物理 / 電場と電位
極板の間を往復する金属球が運ぶ電流
問題
間隔 で鉛直に配置した2枚の極板に、電圧 の電池を接続する。極板の間のなめらかな絶縁体の水平面の上に、質量 の小さな金属球がある。金属球は極板に接触するたびに、その極板と同じ符号で大きさ の電荷を帯び、静止の状態から反対の極板へ向かって移動を開始する。反対の極板に衝突すると速さは になり、電荷はすぐに反対の符号に変化する。極板の間の電場は一様とし、金属球による電場の乱れと空気の抵抗は無視する。
(1) 金属球が受ける力の大きさと、加速度の大きさを求めよ。
(2) 金属球が一方の極板から他方の極板まで移動する時間と、衝突する直前の速さを求めよ。
(3) 衝突する直前の運動エネルギーが に等しいことを確認せよ。
(4) 金属球が1回移動するたびに、電池を通過する電荷はいくらか。また、電池を流れる平均の電流を求めよ。
(5) 電圧を2倍にすると、金属球が帯びる電荷の大きさも2倍になるとする。平均の電流は何倍になるか。
ヒントを見る
金属球の電荷が反対の符号に変化するとき、極板との間でどれだけの電荷が移動するか。等加速度運動で距離 を進む時間は、加速度とどんな関係にあるか。
解答・解説
方針
金属球は一様な電場から一定の力 を受け、静止の状態から等加速度運動をする。1回の移動で金属球の電荷は から (または逆)に変化するので、極板と金属球の間で の電荷が移動し、電池がそれを補う。平均の電流は1回の移動で電池を通過する電荷を移動の時間で割った値である。
解答
⓪ 発想(どう考え始めるか) 金属球は、正の極板で正の電荷を得て負の極板まで移動し、そこで負の電荷を得て正の極板まで移動する。この往復によって、正の電荷が正の極板から負の極板へくり返し運ばれる。
1回の移動にかかる時間は、一様な電場の中の等加速度運動から求まる。電流は1回の移動で電池を通過する電荷をその時間で割れば求まる。
① 力と加速度。 電場は である。
② 移動の時間と速さ。 静止の状態から距離 を進むので、次のようになる。
③ 運動エネルギー。
電場がした仕事 が、すべて運動エネルギーになっている。
④ 電池を通過する電荷と電流。 の金属球が負の極板に衝突すると、金属球の電荷は に変化する。金属球の電荷が 減少した分だけ負の極板の電荷が 増加するので、電池は負の極板から正の極板へ の電荷を移動させて、極板の電荷をもとの値に保つ。
1回の移動ごとに が電池を通過するので、平均の電流は次のとおりである。
⑤ 電圧を2倍にしたとき。 電荷 と電場 がともに2倍になるので、力と加速度は4倍になる。時間は に比例して 倍になり、1回に運ぶ電荷は2倍なので、電流は 倍になる。
電流は電圧の2乗に比例し、オームの法則にしたがわない。
まとめ 電場の中の金属球は一様な電場から一定の力を受けて往復し、1回ごとに の電荷を運ぶ。電流は運ぶ電荷と移動の時間で定まり、電荷が電圧に比例するときは電圧の2乗に比例する。
発展。 この装置の原理は、静電気で鳴る「静電気のベル」と同じである。電荷を帯びた物体が移動して電流が流れるしくみは、電解液の中のイオンが電荷を運ぶ電流とも共通している。
(1) 、 (2) 、 (3) 、 で等しい (4) 、 (5) 倍
別解
別解:電池がする仕事から電流を求める。 1回の移動で電池が の電荷を移動させると、電池の仕事は である。1回の移動は なので、電池が供給する平均の電力は である。
電力は に等しいので、 となり、④と一致する。電池の仕事のうち金属球の運動エネルギーになるのは で、半分である。もう半分は、接触して電荷が変化するときの電流によって熱になる。
ポイント
- 金属球は一様な電場から一定の力 を受け、静止の状態から等加速度運動をする
- 1回の移動で電荷が から に変化し、 の電荷が電池を通過する
- 電荷が電圧に比例すると、電流は電圧の2乗に比例する
よくある間違い
- 1回の移動で運ぶ電荷を とする。金属球の電荷は から に変化するので、極板との間で が移動する
- 電圧を2倍にすると電流も2倍になると考える。電荷と電場がともに2倍で移動の時間が半分になるので、電流は4倍である
- 移動の時間を ( は衝突の直前の速さ)とする。等加速度運動なので平均の速さは で、時間は である