物理 / 電磁誘導と交流
誘導起電力のある回路では2点間の電圧が経路によって異なる
問題
円形の導線のループの左半分に抵抗 、右半分に抵抗 を接続し、2つの抵抗の境目をループの上の点 A と下の点 B とする。ループの内部だけに紙面の裏から表の向きの磁場があり、ループを貫く磁束は毎秒 の割合で増加している。導線の抵抗は無視する。
(1) ループに生じる誘導起電力の大きさを求めよ。また、ループに流れる電流の向き(時計回りか反時計回りか)を述べよ。
(2) ループに流れる電流の大きさを求めよ。
(3) 抵抗 と の両端の電圧を、それぞれ求めよ。
(4) ループの左側の外に配置した電圧計 1 と、右側の外に配置した電圧計 2 を、どちらも点 A と点 B に接続した。電圧計の導線は磁場のない領域を通り、電圧計の内部抵抗は十分大きい。どちらの電圧計も、A 側の端子から電圧計の内部を通って B 側の端子へ電流が流れるときに、正の値を表示する。電圧計 1 と電圧計 2 の表示を求めよ。
(5) 同じ2点 A、B に接続した電圧計の表示が異なる理由を述べよ。
ヒントを見る
電流は回路全体を1周する。各抵抗の電圧降下はいくらか。左側の電圧計と右側の電圧計は、それぞれどちらの抵抗と閉じた回路をつくるか。その回路は、磁束が変化する領域を囲むか。
解答・解説
方針
誘導起電力 が回路全体に電流を流し、各抵抗の電圧降下は電流と抵抗の積になる。磁束が変化しているとき、誘導電場は1周すると にならないので、「2点間の電位差」は1つに定まらない。それぞれの電圧計は自分の側の抵抗を通る経路の電圧を表示するので、表示が異なり、その差は誘導起電力に等しい。
解答
⓪ 発想(どう考え始めるか) 静電場では、2点間の電位差は経路によらず1つに定まる。しかし、磁束が変化している領域のまわりでは誘導電場ができ、閉じた経路を1周すると起電力が生じる。
そのため、同じ2点 A、B の間の電圧でも、どの経路に沿って測定するかで値が異なりうる。電圧計は、電圧計とその導線、そしてどちらかの抵抗がつくる閉じた回路の中で値を表示する。
① 誘導起電力と電流の向き。 誘導起電力の大きさは磁束の変化の割合 である。紙面の裏から表の向きの磁束が増加しているので、レンツの法則により、それを打ち消す紙面の表から裏の向きの磁場をつくる時計回りの電流が流れる。
② 電流の大きさ。
③ 各抵抗の電圧。
④ 電圧計の表示。 時計回りの電流は、右半分では A から B へ、左半分では B から A へ流れる。電圧計 2 とその導線と がつくる閉じた回路は磁束が変化する領域を囲まないので、電圧計 2 には と同じ電圧 がかかり、電流は と同じく A 側から B 側へ流れる。表示は である。
電圧計 1 には同じ理由で と同じ電圧 がかかるが、 の電流は B から A へ流れるので、電圧計 1 の内部も B 側から A 側へ電流が流れる。表示は である。
⑤ 表示が異なる理由。 電圧計 1 の経路と電圧計 2 の経路を接続すると、ループと同じく磁束が変化する領域を囲む閉じた経路になる。この経路を1周すると誘導起電力 が生じるので、2つの経路に沿った電圧の差は になる。
まとめ 誘導電場は1周すると起電力を生じるので、2点間の「電位差」は経路によって異なる。同じ2点に接続した電圧計でも、配置によって表示が異なり、その差は誘導起電力に等しい。
発展。 交流の大きな電流が流れる装置の近くで電圧を測定すると、測定用の導線の引き回し方によって表示が変化することがある。磁束が変化する領域を測定の導線が囲まないように配線するのは、この効果を回避するためである。
(1) 、時計回り (2) (3) は 、 は (4) 電圧計 1 は 、電圧計 2 は (5) 磁束が変化している領域では、誘導電場が閉じた経路に沿って1周すると の起電力になり、2点間の電圧は経路によって異なる。電圧計 1 と 2 の経路を接続すると磁束が変化する領域を囲むので、表示の差は誘導起電力 に等しい
別解
別解:電圧計 1 と電圧計 2 を含む大きな回路で考える。 電圧計 1 から A を経て電圧計 2 へ、さらに B を経て電圧計 1 に至る閉じた経路は、ループの内部の磁束が変化する領域を囲む。この経路を時計回りにたどったときの起電力は である。
電圧計の内部抵抗は十分大きいので、この経路の電圧は2つの電圧計にかかる。時計回りにたどると、電圧計 2 では A 側から B 側へ、電圧計 1 では B 側から A 側へ進むので、 である。④の 、 はこの関係を満たす。
ポイント
- 磁束が変化すると、閉じた経路を1周する起電力が にならない
- 同じ2点間でも、電圧は経路によって異なる。差は囲む磁束の変化の割合
- 電圧計は自分の側の抵抗を通る経路の電圧降下を表示する
よくある間違い
- 同じ2点に接続した電圧計は、配置によらず同じ値を表示すると考える。磁束が変化する領域があると、経路によって電圧が異なる
- 2つの抵抗の電圧の和が になると考える。1周すると誘導起電力 に等しくなる
- 電流の向きを反時計回りとする。紙面の裏から表の向きの磁束の増加を打ち消すには、時計回りの電流が必要である