物理 / 原子

光を当てたままにした金属球の電位は一定の値に達する

★★★★ 難関光電効果仕事関数電位

問題

真空中に、ほかの物体から絶縁された半径 の金属球がある。はじめ金属球は帯電していない。この金属球に、波長 の光を当てたままにする。金属の仕事関数は である。プランク定数を 、光の速さを 、電気素量を 、クーロンの法則の比例定数を とする。

金属球光 400 nm半径 1.0 cm
真空中の絶縁された金属球に光を当てたままにする

(1) 光子のエネルギーと、飛び出す光電子の最大の運動エネルギーを eV の単位で求めよ。

(2) 光電子が飛び出すにつれて、金属球の電荷と電位はどう変化するか。

(3) 光を当てたままにすると、金属球の電位はある値で一定になる。その電位を求めよ。

(4) (3)のとき、金属球の電荷と、飛び出した電子の数を求めよ。半径 の金属球の電位は、電荷を として である。

(5) 光の強さを2倍にすると、(3)の電位はどうなるか。また、波長 の光を当てた場合はどうなるか。

ヒントを見る

金属球が正に帯電すると、飛び出した電子は金属球から引き戻す力を受ける。電子が遠くまで到達できなくなるのは、金属球の電位がいくらになったときか。

解答・解説

方針

光電子が飛び出すと金属球は正に帯電し、電位が高くなる。飛び出した電子は金属球の電位 による引力に逆らって遠ざかる必要があり、最大の運動エネルギーが より小さくなると、どの電子も遠くまで到達できなくなる。電位は最大の運動エネルギーを電気素量で割った値で一定になり、光の強さには関係しない。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 光電子が飛び出すと、金属球には正の電荷が残存し、電位が高くなる。飛び出した電子は正に帯電した金属球に引き戻されるので、遠くまで到達するには運動エネルギーが必要である。

金属球の電位が のとき、電子が無限に遠くまで到達するには、運動エネルギーが 以上でなければならない。最大の運動エネルギーが に等しくなると、それ以上電子は遠ざかれず、電位は一定になる。

① 光子のエネルギーと最大の運動エネルギー。

最大の運動エネルギーは である。

② 電荷と電位の変化。 負の電荷の電子が飛び出すので、金属球には正の電荷が増加し、電位が高くなる。

③ 一定になる電位。 電位が になると、電子が金属球から無限に遠くまで遠ざかるには の運動エネルギーが必要である。最大の運動エネルギー がこれに等しくなると、どの電子も遠くまで到達できず、金属球に引き戻される。

VKO0.790.79遠くに到達したときの運動エネルギー
金属球の電位 V [V] と、最も速い光電子が遠くに到達したときの運動エネルギー K [eV]。V=0.79 V で K=0 になり、それ以上は電子が遠くまで到達できない
重要光を当てたままにした絶縁された金属は、最大の運動エネルギーを電気素量で割った電位まで帯電する。この電位は阻止電圧と同じ値で、光の強さによらない

④ 電荷と電子の数。 から次のようになる。

⑤ 光の強さと波長を変化させたとき。 光を強くすると単位時間に飛び出す電子の数は増加するが、最大の運動エネルギーは変化しないので、一定になる電位は同じ で、早くその値に達する。波長 の光子のエネルギーは で仕事関数 より小さいので、光電子は飛び出さず、電位は のままである。

まとめ 絶縁された金属に光を当てたままにすると、光電子が飛び出して正に帯電し、電位が高くなる。最大の運動エネルギーを電気素量で割った電位で、電子が遠くまで到達できなくなり、電位は一定になる。

発展。 宇宙空間の人工衛星は、太陽の紫外線による光電効果で表面から電子が放出され、正に帯電することがある。帯電の大きさが表面の材料によって異なると、部分ごとの電位の差から放電が発生し、機器の故障の原因になるので、表面の材料が工夫されている。

答

(1) 光子 約 、最大の運動エネルギー 約 (2) 正の電荷が増加し、電位が高くなる (3) 約 (4) 約 、約 個 (5) 強さを2倍にしても電位は同じ(早く一定になる)。 の光子は約 で仕事関数より小さいので、光電子が飛び出さず、電位は のまま

別解

別解:電子が金属球の表面から無限遠まで遠ざかる間のエネルギーで考える。 電荷 の金属球の表面での電位は で、無限遠では である。電子(電荷 )が表面から無限遠まで遠ざかると、位置エネルギーは だけ増加する。

最大の運動エネルギー がこの増加分に等しいとき、電子は無限遠にちょうど到達する。 から となり、④と一致する。

ポイント

  • 光電子が飛び出すと、絶縁された金属は正に帯電し、電位が高くなる
  • 電位は最大の運動エネルギーを電気素量で割った値で一定になる
  • 一定になる電位は光の強さによらず、振動数(波長)だけで定まる

よくある間違い

  • 光を当てたままにすれば、金属球の電位はいくらでも高くなると考える。最大の運動エネルギーで電子が遠くまで到達できなくなると、電位は一定になる
  • 光を強くすると、一定になる電位も高くなると考える。光の強さは電子の数を変化させるだけで、最大の運動エネルギーと電位は変化しない
  • 金属球の電位を、光子のエネルギー を電気素量で割った とする。仕事関数を差し引いた最大の運動エネルギーで定まる