物理 / 原子
α粒子を金の原子核に正面から当てたときの最接近距離
問題
運動エネルギー の α 粒子(電荷 )を、金の原子核(電荷 )に向けて正面から発射する。金の原子核は十分に重く、静止しているとする。電気素量を 、、クーロンの法則の比例定数を とする。
(1) α 粒子が原子核から距離 の位置にあるとき、静電気力による位置エネルギーを で表せ。
(2) α 粒子が原子核に最も近づく距離 を求めよ。
(3) 原子の大きさを 程度とすると、 はその約何分の1か。また、金の原子核の半径は ( は質量数、)と表される。α 粒子は原子核の表面に到達するか。
(4) α 粒子を金の原子核の表面(中心から )まで近づけるには、運動エネルギーをいくら以上にする必要があるか。α 粒子の大きさは無視する。
(5) 同じ運動エネルギーの α 粒子をアルミニウムの原子核(電荷 、質量数 )に正面から当てると、最接近距離はいくらか。また、それをアルミニウムの原子核の半径と比較せよ。
ヒントを見る
正面から近づく α 粒子が最も近づいたとき、速さはいくらか。そのとき運動エネルギーはどんなエネルギーに変換されているか。
解答・解説
方針
正面から近づく α 粒子は、静電気力による位置エネルギーが運動エネルギーに等しくなった位置で静止する。最接近距離は で、原子の大きさよりはるかに小さい。この距離が原子核の半径より大きければ、α 粒子は静電気力だけを受けて反発されたことになる。
解答
⓪ 発想(どう考え始めるか) α 粒子と原子核はどちらも正の電荷をもつので、α 粒子は近づくにつれて減速する。正面から近づくと、最も近づいたときに速さが になり、運動エネルギーはすべて静電気力による位置エネルギーになる。
最接近距離を原子の大きさや原子核の大きさと比較すると、原子の中で正の電荷がどれだけ小さな領域に集中しているかが判明する。
① 位置エネルギー。
② 最接近距離。 運動エネルギーがすべて位置エネルギーになる距離である。
③ 原子・原子核との比較。 なので、 は原子の大きさの約 である。金の原子核の半径は で より小さいので、α 粒子は原子核の表面に到達せず、静電気力だけで反発される。
④ 表面に到達するのに必要な運動エネルギー。 最接近距離は に反比例するので、 にするには次のようになる。
⑤ アルミニウムの場合。 最接近距離は原子核の電荷に比例するので、 である。アルミニウムの原子核の半径は で、最接近距離はその約2倍にすぎない。原子核の大きさに近づくので、静電気力だけでは説明できない現象が観測されやすくなる。
まとめ 正面から近づく α 粒子の最接近距離は、運動エネルギーと位置エネルギーが等しい距離 である。金の原子核では原子の約 で、原子核の半径より大きいので、α 粒子は静電気力だけで反発される。
発展。 ラザフォードは、金箔に当てた α 粒子のごく一部が大きな角度で散乱されることから、原子の質量と正の電荷が小さな原子核に集中していることを明らかにした。軽い原子核では、運動エネルギーを大きくすると散乱の割合が静電気力だけの計算からずれ、原子核の大きさを見積もる手がかりになった。
(1) (2) 約 (3) 約 。原子核の半径は約 で より小さいので、表面に到達しない (4) 約 (5) 約 。半径 の約2倍で、原子核の大きさに近い
別解
別解:電位を用いて計算する。 金の原子核が距離 の点につくる電位は である。α 粒子の運動エネルギー は、電荷 の粒子が電位差 を上る仕事に相当する。
②と一致する。電子ボルトの単位を用いると、電荷とエネルギーの換算が簡単になる。
ポイント
- 最接近では速さが で、運動エネルギーがすべて位置エネルギーになる
- 最接近距離 は運動エネルギーに反比例し、核の電荷に比例する
- が原子核の半径より大きければ、静電気力だけで反発される
よくある間違い
- α 粒子の電荷を とする。α 粒子はヘリウムの原子核で、電荷は である
- 位置エネルギーを とする。 は力の式で、位置エネルギーは に比例する
- 運動エネルギーを MeV のまま位置エネルギー(J)と等しいとおく。 で単位を統一する