物理 / 波の伝わり方と音

壁の前で音の大きさを測定すると

★★★★ 難関定常波縦波圧力の変化

問題

平らで硬い壁に向けて、スピーカーから振動数 の音を壁に垂直に発する。壁で反射した音と入射する音が重なり、壁の前に定常波ができる。音の大きさは空気の圧力の変化の大きさで定まり、マイクロホンは圧力の変化を検出する。音速を とする。

壁の表面の空気は、壁に垂直な向きには変位できない。

壁スピーカー850 Hzマイクロホンx
硬い壁に向けて音を発し、壁からの距離 x を変化させながらマイクロホンで音の大きさを測定する

(1) 空気の変位の定常波について、節の位置を壁からの距離で3つ挙げよ。

(2) 変位の節と変位の腹のうち、空気の圧力の変化が最も大きいのはどちらか。理由も述べよ。

(3) マイクロホンを壁から遠ざけていくとき、音が最も小さく聞こえる位置を、壁に近いほうから2つ挙げよ。また、音が最も大きく聞こえる位置を2つ挙げよ。

(4) 音が最も小さく聞こえる隣り合う位置の間隔が であることから、音速を求める手順を述べよ。

(5) 細い管の底に軽い粉を少量散布して同じように定常波をつくると、粉は空気の変位の節に集中する(クントの実験)。壁から近い順に、粉が集中する位置を2つ挙げ、マイクロホンで測定した音の大きさとの関係を述べよ。

ヒントを見る

壁の表面で空気が変位できないことは、反射のどの端にあたるか。変位の節の左右の空気は、ある瞬間にどちら向きに変位しているか。マイクロホンは変位と圧力のどちらを検出するか。

解答・解説

方針

壁の表面は空気が変位できないので、変位の節になる(固定端の反射)。変位の節では、両側の空気が逆向きに変位するので、空気が圧縮されたり膨張したりし、圧力の変化が最大になる。圧力で表すと、変位の節と腹が入れ替わる。マイクロホンが検出するのは圧力の変化なので、音が小さいのは変位の腹である。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 音は縦波で、定常波には「空気の変位」の節・腹と、「圧力の変化」の節・腹の2通りの表し方がある。壁の表面で空気は変位できないので、壁は変位の節である。

ところが、マイクロホンが検出するのは圧力の変化である。変位の節では両側の空気が逆向きに変位するので、空気が最も圧縮されたり膨張したりする。つまり、変位の節は圧力の変化の腹になる。この入れ替わりに注意して、音が小さい位置を求める。

① 変位の節。 波長は である。壁の表面が変位の節で、節は半波長 ごとに 、、 と並び、変位の腹はその中間の 、 にある。

② 圧力の変化が大きい位置。 変位の定常波では、節をはさんだ両側の空気は常に逆向きに変位する。両側の空気が同時に節へ近づく瞬間には節の位置で空気が最も圧縮され、同時に遠ざかる瞬間には最も膨張する。したがって、圧力の変化が最も大きいのは変位の節である。

変位の腹では、両側の空気が同じ向きに一様に変位するので、空気の密度はほとんど変化せず、圧力の変化は である。

x振幅O0.100.200.300.40変位(破線)圧力の変化
壁からの距離 x [m] と、変位の振幅(破線)・圧力の変化の振幅(実線)。節と腹が λ/4 ずれて入れ替わる
重要音の定常波では、変位の節が圧力の変化の腹、変位の腹が圧力の変化の節になる

③ マイクロホンで測定した音の大きさ。 音が最も小さいのは圧力の変化の節、すなわち変位の腹で、壁から 、 の位置である。音が最も大きいのは変位の節で、壁の表面()と の位置である。

④ 音速の測定。 音が最も小さい隣り合う位置は、圧力の変化の節が並ぶ間隔で、半波長にあたる。間隔 から波長は で、振動数をかけると音速が求められる。

⑤ クントの実験。 粉は変位の節に集中するので、壁から と の位置である。変位の腹では空気が激しく往復して粉を移動させ、変位しない節に粉が集中する。

この位置は、マイクロホンで音が最も大きく聞こえる位置と一致する。「粉が集中する静かそうな位置」が、圧力で表すと最も音が大きい位置である。

まとめ 音の定常波は、変位で表すか圧力で表すかで、節と腹の位置が入れ替わる。硬い壁の表面は変位の節で、圧力の変化の腹である。マイクロホンは圧力を、粉は変位を表すので、同じ定常波でも結果が逆に観測される。

発展。 閉管の気柱の共鳴でも、閉じた端は変位の節(圧力の腹)、開いた端は変位の腹(圧力の節)である。開いた端の外側は大気に接していて、圧力が大気圧からほとんど変化できないからである。

答

(1) 、、 (2) 変位の節。節の両側の空気が同時に節へ近づいたり節から遠ざかったりするので、節の位置で空気が最も圧縮・膨張する (3) 最も小さいのは 、、最も大きいのは (壁の表面)と (4) 間隔は半波長なので波長は 、音速は (5) と 。粉が集中する変位の節は、マイクロホンで音が最も大きく聞こえる位置と一致する

別解

別解:変位の式から圧力の変化を求める。 壁を原点とし、壁から遠ざかる向きを正とする。壁が変位の節なので、変位の定常波は と表せる。

空気の圧縮の度合いは、隣り合う空気の変位の差、つまり の に対する変化の割合で表される。 の変化の割合は に比例するので、圧力の変化の振幅は に比例する。

これは 、 で最大、、 で となり、③と一致する。変位の振幅 とは ずれていて、節と腹がちょうど入れ替わっている。

ポイント

  • 硬い壁の表面は、空気の変位の節(固定端)である
  • 変位の節の両側は逆向きに変位するので、圧力の変化は最大。変位の節=圧力の変化の腹
  • マイクロホンは圧力、粉は変位を表す。最も小さく聞こえる位置の間隔は半波長

よくある間違い

  • 変位の節では空気が静止しているので、音も最も小さいと考える。変位の節は圧力の変化が最大で、音は最も大きい
  • 音が最も小さい位置の間隔を波長とする。節と節の間隔は半波長である
  • 壁の表面を変位の腹とする。空気は壁を通過できないので、壁の表面は変位の節である