物理 / 電場と電位

電位の異なる領域に進んだ電子線が曲がる

★★★★ 難関電子の加速電位速度の成分

問題

静止していた電子を電圧 で加速し、電位が一様な領域 I に入射させる。領域 I と隣り合う領域 II の電位は、領域 I より 高い。2つの領域の境界は平面で、電位は境界の近くのごく薄い層の中だけで変化する。電子線は境界の法線と角 をなして境界に到達する。電子の質量を 、電気素量を とする。

領域 I領域 II(44 V 高い)θ₁電子線法線
加速した電子線が電位の高い領域 II との境界に到達する

(1) 領域 I での電子の速さを求めよ。

(2) 領域 II での電子の速さは領域 I の何倍か。

(3) 境界の層で電子が受ける力はどの向きか。このことから、境界を通過する前後で変化しない速度の成分を述べよ。

(4) のとき、領域 II で電子線が法線となす角 を求めよ。

(5) 逆に、領域 II から領域 I へ電子線を入射させる。法線となす角がある値をこえると、電子線は領域 I に進入できず、境界で反射される。その角の正弦を求めよ。

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領域 II の電子の運動エネルギーは静止の位置から何 V の電位差で加速された値か。境界の薄い層の電場はどの向きを向くか。そのとき、速度のどの成分が変化しないか。

解答・解説

方針

電子の運動エネルギーは静止の位置を基準とした電位差に電気素量をかけた値なので、速さは電位差の平方根に比例する。境界の層の電場は法線の向きなので、境界に平行な速度の成分は変化しない。 が、光の屈折の法則と同じ役割をする。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 境界の層では電位が法線の向きにだけ変化するので、電場も法線の向きを向く。電子が受ける力は法線の向きだけで、境界に平行な速度の成分は変化しない。

一方、速さは運動エネルギーで定まり、領域 II では の電位差で加速されたのと同じになる。平行な成分が一定のまま速さが変化するので、電子線の向きが変化する。

① 領域 I での速さ。

② 領域 II での速さ。 電子は負の電荷なので、電位の高い領域 II へ進むと運動エネルギーが だけ増加し、全体で の電位差で加速されたのと同じになる。速さは電位差の平方根に比例する。

③ 境界の層での力。 電位は法線の向きにだけ変化するので、電場は法線の向き(領域 II から領域 I の向き)を向く。負の電荷の電子は電場と反対の領域 II の向きに力を受ける。力に境界に平行な成分がないので、速度の境界に平行な成分は変化しない。

④ 屈折の角。 境界に平行な成分は、領域 I で 、領域 II で である。

θ₁30°曲がらない場合領域 I領域 II
電子線は境界で法線に近づく向きに曲がる。境界に平行な速度の成分は変化しない

電子線は、法線に近づく向きに曲がる。

重要電位が法線の向きにだけ変化する境界では、境界に平行な速度の成分が保存される。 で、速さは加速の電位差の平方根に比例する

⑤ 領域 I へ進入できない条件。 領域 II から領域 I へ進むときも で、 である。 は をこえられないので、 のとき、電子は領域 I に進入できない。

このときは法線の向きの速度の成分が小さく、電子は境界の層で法線の向きの運動エネルギーをすべて失って反射される。光の全反射と同じ形の条件である。

まとめ 境界に平行な成分の保存とエネルギーの保存から、電子線の屈折の法則 が得られる。電子は速い領域に進むと、法線に近づく向きに曲がる。

発展。 光は速さの小さい物質に進むと法線に近づくので、電子線とは逆の関係である。光では屈折率が速さに反比例するが、電子線では速さそのものが屈折率の役割をする。電子顕微鏡では、電場や磁場で電子線を曲げてレンズの働きをさせている。

答

(1) 約 (2) 倍 (3) 境界の法線の向きで、領域 II の向き。境界に平行な成分は変化しない (4) (5) (約 )

別解

別解:法線の向きの成分をエネルギーから求める。 領域 I での法線の向きの成分は である。境界に平行な成分 は変化しないので、領域 II の速さ から、法線の向きの成分は次のようになる。

から で、④と一致する。境界の層で増加した運動エネルギーは、すべて法線の向きの運動に加わっている。

ポイント

  • 境界の層の電場は法線の向きで、境界に平行な速度の成分は変化しない
  • 速さは加速の電位差の平方根に比例する。
  • 速い領域から遅い領域へは、角が大きいと進入できずに反射される

よくある間違い

  • 電位の高い領域では電子が減速すると考える。電子は負の電荷なので、電位の高い領域へ進むと加速する
  • 速さの比を電位差の比 とする。運動エネルギーが電位差に比例するので、速さは平方根の比 である
  • 光と同じように、速い領域に進むと法線から遠ざかると考える。境界に平行な成分が一定なので、速さが大きいほど法線に近づく