子の速さを求めよ。
(2) 電子が軌道を1周する時間(周期)を求めよ。
(3) 軌道上を回る電子を円形電流とみなすとき、その電流の大きさを求めよ。
(4) 原子核の位置での磁束密度の大きさを求めよ。また、電子が図の向き(反時計回り)に回るとき、磁場の向きを述べよ。
(5) (4)の磁束密度は地磁気( 程度)の何倍か。
ヒントを見る
軌道上の1点を、1秒間に何回電子が通過するか。そのとき、1秒間に通過する電荷はいくらか。円形電流の中心の磁場の式で、半径が非常に小さいとどうなるか。
解答・解説
方針
クーロン力が向心力になる条件から電子の速さが求まり、周期は である。電子が1周するごとに電荷 が軌道上の1点を通過するので、電流は である。円形電流の中心の磁束密度は で、半径がきわめて小さいので大きな値になる。
解答
⓪ 発想(どう考え始めるか) 円軌道を回る電子は、軌道上の1点を周期 ごとに通過する。1秒間に通過する電荷は で、これを円形電流とみなせる。
電流そのものはわずかだが、円形電流の中心の磁場は半径に反比例する。原子の大きさはきわめて小さいので、中心の磁場は強くなる。
① 電子の速さ。 クーロン力が向心力になる。
② 周期。
③ 電流。 軌道上の1点を、時間 ごとに電荷 が通過する。
④ 原子核の位置の磁場。 円形電流の中心の磁束密度は次のとおりである。
電子は負の電荷なので、電流の向きは電子の運動と反対の時計回りである。右ねじの法則から、中心の磁場は紙面の表から裏の向きである。
⑤ 地磁気との比較。
地磁気の約 万倍で、実験室でつくる強い電磁石の磁場(数 T 程度)よりも強い。
まとめ 回転する電荷は円形電流とみなせ、電流は電荷を周期で割った値である。電子の電流はわずかでも、軌道の半径がきわめて小さいので、原子核の位置には強い磁場ができる。
発展。 原子核の位置の磁場は、原子核のもつ小さな磁石の性質と相互作用して、原子のエネルギーをわずかに変化させる。物質の磁石の性質も、原子の中の電子の運動と、電子自身がもつ磁石の性質に由来している。
(1) 約 (2) 約 (3) 約 (4) 約 。電流は時計回りなので、紙面の表から裏の向き (5) 約 倍
別解
別解:電流を文字式のまま求めて代入する。 ①の を用いると、電流は次のようになる。
これを に代入すると で、磁束密度は に比例する。数値を代入すると で、④と一致する。半径が小さいほど急激に強くなることも、この式から確認できる。
ポイント
- 周期 で回る電荷 は電流 の円形電流とみなせる
- 電子の運動の向きと電流の向きは反対
- 中心の磁束密度 は、半径がきわめて小さいので大きな値になる
よくある間違い
- 電流を電子の速さと電荷の積 とする。軌道上の1点を通過する電荷の割合なので、 である
- 電流の向きを電子の運動と同じ反時計回りとして、磁場の向きを紙面の裏から表とする。電子は負の電荷なので、電流は時計回りである
- 円形電流の中心の磁束密度を、直線電流の式 で計算する。円形電流の中心では である