物理 / 電磁誘導と交流
初速を与えた導体棒が停止するまでに進む距離
問題
間隔 の水平でなめらかな2本のレールの一端を、抵抗値 の抵抗で接続する。鉛直方向に磁束密度 の一様な磁場がある。質量 の導体棒をレールに垂直に配置し、抵抗から遠ざかる向きに初速 を与える。抵抗以外の電気抵抗と回路の自己誘導は無視する。
(1) 導体棒の速さが のとき、導体棒が磁場から受ける力の大きさと向きを求めよ。
(2) 導体棒が微小な距離 進む間の速さの変化 を、 で表せ。このことから、速さは進んだ距離に対してどのように減少するか。
(3) 導体棒が停止するまでに進む距離を求めよ。
(4) 導体棒が停止するまでに抵抗を流れる電荷と、発生するジュール熱を求めよ。
(5) 導体棒が 進んだときの速さを求めよ。
ヒントを見る
導体棒が受ける力は速さに比例する。微小な時間に受ける力積を、その間に進む距離で表すとどうなるか。
解答・解説
方針
導体棒が受ける力は速さに比例し、 である。微小な時間の運動量の変化を考えると、 なので、速さの減少は進んだ距離に比例する。速さが になるまでの距離は、初めの運動量を力の比例定数で割って求まる。流れる電荷も運動量と力積の関係から求まり、熱は初めの運動エネルギーに等しい。
解答
⓪ 発想(どう考え始めるか) 導体棒が受ける力は速さに比例するので、時間に対しては速さが指数関数的に減少し、停止するまでの時間を求めるのは難しい。しかし、力積は「力 × 時間」で、力が速さに比例するので、力積は「速さ × 時間」すなわち進んだ距離に比例する。
運動量の変化と力積の関係を距離で表すと、速さは距離に対して直線的に減少することが判明する。停止するまでの距離はこの関係から直接求まる。
① 磁場から受ける力。 誘導起電力は 、電流は で、導体棒が受ける力の大きさは次のとおりである。
力の向きは、レンツの法則により運動を妨げる向き、すなわち運動と逆向きである。
② 速さと距離の関係。 微小な時間 の運動量の変化は、力積に等しい。
は に比例するので、速さは進んだ距離に比例して減少する。
③ 停止するまでの距離。 速さが から まで減少するので、次のようになる。
④ 電荷とジュール熱。 力積の大きさは で、運動量の変化 に等しい。
運動エネルギーはすべてジュール熱になるので、熱は である。
⑤ 進んだときの速さ。 ②の関係から、速さは である。
まとめ 速さに比例する力を受けて減速する導体棒では、力積が進んだ距離に比例するので、速さは距離に対して直線的に減少する。停止するまでの距離 と流れる電荷 は、時間の変化を追わずに求まる。
発展。 時間に対しては、速さは ()のように減少し、理論上は停止するまでに限りなく長い時間がかかる。それでも進む距離は有限の にとどまる。渦電流を用いた電車のブレーキでも、低速では力がほぼ速さに比例するので、同じ考え方が適用できる。
(1) [N] で、運動と逆向き (2) 。速さは進んだ距離に比例して減少する (3) (4) 、 (5)
別解
別解:電荷と距離の関係から求める。 導体棒が距離 進む間に、回路を貫く磁束は だけ変化する。流れる電荷は磁束の変化を抵抗で割った値で、 である。
一方、運動量と力積の関係から なので、 となり、 が得られる。③と一致し、流れる電荷 も④と一致する。
ポイント
- 導体棒が受ける力は で、速さに比例する
- 力積は進んだ距離に比例し、速さは距離に対して直線的に減少する
- 停止するまでの距離 、電荷 、熱
よくある間違い
- 力が一定であると考えて、等加速度運動として距離を求める。力は速さに比例して小さくなる
- 速さは時間とともに減少するので、停止するまでに進む距離も無限大になると考える。速さは距離に比例して減少するので、距離は有限である
- 流れる電荷を、初めの電流 と時間の積で求める。電流は時間とともに減少するので、力積との関係か磁束の変化から求める