物理 / 光

光源をずらしたヤングの実験と縞が消失する条件

★★★★ 難関ヤングの実験経路差光源の幅

問題

光源のスリット S、2つのスリット 、、スクリーンを平行に配置したヤングの実験を考える。 と の間隔は 、S から までの距離は 、 からスクリーンまでの距離は 、光の波長は である。、 は や縞の位置より十分大きい。

SS₁S₂スクリーンlL
光源のスリット S、2つのスリット S₁・S₂、スクリーン(距離は実際の比ではない)

(1) S が と から等距離にあるとき、スクリーン上の明線の間隔を求めよ。

(2) S をスリットに平行な向きに だけ 側へ移動する。S から 、 までの距離の差を求めよ。また、スクリーン上の縞はどちら向きにどれだけ移動するか。

(3) S の位置に、互いに無関係に光を発する2つの光源を、スリットに平行な向きに間隔 だけ離して配置する。スクリーン上で縞の明暗が観測されなくなる最小の を求めよ。

(4) 光源のスリット S の幅を広くすると縞が観測しにくくなる理由を、(3)の結果から説明せよ。

ヒントを見る

中央の明線は、全体の経路差が になる位置にできる。S を移動すると、スリットの手前で経路差がいくら生じるか。互いに無関係な光源どうしは干渉しないので、スクリーン上では何が加算されるか。

解答・解説

方針

光源から2つのスリットまでの距離の差と、スリットからスクリーンまでの距離の差を合計した経路差で、明暗が定まる。光源がずれると、スリットの手前で経路差が生じるので、それを打ち消す位置へ縞全体が移動する。互いに無関係な2つの光源による縞は強さが加算されるだけなので、縞が半周期ずれると明暗が消失する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) スクリーン上の点の明暗は、S から を通る経路と を通る経路の、全体の長さの差で定まる。全体の経路差はスリットの手前の部分と後ろの部分の和である。

S を移動すると、スリットの手前で経路差が生じる。中央の明線は全体の経路差が の位置にできるので、手前の差を打ち消す位置へ移動する。また、互いに無関係に光を発する光源どうしは干渉せず、それぞれの縞の強さが加算されるだけである。

① 明線の間隔。

② 光源を移動したとき。 スクリーン上の位置 での経路差が で表されるのと同じ理由で、S を だけ移動したときの、S から2つのスリットまでの距離の差は次のとおりである。

S は 側へ移動したので、 までのほうが短い。スクリーン上で全体の経路差が になるには、後ろの部分で を通る経路のほうが だけ長くなる必要がある。その位置は、中央から 側に だけ離れた次の点である。

縞全体が 側(光源を移動した向きと反対)へ 移動する。明線の間隔は変化しない。

公式ヤングの実験の経路差 。光源を 移動すると、縞は反対向きに 移動する

③ 縞が観測されなくなる条件。 2つの光源は互いに無関係なので干渉せず、スクリーン上ではそれぞれの縞の明るさが加算される。2つの縞は互いに ずれている。ずれが明線の間隔の半分になると、一方の明線に他方の暗線が重なり、明るさが均一になって縞が消失する。

x明るさO0.61.22.4和は一定(縞が消失する)
スクリーン上の位置 x [mm] と明るさ。2つの光源の縞(実線と破線)が 0.60 mm ずれると、明るさの和は位置によらず一定になる

④ スリットの幅と縞の観測しやすさ。 幅のあるスリットは、互いに無関係に光を発する多数の点光源が、幅の範囲に並んだものとみなせる。各点光源の縞は位置が少しずつずれていて、スクリーン上ではそれらの明るさが加算される。

幅が 程度以上になると、ずれの範囲が明線の間隔の半分をこえ、明線と暗線が平均されて縞が観測されなくなる。ヤングの実験で光源の前に細いスリットを配置するのは、このためである。

まとめ 明暗は光源からスクリーンまでの全体の経路差で定まる。光源をずらすと縞は反対向きに移動し、互いに無関係な光源の縞は明るさが加算されるだけなので、半周期ずれると縞が消失する。

発展。 スリットの手前の経路差は、光源が遠いほど小さくなる。遠くの星のように見かけの大きさが小さい光源ほど、離れた2点の光が干渉できる。この関係を逆に用いると、2つの穴の間隔を変化させ、縞が消失するときの間隔から星の見かけの大きさを測定できる。

答

(1) (2) 距離の差は ( のほうが近い)。縞は 側へ 移動する (3) (4) 幅の広いスリットは、互いに無関係な多数の光源が並んだものとみなせる。幅が 程度以上になると、各光源による縞が互いにずれて重なり、明線と暗線が平均されて縞が観測されなくなる

別解

別解:2つの光源の縞を正弦波として加算する。 点光源1つによる縞の明るさは、明線の間隔 を周期とする の形 で表せる。もう1つの光源の縞が ずれているとすると、次のようになる。

和は で、位置 によらず一定になる。縞が完全に消失するのは、ずれがちょうど半周期 のときで、③と一致する。

ポイント

  • 明暗は光源からスクリーンまでの全体の経路差で定まる
  • 光源を 移動すると、縞は反対向きに 移動する。間隔は変化しない
  • 無関係な光源の縞は明るさが加算されるだけ。半周期ずれると縞が消失する

よくある間違い

  • 光源を移動すると縞も同じ向きに移動すると考える。手前で までが短くなるので、それを打ち消す 側へ縞が移動する
  • 縞の移動量を光源の移動量 と同じとする。距離の比 倍になる
  • 互いに無関係な2つの光源の光も干渉すると考える。位相の関係が一定でないので干渉せず、明るさが加算されるだけである