物理 / 原子

箱に閉じ込めた電子のエネルギーはとびとびの値になる

★★★★ 難関物質波定常波エネルギー準位

問題

長さ の一直線上の領域に、電子(質量 )が閉じ込められている。電子は領域の両端から外に出られず、領域の中では力を受けずに運動する。電子の物質波は両端を節とする定常波になる。プランク定数を 、光の速さを 、電気素量を とする。

電子L=0.50 nm
長さ L の一直線上の領域に閉じ込められた電子

(1) 物質波が両端を節とする定常波になる条件から、可能な波長 を と自然数 で表せ。

(2) 電子の運動エネルギー を、、、、 で表せ。

(3) を J と eV の単位で求めよ。また、 を eV の単位で求めよ。

(4) 電子が の状態から の状態に遷移するときに、光子を1個放出する。その光の波長を求めよ。

(5) 電子のエネルギーは にならない。その理由を物質波の波長の条件から述べよ。また、領域の長さを半分にすると は何倍になるか。

ヒントを見る

弦の定常波と同じように、両端が節のとき、領域の長さは波長の何倍か。そのときの運動量と運動エネルギーは、ド・ブロイの関係からどう表されるか。

解答・解説

方針

両端が節の定常波では、領域の長さが半波長の整数倍になり、 である。運動量は で、運動エネルギーは になる。 が自然数に限られるので、エネルギーはとびとびの値をとり、最も低いエネルギーも ではない。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 閉じ込められた電子の物質波は、弦の定常波と同じように両端が節になる。可能な波長はとびとびの値に限られ、ド・ブロイの関係 から運動量もとびとびになる。

運動エネルギーは運動量の2乗に比例するので、エネルギーもとびとびの値になる。原子のエネルギー準位がとびとびになる理由も、同じ考え方で理解できる。

① 可能な波長。 両端が節の定常波では、領域の長さは半波長の整数倍である。

② エネルギー。 運動量は なので、運動エネルギーは次のようになる。

重要長さ の領域に閉じ込めた粒子の物質波は の定常波で、エネルギーは のとびとびの値になる

③ と 。

である。

xEO1.56.013.5L
n=1、2、3 の物質波の定常波(青)とエネルギー E [eV]。波長は 2L/n で、エネルギーは n² に比例して 1.5、6.0、13.5 eV になる

④ 放出される光の波長。 光子のエネルギーは である。

⑤ エネルギーが にならない理由と、長さを半分にしたとき。 両端を節とするには、波長は最も長くても である。波長が有限なので運動量 は にならず、運動エネルギーも にならない。 は に反比例するので、長さを半分にすると4倍になる。

まとめ 閉じ込められた粒子の物質波は両端が節の定常波になり、波長が に限られる。そのためエネルギーは のとびとびの値になり、最も低いエネルギーも ではない。

発展。 狭い領域に閉じ込めるほどエネルギーの間隔が大きくなる性質は、半導体の微粒子(量子ドット)で、粒子の大きさによって発光の色を変化させるのに利用されている。小さい粒子ほどエネルギーの間隔が大きく、短い波長の光を放出する。

答

(1) (2) (3) 、 (4) 約 (5) 両端を節とするには波長が 以下でなければならず、運動量 は にならないから。4倍

別解

別解:ボーアの量子条件と比較する。 ボーアの原子模型では、円軌道の円周が物質波の波長の整数倍 になる条件で軌道が定まった。ここでは、一直線の領域を往復する距離 が波長の整数倍になる条件 と考えられる。

どちらも「物質波が自分自身と重なって打ち消し合わない」条件で、可能な波長がとびとびになる。 は①の と同じで、運動量 から②の が得られる。

ポイント

  • 両端が節の定常波では、領域の長さは半波長の整数倍。
  • 運動量 から 。エネルギーはとびとびで に比例する
  • 最も低いエネルギーも ではない。狭く閉じ込めるほどエネルギーは大きい

よくある間違い

  • 両端が節の定常波の条件を とする。隣り合う節の間隔は半波長なので、 である
  • 電子が静止していれば、エネルギーは になると考える。両端を節とする物質波の波長は 以下で、運動量は にならない
  • が に比例すると考える。運動量が に比例し、エネルギーは運動量の2乗に比例するので、 に比例する