物理 / 電場と電位
つないだ 2 つの導体球 — 電荷はどう分かれるか
問題
半径 の導体球 A と、半径 の導体球 B が、たがいに十分離して置かれている。はじめ A には の電荷があり、B は帯電していない。
この 2 つを細い導線でつなぐ。導線の電気容量と、2 つの球がたがいに及ぼす影響は無視してよい。半径 の導体球に電荷 があるとき、球の外側の電場と電位は、中心に点電荷 があるときと同じであるとしてよい。クーロンの法則の比例定数を とする。
(1) つなぐ前の A の電位を求めよ。
(2) つないだあと、A と B の電荷はそれぞれいくらになるか。
(3) つないだあとの共通の電位と、A・B それぞれの表面の電場の強さを求めよ。
(4) つなぐ前後で静電エネルギーはどれだけ変わるか。その差はどこへ行ったか。
ヒントを見る
導線でつながれた 2 つの導体について、必ず等しくなる量は何か。電荷の合計は変わらない。表面の電場と電位を、半径を使って結びつけたい。
解答・解説
方針
導線でつなぐと 2 つの球は 1 つの導体になるので、電位が等しくなる。この条件と電荷の保存を連立すれば分配が決まる。表面の電場は電位を半径で割った形になるので、小さい球ほど強くなる。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 「電荷は大きい球に多く行きそう」という直感は正しいが、その配分は何で決まるのか。
導線でつなぐと 2 つの球は 1 つの導体になる。導体の内部に電位差があれば電荷が動き続けるので、静止したときには電位が等しくなっているはずである。
つまり使う条件は 2 つ、「電位が等しい」と「電荷の合計が変わらない」だけである。
① つなぐ前の電位。 半径 の導体球に電荷 があるとき、表面の電位は中心に点電荷があるときと同じで である。
② 電荷の分配。 つないだあとの電荷を とすると
第 1 式から である。
③ 電位と表面の電場。
表面の電場は
ここが面白いところである。電位は等しいのに、表面の電場は小さい球のほうが強い。実際、 と を比べると
だから、電位が同じなら電場は半径に反比例する。比は である。
④ エネルギーの行方。 電荷 をもつ導体球の静電エネルギーは である。
つなぐ前は
つないだあとは、どちらの球も電位が だから
が失われた。電荷が導線を移動するとき、導線には電流が流れる。その間にジュール熱として失われた分である(移動が速ければ電磁波としても放出される)。
まとめ 条件は「電位が等しい」「電荷の合計が一定」の 2 つだけ。そこから、電荷は半径に比例して分かれ、表面の電場は半径に反比例することが出る。
発展 — 一歩先へ。 ③ の結果は、とがった部分ほど電場が強いことを意味する。導体の先端は「小さい半径の球」に近いので、そこだけ電場が桁違いに強くなり、空気の絶縁が破れて放電が起きる。これが尖端放電で、避雷針が針の形をしているのはこのためである。
逆に、高電圧の装置で放電を防ぎたいときは、角をなくして丸みをもたせる。同じ電位でも、半径が大きければ表面の電場は弱いからである。
、・、電位 で表面の電場は と 、 が導線で熱になる
別解
電気容量で見るルート。 孤立した導体球の電気容量は で、半径だけで決まる。つまり球は「容量 のコンデンサー」とみなせる。
2 つの球を導線でつなぐのは、コンデンサーの並列接続である。並列では電圧が共通で、電荷は容量に比例して分かれる。
合成容量は だから、共通の電位は
エネルギーの損失も、コンデンサーの知識がそのまま使える。充電されたコンデンサーを別のコンデンサーにつなぐと必ずエネルギーが減る、というよく知られた事実の一例である。
「導体球 = コンデンサー」と読みかえると、回路で覚えた道具がそのまま静電気の問題に持ちこめる。
ポイント
- 導線でつながれた導体は電位が等しくなる
- 導体球の電荷は半径に比例して分かれる(容量が R/k だから)
- 電位が同じなら表面の電場は半径に反比例する(E=V/R)
- つなぐと静電エネルギーは必ず減り、差は導線での発熱になる
よくある間違い
- 電荷が等しく分かれると考える(等しくなるのは電位)
- 電場も電位と同じく等しくなると思う(E=V/R なので半径で変わる)
- エネルギーが保存すると考える(電荷の移動にともなって必ず失われる)