数学B / 統計的な推測

統計的な推測 ★★ 標準の問題 全12問

定期テストレベル。典型パターンの運用

難易度: ★ 基礎·★★ 標準·★★★ 応用·★★★★ 難関·実戦編·最難関編

  1. 確率分布の決定と期待値
  2. 分散の計算
  3. 1次式の平均と分散
  4. 二項分布の平均・分散
  5. 二項分布の確率
  6. 正規分布の確率(区間)
  7. 二項分布の正規近似
  8. 標本平均の分布と確率
  9. 母平均の信頼区間
  10. 母比率の信頼区間
  11. 独立な確率変数の和の分散
  12. 期待値・分散の線形性

問1確率分布の決定と期待値

★★ 標準期待値確率分布

問題

確率変数 が値 をとり、 が に比例する。すなわち 、、 である。定数 と期待値 を求めよ。

ヒントを見る

確率のすべての和は必ず になる。これが を決める方程式になる。 が決まれば、期待値は定義どおりの計算。

解答・解説

方針

確率の合計は必ず 。 から を決める。そのうえで を計算する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 未知の を決める手がかりは、確率の大原則ただひとつで、全部足すと になることだ。

分布が確定したら、期待値は「値 確率」の総和。

分布決定型の問題はいつも「まず合計 で分布を確定、それから 」の順で解く。

公式確率の総和は :。期待値

① を決める。 確率の合計が 。

② 期待値を計算する。 、、。

123平均
P(X=k)=k/6 の分布。総和=1 で a を決める。E(X)=7/3

まとめ:確率分布の未知数は「総和 」でまず決める。これは確率で必ず成り立つ決まりだ。 が決まれば、あとは期待値の公式に入れるだけだ。

発展。 が、真ん中の値 より大きい点に注目したい。大きい値ほど確率が重い(枚数が多い)分布だから、平均は重い側へ引っ張られる。期待値は「分布の重心」である。てんびんに 枚のカードを乗せたときの釣り合いの位置、と思うと直感に残る。

「 が に比例」する分布は、一般の から なら ( の公式)で決まる。確率分布の正規化に数列の和が出てくるのは、単元をまたぐ小さなつながりである。

答

、

別解

確率 を、 枚のカードに置き換えると素朴に見える。「」のカードを 枚、「」を 枚、「」を 枚、計 枚から 枚引くくじだと思えば、この分布と完全に同じだ。期待値は 枚の値のただの平均になる。

「値 確率の和」という公式は、「枚数分だけ書き並べて平均をとる」ことを短く書いたものにすぎない。分子の は、カードを種類ごとにまとめて数えたものだ。

期待値の計算で手が止まったら、確率を枚数に戻して平均をとる。この言い換えはどの分布でも使える。

ポイント

  • 確率の総和 で未知数を決める。
  • 。

よくある間違い

  • 合計 の条件を使わず が決められず止まる(確率分布の唯一の拘束条件)
  • 期待値を値の単純平均 とする(確率の重みを掛ける)
  • を約分しきらない・仮分数を帯分数に直すなど答えの形を崩す

問2分散の計算

★★ 標準分散

問題

確率変数 は値 をとり、 である。期待値が のとき、分散 を求めよ。

ヒントを見る

『 乗の平均から平均の 乗を引く』形で。 は『値の 乗 × 確率』の合計だ。 乗を忘れて計算しがちなので注意。

解答・解説

方針

。まず を求め、 を引く。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 分散の計算は、定義どおり を集めるより、計算式

が速いことが多い。 のような分数だと、 の計算が毎回分数になるからだ。 は「値の 乗 確率」の和。 はもう手元にあるから、あとは 乗して引くだけ。「 乗の平均 平均の 乗」と唱えて覚える。

公式

① を求める。

② 分散を計算する。

123平均
平均 7/3 のまわりの散らばり。V=5/9

まとめ:分散は 。 は「値の 乗 × 確率」の和。 の通分をていねいに()。

発展。 つの式が常に一致する理由は、定義式を展開すると分かる。 となる。真ん中の項で 、最後で を使うと、 にまとまる。データの分析(数I)で学んだ分散の変形と同じ計算だ。

から、副産物として が常に成り立つことも読める。「 乗の平均は、平均の 乗より小さくならない」ことは、統計と不等式をつなぐ小さいが大事な事実である。

答

別解

定義式 でも計算して、突き合わせてみよう。分散の意味( からのずれの 乗の平均)が計算の形のまま見える。 からの各値のずれは 、、。

計算式ルートと一致した。

見どころは、重みがどう影響するかだ。いちばん遠い値 (ずれ )は確率が軽く、いちばん重い値 はずれが小さい。だから分散は とかなり小さい。定義式は手間がかかるぶん、「どの値がどれだけ散らばりに寄与しているか」まで分かる。検算を兼ねて一度は両方で計算しておくと、公式の信頼感が変わる。

