物理 / 電磁誘導と交流

磁石がコイルを通り抜けるときの起電力のグラフの面積

★★★★ 難関ファラデーの法則磁束グラフの面積

問題

巻数 のコイルを鉛直に固定し、その上方から棒磁石を N 極を下にして落とす。磁石はコイルの中を通り抜けて落下する。磁石がコイルの中央にあるとき、コイル1巻きを貫く磁束は最大値 になり、磁石がコイルから十分に離れているときは とみなせる。コイルの両端の電圧 を、磁石が接近するときの向きを正として記録する。

NSコイル(N=100)落下
鉛直に固定したコイルの上方から、N 極を下にした棒磁石を落とす

(1) 記録した と時間 のグラフで、ある時間の間のグラフと 軸の間の面積は、何を表すか。

(2) 磁石がコイルに接近し始めてから中央に達するまでの、グラフの面積を求めよ。

(3) 磁石が中央から遠ざかる間、 の符号はどうなるか。また、その間のグラフの面積の大きさを求めよ。

(4) 磁石は落下しながら加速するので、遠ざかるときのほうが速い。接近するときと遠ざかるときの のグラフの形は、どのように異なるか。

(5) コイルの両端に の抵抗を接続して同じ実験を行う。磁石が接近し始めてから中央に達するまでに、抵抗を流れる電荷を求めよ。また、通り抜ける全体で流れる電荷の合計を求めよ。コイルの抵抗と自己誘導は無視する。

ヒントを見る

起電力に時間をかけた量は、磁束のどんな量に等しいか。接近するときと遠ざかるときの磁束の変化は、それぞれいくらか。

解答・解説

方針

誘導起電力は なので、 と のグラフの面積は に等しい。接近するときと遠ざかるときで磁束の変化は大きさが同じで符号が逆なので、面積は等しく符号が逆になる。速さが異なっても、面積は磁束の変化だけで定まる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 誘導起電力は磁束の変化の割合に比例する。起電力のグラフを時間について合計した面積は、その間の磁束の変化そのものになる。

磁石がどのような速さで通り抜けても、接近するときの磁束の変化は から 、遠ざかるときは から で、大きさは同じである。グラフの形は速さで変化しても、面積は変化しない。

① グラフの面積の意味。 なので、短い時間 の面積 は である。ある時間の間の面積はその間の の和、すなわちコイル全体の磁束の変化を表す。

② 接近するときの面積。 磁束は から まで増加するので、面積は次のとおりである。

③ 遠ざかるとき。 磁束は から に減少するので、 は負になる。面積の大きさは接近するときと同じ である。

tVO接近(面積 +2.0×10⁻²)遠ざかる(面積 −2.0×10⁻²)
コイルの電圧 V と時間 t(数値計算の例)。接近するときと遠ざかるときで面積の大きさは等しく、遠ざかるときは最大値が大きく時間が短い

④ グラフの形の違い。 遠ざかるときは磁石が速く、同じ磁束の変化が短い時間で進行する。 の大きさは磁束の変化の割合に比例するので、遠ざかるときは最大値が大きく、持続する時間が短い。面積の大きさはどちらも で等しい。

重要起電力と時間のグラフの面積は磁束の変化 に等しく、速さによらない

⑤ 流れる電荷。 電流は なので、流れる電荷はグラフの面積を で割った値である。

遠ざかるときは同じ大きさの電荷が逆向きに流れるので、通り抜ける全体の合計は である。

まとめ 起電力のグラフの面積はその間の磁束の変化 を表す。磁石が接近するときと遠ざかるときで面積は等しく符号が逆で、速さはグラフの形だけを変化させる。

発展。 流れる電荷が磁束の変化だけで定まることを用いると、コイルを磁場から急に引き抜いたときに流れる電荷から、磁束密度を測定できる。この方法では、引き抜く速さを一定にする必要がない。

答

(1) その間のコイル全体の磁束の変化 (2) (3) 負になる。面積の大きさは で、接近するときと等しい (4) 遠ざかるときは磁束の変化が速いので、 の最大値は大きく、持続する時間は短い。面積の大きさは等しい (5) 。全体の合計は

別解

別解:電荷を電流の和として直接求める。 抵抗を接続したとき、短い時間 に流れる電荷は である。磁石が接近し始めてから中央に達するまで和をとると、 の和は なので、電荷は となり、⑤と一致する。

この計算には、磁石の速さやグラフの形は現れない。電荷は、はじめと終わりの磁束の差だけで定まる。

ポイント

  • 起電力と時間のグラフの面積は、その間の磁束の変化
  • 接近するときと遠ざかるときで面積は等しく、符号が逆
  • 速さはグラフの形(最大値と時間)を変化させるが、面積は変化させない

よくある間違い

  • 遠ざかるときは速いので、グラフの面積も大きいと考える。面積は磁束の変化で定まり、接近するときと等しい
  • 磁石がコイルの中央にあるとき、起電力が最大になると考える。中央では磁束が最大で、その変化の割合は なので、起電力は である
  • 通り抜ける全体で流れる電荷を とする。接近するときと遠ざかるときで逆向きに流れるので、合計は である