物理 / 原子

光は面を押す — 輻射圧とソーラーセイル

最難関編光子運動量輻射圧

問題

太陽の光が地球のあたりで運ぶエネルギーは、光の進む向きに垂直な面 につき毎秒 である。光の波長を とし、 とする。

(1) 光子 1 個のエネルギーを J と eV で、また運動量を求めよ。

(2) 面 には毎秒何個の光子が当たるか。

(3) 光をすべて吸収する面が受ける圧力を求めよ。また、すべて反射する面ではどうなるか。

(4) 面積 、質量 の、光を完全に反射する帆を宇宙空間に広げる。光が垂直に当たるとき、帆の加速度と、 日後の速さを求めよ。 日を とする。

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力とは運動量の変化率のことである。 秒間に面へ渡される運動量はどれだけか。吸収と反射で、光子 個が渡す運動量はどう違うか。

解答・解説

方針

光子が運動量をもつと認めれば、面が受ける力は「 秒あたりに面へ渡される運動量」である。個数と 個あたりの運動量を掛ければよい。反射では運動量が向きを変えて戻るので、渡す量は 倍になる。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 光が物を押すと聞くと不思議に思える。しかし光子が運動量をもつなら、当たった面が力を受けるのは当然である。

力の定義に戻ると、力は「単位時間あたりの運動量の変化」である。だから求めるべきは、 秒間に面がどれだけの運動量を受け取るかである。

そして計算してみると、光子 個あたりの量も個数も、最後は消えてしまう。残るのは という簡単な式だけである。

① 光子 個の量。

公式光子のエネルギー 、運動量

② 毎秒の個数。 エネルギーの合計を 個あたりのエネルギーで割る。

③ 圧力。 完全に吸収する面では、光子はもっていた運動量をすべて置いていく。 秒間に受け取る運動量は

ここで が約分で消える。個数も波長も残らない。

完全に反射する面では、光子の運動量は から に変わるので、面が受け取る運動量は になる。

p吸収 → 渡す運動量 pp反射 → 渡す運動量 2p光子が面に当たる
光子が面に渡す運動量。反射では向きが反転するので、渡す量は吸収の 2 倍になる。
重要輻射圧は吸収で 、反射で 。跳ね返るほうが 倍押す

④ 帆の運動。 力は圧力に面積を掛ける。

日で秒速 である。小さな加速度でも、燃料なしで加速し続けられるのが強みである。

まとめ 光の圧力は (反射なら 倍)。 が大きいので圧力は極めて小さいが、宇宙空間で長時間はたらけば無視できない速さになる。

発展 — 一歩先へ。 彗星の尾が太陽と反対の向きにたなびくのは、この光の圧力(と太陽風)によるものである。彗星の進む向きではなく、いつも太陽と逆を向く。

また、恒星の内部では、外向きの輻射圧が重力と釣り合って星の形を保っている。光の圧力は、宇宙のスケールでは主役級のはたらきをする。

個、吸収で ・反射でその 倍、加速度 日後に約

別解

波動の立場から見るルート。 光子を持ち出さなくても、電磁波としての性質から同じ式が出る。

電磁波はエネルギー を運ぶとき、同時に運動量 を運ぶことが電磁気学から導かれる。これを認めれば、 秒間に面が受け取る運動量は

となり、③ と同じ結論に達する。

つまり輻射圧そのものは、光を粒子と考えなくても説明できる。実際、マクスウェルは光子が知られる前に理論的に予言し、レベデフが実験で確かめている。

では光子説の出番はどこかというと、光電効果である。輻射圧は「 秒あたりの平均」で決まる量なので、波でも粒子でも同じ答えになる。 個ずつのふるまい(振動数で決まる最大運動エネルギー)を問われて初めて、波動論では説明がつかなくなる。

「どの実験がどちらの描像でしか説明できないか」を区別しておくと、量子論の必要性がはっきり見えてくる。

ポイント

  • 光子の運動量は p=E/c=h/λ
  • 面が受ける力は「1 秒あたりに渡される運動量」
  • 輻射圧は吸収で I/c、反射で 2I/c(光子の個数も波長も消える)
  • 加速度は小さいが、燃料なしで加速し続けられる

よくある間違い

  • 反射でも吸収と同じ圧力だと考える(反射は運動量が反転するので 2 倍)
  • 光子の運動量を mv で計算しようとする(光子に質量はなく p=E/c)
  • エネルギーの流れ I をそのまま圧力としてしまう(c で割る必要がある)