物理 / 原子
α崩壊で放出されるエネルギーのほとんどをα粒子が得る
問題
静止したラジウム の原子核が α 崩壊して、ラドン の原子核と α 粒子 になる。原子の質量は が 、 が 、 が で、 の質量に相当するエネルギーは とする。、 とし、各粒子の質量は質量数 × と近似してよい。
(1) この崩壊で放出されるエネルギー を求めよ。
(2) 崩壊後の α 粒子とラドンの原子核の運動量の関係を述べよ。
(3) がすべて2つの粒子の運動エネルギーになるとして、α 粒子とラドンの原子核の運動エネルギーをそれぞれ求めよ。
(4) α 粒子の速さと、ラドンの原子核の速さを求めよ。
(5) β 崩壊では、放出される電子の運動エネルギーは一定の値にならず、 からある最大値までの連続的な分布になる。α 崩壊との違いを、崩壊で生じる粒子の数に着目して説明せよ。
ヒントを見る
はじめ静止していた原子核が2つに分裂すると、運動量の和はいくらか。運動量の大きさが等しいとき、運動エネルギーは質量とどんな関係にあるか。
解答・解説
方針
崩壊の前後の質量の差が になる。はじめ静止しているので、2つの粒子の運動量は大きさが等しく向きが反対で、運動エネルギー は質量に反比例する。軽い α 粒子が の を得て、ラドンの原子核はわずかしか得ない。
解答
⓪ 発想(どう考え始めるか) 崩壊で放出されるエネルギーは、崩壊の前後の質量の差から求まる。このエネルギーを2つの粒子がどう分配するかは、運動量の保存で定まる。
はじめ静止しているので、2つの粒子は大きさの等しい運動量で反対の向きに進む。運動量が等しければ、運動エネルギー は質量に反比例し、軽い粒子が多くのエネルギーを得る。
① 放出されるエネルギー。 原子の質量で計算すると、電子の質量は前後で打ち消し合う。
② 運動量の関係。 はじめの運動量は なので、崩壊後の2つの粒子の運動量は大きさが等しく、向きが反対である。
③ 運動エネルギーの配分。 運動量の大きさを とすると、運動エネルギーは なので、質量に反比例する。
④ 速さ。 α 粒子の質量は である。
運動量が等しいので、ラドンの原子核の速さは である。
⑤ β 崩壊との違い。 α 崩壊で生じるのは2つの粒子なので、運動量とエネルギーの保存から、それぞれの運動エネルギーが一通りに定まる。β 崩壊では、電子のほかに観測しにくいニュートリノが放出され、3つの粒子でエネルギーを分配する。配分は一通りに定まらないので、電子の運動エネルギーは連続的な分布になる。
まとめ α 崩壊で放出されるエネルギーは質量の差から求まり、運動量の保存によって質量に反比例して配分される。軽い α 粒子がほとんどのエネルギーを得て、一定の運動エネルギーで放出される。
発展。 β 崩壊の電子のエネルギーが連続的であることは、エネルギーが保存されないのではないかという疑問を生んだ。パウリは、観測されない粒子(ニュートリノ)がエネルギーの一部を運ぶと考え、その後の実験でニュートリノの存在が確認された。
(1) 約 (2) 大きさが等しく、向きが反対 (3) α 粒子 約 、ラドン 約 (4) α 粒子 約 、ラドン 約 (5) α 崩壊は2つの粒子に分裂するので、運動量の保存から配分が一通りに定まる。β 崩壊では電子のほかにニュートリノが放出され、3つの粒子でエネルギーを分配するので、配分が一通りに定まらない
別解
別解:速さの比から配分を求める。 運動量が等しいので、速さは質量に反比例し、 である。運動エネルギーの比は次のようになる。
を用いると、、 となり、③と一致する。
ポイント
- 放出されるエネルギー は、崩壊の前後の質量の差から求まる
- 静止した核が2つに分裂すると運動量は等しく、運動エネルギーは質量に反比例する
- 2体の崩壊では運動エネルギーが一通りに定まり、3体の β 崩壊では連続的になる
よくある間違い
- をすべて α 粒子の運動エネルギーとする。ラドンの原子核も反動で運動し、わずかにエネルギーを得る
- 2つの粒子の運動エネルギーが等しいと考える。等しいのは運動量の大きさで、運動エネルギーは質量に反比例する
- 2つの粒子の速さが等しいと考える。運動量が等しいので、速さは質量に反比例する