物理 / 波の伝わり方と音
媒質の速さは波の速さより大きくなることがある
問題
軸の正の向きに速さ で進む正弦波があり、振幅は 、波長は である。位置 、時刻 での媒質の変位は、周期を として で表される。
(1) 周期 を求めよ。
(2) 媒質の各点の速さの最大値を求め、波の速さ と比較せよ。
(3) 短い時間 の間に、波形は 軸の正の向きに だけ移動する。このことから、ある時刻の - グラフで接線の傾きが の点では、媒質の速度が になることを説明せよ。
(4) 媒質の速さの最大値が、波の速さより大きくなる条件を と で表せ。
(5) 空気中を伝播する音波では、空気の振動の速さは音速よりはるかに小さい。その理由を(4)の結果から説明せよ。
ヒントを見る
媒質の各点はどんな運動をしているか。その運動の速さの最大値は、振幅と周期でどう表せるか。 後に点 に来る変位は、 前にはどこにあった変位か。
解答・解説
方針
媒質の各点は単振動をするので、速さの最大値は である。これを波の速さと比較すると、比は で、振幅と波長の比で決定する。波形が平行移動することを用いると、媒質の速度が波形の傾きに比例することが判明し、同じ結果になる。
解答
⓪ 発想(どう考え始めるか) 波の速さ は「波形が移動する速さ」で、媒質の各点の速さとは別の量である。媒質の各点はその場で単振動をしているので、その速さの最大値は振幅と周期で定まる。
2つの速さの比を計算すると、振幅と波長の比だけで表される。振幅が波長に対して大きければ、媒質のほうが速く振動することもありうる。
① 周期。
② 媒質の速さの最大値。 媒質の各点は振幅 、角振動数 の単振動をするので、速さの最大値は次のとおりである。
波の速さ より大きく、約 倍である。比は次のように振幅と波長だけで表される。
③ 媒質の速度と波形の傾き。 波形は の間に だけ正の向きに移動するので、時刻 に点 にある変位は、時刻 に点 にあった変位である。 が短ければ、- グラフの接線で近似できるので、その変位は次のようになる。
点 の変位は の間に だけ変化するので、媒質の速度は である。
傾きが最も大きいのは の点で、正弦波の傾きの最大値は である。媒質の速さの最大値は で、②と一致する。
④ 媒質のほうが速くなる条件。 なので、条件は である。この問題では で、振幅 はこれより大きい。
⑤ 音波の場合。 音波は縦波で、媒質の変位は波の進む向きであるが、媒質の速さの最大値が になる関係は同じである。ふつうの音では、空気の変位の振幅は波長に対してはるかに小さく、 は よりはるかに小さい。そのため、空気の振動の速さは音速よりはるかに小さい。
まとめ 波の速さと媒質の速さは別の量で、比は である。波形の傾きが大きい(振幅に対して波長が短い)波ほど、媒質は速く振動する。
発展。 媒質の速度が波形の傾きに比例するという③の関係は、パルスのような正弦波でない波にも成り立つ。移動する波形の前側(傾きが正の部分)の媒質は下向きに、後ろ側(傾きが負の部分)の媒質は上向きに運動している。
(1) (2) で、波の速さ の約 倍 (3) 後の点 の変位は、時刻 に にあった変位に等しく、 である。変位の変化を で割ると (4) 、すなわち (5) 音波の振幅は波長に対してはるかに小さく、 なので、媒質の速さの最大値 は音速よりはるかに小さい
別解
別解:変位の式を時間で微分する。 を で微分すると、媒質の速度は次のとおりである。
一方、 で微分した傾きは である。比較すると で、③と一致する。速度の振幅 から、②の最大値も同時に得られる。
ポイント
- 波の速さは波形が移動する速さ。媒質の各点はその場で単振動する
- 媒質の速さの最大値と波の速さの比は
- 正の向きに進む波では、媒質の速度は (波形の傾き)
よくある間違い
- 媒質の各点も波と同じ速さ で進むと考える。媒質はその場で振動するだけで、移動するのは波形である
- 媒質の速さの最大値を とする。単振動の速さの最大値は である
- 傾きが正の点では媒質が上向きに運動すると考える。正の向きに進む波では、傾きが正の点の媒質は下向きに運動する