ポイント

  • 。
  • 通分をていねいに。

よくある間違い

  • を と混同する( 乗してから平均と、平均してから 乗は別物)
  • の計算で確率を掛け忘れ とする
  • 引き算 の通分()を誤る

問31次式の平均と分散

★★ 標準期待値分散変換

問題

、 のとき、 と を求めよ。

ヒントを見る

期待値と分散、それぞれの 次式の性質を使う。定数を足す操作が影響するのはどちらか、係数はどう影響するか。違いを整理してから当てはめよう。

解答・解説

方針

、。、 を入れる。分散では は影響せず、 倍になる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) を 倍して 引いた新しい変数の平均と分散。分布表を作り直さなくても、変換の公式で片づく。

覚えどころは非対称さだ。平均は「 倍して 引く」がそのまま伝わる。分散はずらし()の影響を受けず、倍率は 乗で入る。全員を同じだけずらしても散らばりは変わらず、 倍に引き伸ばすと 乗の量である分散は 倍になる、という理屈である。

公式、

① 期待値。

② 分散。 は影響せず、 倍。

まとめ:期待値は 次式をそのまま通す( 倍して )。分散は平行移動()を無視し、 を にする。この非対称さ( と )を押さえる。

発展。 この変換公式の最重要応用が後で学ぶ標準化 だ。 の 次変換だから、、 となる。どんな分布も「平均 ・散らばり 」の物差しにそろえられる。正規分布の表が 枚で済む理由が、この問題の公式にある。

データの分析(数I)の「仮平均」「変量の変換」とも同じ式。確率変数でもデータでも、 次変換に対する平均と分散のふるまいは一言一句同じである。

答

、

別解

公式を信じられないときは、新しい変数の分布表を実際に作って確かめられる。 の値は、 に対応して 。確率はそのまま だ。

分散も直接に。 だから

公式の答え(、)と完全に一致する。値が つ程度なら直接計算も数分で済む。公式ルートと直接ルートの答え合わせを一度自分の手でやると、 は係数がそのまま・ は 乗という非対称が「暗記」から「納得」に変わる。

ポイント

  • 。
  • ( は無関係)。

よくある間違い

  • 分散にも を反映して とする(ずらしは散らばりを変えない)
  • の係数を 乗せず とする
  • 標準偏差と分散を混同する( は 倍、 は 倍)

問4二項分布の平均・分散

★★ 標準二項分布

問題

個のさいころを 回投げて、 の目が出る回数を とする。 の期待値、分散、標準偏差を求めよ。

ヒントを見る

この設定は二項分布。・・失敗の確率を確認して、期待値・分散の公式に乗せる。

解答・解説

方針

は二項分布 。、、 に代入する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 「同じ試行を 回、各回あたり確率 、回数を数える」という設定を見たら、 は二項分布 だと型を当てる。

二項分布なら、平均・分散は公式ですぐに出る。

代入して 、、。「設定から分布の型を特定 → 型の公式を使う」のが統計の問題の基本動作である。

公式二項分布 :、、

。、。

① 期待値。

② 分散。

③ 標準偏差。

まとめ:反復試行の回数は二項分布。、、 の 点セットをまとめて出せる。定義から計算する必要はない。

発展。 の使い道を一言。 回投げて の目は「 回くらい」になる。 の幅なら 〜 回にほぼ収まる( 前後)。もし 回も出たら平均から 、それはサイコロを疑う場面だ。平均と標準偏差のペアは「ふつうの範囲」の物差しになる。

別解の「– 変数に分解して足す」は、期待値の線形性の使い方のよい見本だ。分解した が独立でなくても の側は成り立つ(分散の加法だけが独立を要求する)。この区別は後の応用で役に立つ。

