物理 / 原子
箱に閉じ込めた電子のエネルギーはとびとびの値になる
問題
長さ の一直線上の領域に、電子(質量 )が閉じ込められている。電子は領域の両端から外に出られず、領域の中では力を受けずに運動する。電子の物質波は両端を節とする定常波になる。プランク定数を 、光の速さを 、電気素量を とする。
(1) 物質波が両端を節とする定常波になる条件から、可能な波長 を と自然数 で表せ。
(2) 電子の運動エネルギー を、、、、 で表せ。
(3) を J と eV の単位で求めよ。また、 を eV の単位で求めよ。
(4) 電子が の状態から の状態に遷移するときに、光子を1個放出する。その光の波長を求めよ。
(5) 電子のエネルギーは にならない。その理由を物質波の波長の条件から述べよ。また、領域の長さを半分にすると は何倍になるか。
ヒントを見る
弦の定常波と同じように、両端が節のとき、領域の長さは波長の何倍か。そのときの運動量と運動エネルギーは、ド・ブロイの関係からどう表されるか。
解答・解説
方針
両端が節の定常波では、領域の長さが半波長の整数倍になり、 である。運動量は で、運動エネルギーは になる。 が自然数に限られるので、エネルギーはとびとびの値をとり、最も低いエネルギーも ではない。
解答
⓪ 発想(どう考え始めるか) 閉じ込められた電子の物質波は、弦の定常波と同じように両端が節になる。可能な波長はとびとびの値に限られ、ド・ブロイの関係 から運動量もとびとびになる。
運動エネルギーは運動量の2乗に比例するので、エネルギーもとびとびの値になる。原子のエネルギー準位がとびとびになる理由も、同じ考え方で理解できる。
① 可能な波長。 両端が節の定常波では、領域の長さは半波長の整数倍である。
② エネルギー。 運動量は なので、運動エネルギーは次のようになる。
③ と 。
である。
④ 放出される光の波長。 光子のエネルギーは である。
⑤ エネルギーが にならない理由と、長さを半分にしたとき。 両端を節とするには、波長は最も長くても である。波長が有限なので運動量 は にならず、運動エネルギーも にならない。 は に反比例するので、長さを半分にすると4倍になる。
まとめ 閉じ込められた粒子の物質波は両端が節の定常波になり、波長が に限られる。そのためエネルギーは のとびとびの値になり、最も低いエネルギーも ではない。
発展。 狭い領域に閉じ込めるほどエネルギーの間隔が大きくなる性質は、半導体の微粒子(量子ドット)で、粒子の大きさによって発光の色を変化させるのに利用されている。小さい粒子ほどエネルギーの間隔が大きく、短い波長の光を放出する。
(1) (2) (3) 、 (4) 約 (5) 両端を節とするには波長が 以下でなければならず、運動量 は にならないから。4倍
別解
別解:ボーアの量子条件と比較する。 ボーアの原子模型では、円軌道の円周が物質波の波長の整数倍 になる条件で軌道が定まった。ここでは、一直線の領域を往復する距離 が波長の整数倍になる条件 と考えられる。
どちらも「物質波が自分自身と重なって打ち消し合わない」条件で、可能な波長がとびとびになる。 は①の と同じで、運動量 から②の が得られる。
ポイント
- 両端が節の定常波では、領域の長さは半波長の整数倍。
- 運動量 から 。エネルギーはとびとびで に比例する
- 最も低いエネルギーも ではない。狭く閉じ込めるほどエネルギーは大きい
よくある間違い
- 両端が節の定常波の条件を とする。隣り合う節の間隔は半波長なので、 である
- 電子が静止していれば、エネルギーは になると考える。両端を節とする物質波の波長は 以下で、運動量は にならない
- が に比例すると考える。運動量が に比例し、エネルギーは運動量の2乗に比例するので、 に比例する