物理 / 波の伝わり方と音
線路から離れて聞く警笛はいつ元の高さになるか
問題
まっすぐな線路を、列車が一定の速さ で走りながら、振動数 の警笛を鳴らしている。観測者は線路から垂直に 離れた点 O に静止している。音速を とする。
音源の速度と、音を発した点から観測者に向かう向きとのなす角を とすると、観測者が受ける振動数は で表される。
(1) 列車がはるか遠くから近づいてくるときと、はるか遠くへ遠ざかっていくときに、観測者が聞く振動数をそれぞれ求めよ。
(2) 観測者が の音を聞くのは、列車が線路上で O に最も近い点を通過してから何秒後か。また、そのとき列車は最も近い点から何 m 進んでいるか。
(3) 列車がちょうど O に最も近い点を通過する瞬間に、観測者が聞いている音の振動数を求めよ。
(4) (1)〜(3)から、観測者が聞く振動数の時間変化を説明せよ。
ヒントを見る
観測者が を聞くのは、どこで発した音か。その音が O に到達するまでにかかる時間はいくらか。最も近い点を通過する瞬間に O に到達している音は、列車がどこにいたときに発した音か。
解答・解説
方針
観測者が聞く振動数を決定するのは、音を発した瞬間の列車の位置と向きであり、音を聞く瞬間の位置ではない。元の振動数になるのは 、すなわち列車が最も近い点で発した音で、その音が距離 を進む時間だけ遅れて到達する。最も近い点を通過する瞬間に聞こえる音は、それより前に発した音である。
解答
⓪ 発想(どう考え始めるか) 斜め方向のドップラー効果では、振動数は音を発した瞬間の速度の視線方向の成分で定まる。ところが音は有限の速さで進むので、観測者が「いま」聞いている音は、少し前に列車が別の位置で発した音である。
そこで、「音を発した位置」と「観測者が聞く時刻」を区別して考える。元の振動数の音は、列車が最も近い点で発した音で、そこから距離 を進むのに時間がかかる。
① 遠くにいるとき。 はるか遠くから近づくときは 、遠ざかるときは である。
② 元の振動数が聞こえる時刻。 となるのは 、すなわち列車が O に最も近い点で発した音である。その点から O までの距離は なので、音が到達するまでの時間は次のとおりである。
観測者が を聞くのは、列車が最も近い点を通過してから 秒後である。その間に列車は 進んでいる。
③ 最も近い点を通過する瞬間に聞く音。 その瞬間に O に到達している音は、 秒前に、最も近い点の手前 の位置で発した音である。音が進んだ距離について、三平方の定理より次の式が成り立つ。
このとき、音を発した点での は、手前の距離と音が進んだ距離の比である。
の値によらず になる。振動数は次のとおりである。
④ 振動数の時間変化。 観測者が聞く振動数は、はじめ で、列車が近づくにつれて連続的に低下する。列車が最も近い点を通過する瞬間にはまだ で、元の になるのは 秒後である。そのあとも低下を継続し、遠ざかるにつれて に近づく。
まとめ 斜め方向のドップラー効果では、振動数は音を発した瞬間の位置と速度で定まり、観測者が聞くのはその音が到達したときである。線路から離れた観測者ほど、振動数の変化は時間的にゆるやかになり、元の振動数になる時刻も最接近より遅れる。
発展。 線路のすぐそばで聞くと、 が小さいので元の振動数になる時刻の遅れはほとんどなく、振動数は最接近の前後で急に変化する。離れて聞くほど変化はゆるやかで、高い音から低い音へ連続的に変化する。救急車のサイレンが「急に低くなる」ように聞こえるか「だんだん低くなる」ように聞こえるかは、道路からの距離で異なる。
(1) 近づくとき 、遠ざかるとき (2) 秒後、 (3) (4) から まで連続的に低下する。列車が最も近い点を通過する瞬間にはまだ で、元の になるのはその 秒後である
別解
別解:③を音の到達時刻の式から求める。 列車が最も近い点を通過する時刻を とし、時刻 に発した音を考える。そのときの列車の位置は最も近い点から (負なら手前)で、O までの距離は である。この音が O に到達する時刻は次のとおりである。
となる を求めると、()から である。このとき列車は手前 にいて、 となり、③と同じ が得られる。
②と比較すると、最接近の約 秒前・手前 で発した音を最接近の瞬間に聞き、最接近で発した音を 秒後に聞く。前後でほぼ対称な関係になっている。
ポイント
- 斜め方向のドップラー効果の振動数は、音を発した瞬間の位置と速度で定まる
- 元の振動数は最接近の点で発した音。到達は だけ遅れる
- 最接近の瞬間に聞く音は、 の位置で発した音で、元より高い
よくある間違い
- 列車が最も近い点を通過する瞬間に、元の振動数 が聞こえると考える。その瞬間に聞こえるのは、少し前に発した の音である
- を、観測者が音を聞く瞬間の列車の位置で決定する。振動数は音を発した瞬間の位置で定まる
- ドップラー効果の式で の代わりに をそのまま用いて、斜め方向でも振動数が一定だとする