物理 / 波の伝わり方と音
浅いところから深いところへ進む水面波の全反射
問題
水深の異なる2つの領域が直線の境界で接している。浅い領域では水面波の速さが 、深い領域では である。振動数 の水面波が、浅い領域から境界に斜めに入射する。入射角・屈折角は、境界の法線とのなす角とする。
(1) 浅い領域と深い領域での波長を求めよ。
(2) 入射角 のとき、屈折角の正弦を求めよ。また、屈折角は入射角より大きいか小さいか。
(3) 屈折波が生じなくなる入射角(臨界角)を とする。 を求めよ。
(4) 入射角 のとき、波はどうなるか。
(5) 深い領域から浅い領域へ進む波では、(4)のような現象が発生しない理由を述べよ。
ヒントを見る
波が速くなる向きに進むとき、屈折角は入射角より大きいか小さいか。屈折角が になる入射角はいくらか。その入射角をこえると、屈折の法則の式はどうなるか。
解答・解説
方針
屈折の法則 を用いる。遅い領域から速い領域へ進むと屈折角は入射角より大きくなり、入射角を大きくすると先に屈折角が に達する。そこが臨界角で、それをこえると屈折波は存在しない。
解答
⓪ 発想(どう考え始めるか) 屈折の法則は、波の速さの比で入射角と屈折角の正弦の比を与える。波が遅い領域から速い領域へ進むと、屈折角は入射角より大きくなる。
入射角を大きくしていくと、屈折角が先に に達する。それ以上の入射角では、屈折角の正弦が をこえる計算になり、屈折波は存在できない。光の全反射と同じ現象が水面波でも発生する。
① 波長。 振動数は境界の両側で等しいので、波長は速さに比例する。
② 入射角 のとき。 屈折の法則より、次のようになる。
で、屈折角は入射角より大きい。
③ 臨界角。 屈折角が になる入射角が臨界角である。
である。
④ 入射角 のとき。 屈折の法則で計算すると となり、 をこえる。このような屈折角は存在しないので、屈折波は生じず、波はすべて境界で反射する(全反射)。
⑤ 逆向きに進むとき。 深い領域から浅い領域へ進むときは、 で、どの入射角でも より小さい。屈折角は入射角より小さく、必ず屈折波が存在するので、全反射は発生しない。全反射が発生するのは、速い領域へ向かう場合だけである。
まとめ 波が遅い領域から速い領域へ進むときは、入射角が臨界角 をこえると全反射する。光でも水面波でも、屈折の法則が同じ形なので、同じ現象が発生する。
発展。 深いところから岸へ向かう波は、浅くなるにつれて遅くなり、法線に近づく向きに曲がる。そのため、沖では斜めに進んでいた波も、岸の近くでは波面が海岸線とほぼ平行になって打ち寄せる。
(1) 浅い領域 、深い領域 (2) 、屈折角のほうが大きい (3) () (4) が をこえるので屈折波は生じず、すべて反射する(全反射) (5) 深い領域から浅い領域へ進むときは がどの入射角でも成り立ち、必ず屈折波が存在する
別解
別解:境界に沿って進む波面の交点の速さで考える(ホイヘンスの原理)。 入射する波面と境界の交点は、境界に沿って の速さで進む。屈折波の波面も境界上で同じ交点を通るので、屈折波について が成り立つ。これが屈折の法則である。
屈折波が存在するには、深い領域の波面が交点に追いつけないこと、すなわち交点の速さが深い領域の波の速さ以上であることが必要である。
入射角が大きくなると交点の進む速さは遅くなり、 では深い領域の波のほうが速すぎて、屈折波の波面をつくれない。これが全反射の条件で、③と一致する。
ポイント
- 振動数は境界の両側で等しく、波長は速さに比例する
- 遅い領域から速い領域へ進むと、屈折角は入射角より大きい。
- 全反射が発生するのは速い領域へ向かう場合だけ。逆向きでは必ず屈折波がある
よくある間違い
- 屈折の法則の速さの比を逆にして、 とする。遅い領域から速い領域へ進むので、屈折角は大きくなる
- 境界で振動数が変化すると考え、波長を一定とする。境界の両側で変化しないのは振動数である
- 臨界角を、屈折角が になる入射角と考える。臨界角は屈折角が になる入射角である