答

、、

別解

公式 、 がどこから来るのかは、 回を「 回分 」に分解すると分かる。 回目に の目が出たら 、出なかったら をとる変数を とすると、総回数は

回分の平均と分散は小さな計算で出る。。また ( と は 乗しても不変)だから

各回は独立なので、平均も分散もそのまま足せる。

と は「 回分 の 人分」だった。公式を忘れても、この分解からいつでも復元できる。

ポイント

  • 二項分布は 、、。
  • 点セットで覚える。

よくある間違い

  • の を掛け忘れて とする
  • 標準偏差を分散と取り違える(。 のまま答えない)
  • でなく「 の目の数 通り」から 等と誤設定する

問5二項分布の確率

★★ 標準二項分布確率

問題

当たる確率が のくじを 回引くとき(毎回もとに戻す)、ちょうど 回当たる確率を求めよ。

ヒントを見る

『 回中どの 回で当たるかの選び方』×『当たり 回の確率』×『はずれ 回の確率』。 つの部品をそれぞれ丁寧に。

解答・解説

方針

当たる回数 は二項分布 。 を計算する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 「毎回もとに戻す」ので、各回が独立で当たる確率が常に だ。当たり回数 は二項分布 だ。

「ちょうど 回」の確率は つの部品の積で組み立てる。 つの並び方(例: 当当外外外)の確率が 。当たり 回の位置の選び方が 通り。掛けて

二項分布の式の中身は「 本の道の確率 道の本数」だけである。

公式

。 を代入する。当たり 回、はずれ 回。

01234580/243
B(5,1/3) の分布。ちょうど2回当たる=80/243

まとめ:(どの 回で当たるか)、(当たり 回)、(はずれ 回)。指数の合計 が試行回数と合うか確認するとミスが減る。

発展。 から まで全部足すと になる(二項定理 の展開そのもの)。「二項分布」という名前は、この二項定理との対応から来ている。

期待値は 回。最頻値( 回と 回)が期待値を挟んでいるのも、分布の山が期待値のあたりに立つという一般的な性質の現れだ。回数が増えて ともなれば、この山はなめらかな釣鐘(正規分布)に近づいていく(この単元の後半で正規近似として学ぶ)。

答

別解

「ちょうど 回」だけでなく、分布の全体を並べて見ると、この答えの立ち位置が見える。

よく見ると、 と が同じ で、そろって最頻値になっている。偶然ではない。となり合う確率の比をとると

比はちょうど なので、 回と 回の間が、確率の増減が入れ替わる境目になっている(目安の値 がぴったり整数になるときの現象だ)。「隣との比 で分布の山を探す」見方は、二項分布の最大確率を問う応用問題でよく使う。ここで先取りしておこう。

ポイント

  • 。
  • 指数の合計 を確認。

よくある間違い

  • 外れの 回分 を掛け忘れる(当たりだけでは 回分の確率にならない)
  • の位置の数を掛け忘れ、 本の道の確率 を答えにする
  • 「ちょうど 回」と「 回以上」を混同する(以上なら )

問6正規分布の確率(区間)

★★ 標準正規分布標準化

問題

確率変数 が正規分布 に従うとき、 を求めよ。ただし 、 とする。

ヒントを見る

両端を標準化すると、 の範囲が をまたぐ形になる。 をまたぐ確率は左右 つに割って足す。負の側は対称性で正の側に読み替える。

解答・解説

方針

両端を標準化して の範囲に直す。範囲が中央 をまたぐので、 と に分けて足す。左半分は対称性で と等しい。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 正規分布の確率は、必ず標準化してから表を引く。 で物差しを取り替えると

表にあるのは「 から右側」の面積だけ。範囲が中央 をまたぐので、左右に割る。左の は、釣鐘の左右対称性から と同じ面積。右の はそのまま表の値。 つを足せば答えだ。「またぐなら割る、左は対称で右に映す」のが、区間確率の定跡である。

重要範囲が中央 をまたぐときは、 で分けて足す。左側は対称性で に直す

① 両端を標準化する。 。

② で分ける。 求めるのは 。中央 で左右に分ける。

③ 左側を対称性で直す。 標準正規分布は左右対称なので 。

xyO-11.5
N(60,10^2)を標準化。-1≦Z≦1.5 の面積 0.3413+0.4332=0.7745

まとめ:範囲が中央をまたぐと、表(片側のみ)そのままでは引けない。 で分け、負の側は左右対称性で正の側に読みかえてから足す。これが正規分布の確率計算の要だ。

発展。 どんな正規分布でも標準化 つで同じ表が使える理由は、 次変換の公式(、)にある。 は 、 を作る特別な 次変換で、正規分布は 次変換で正規分布のままである。この つが揃って「表は 枚で足りる」が成立する。

()・()・()の三点セットは、テストの偏差値(偏差値 は で、上位 前後)や品質管理( 管理)など、実務でもよく使われる。

答

別解

標準化を「式の操作」でなく「目盛りの貼り替え」として見ると、迷いが減る。もとの数直線の の位置に 、 に 、 に 、 に と、「平均から標準偏差何個分か」という新しい目盛りを貼る。これが だ。

は「平均より ひとつ左」、 は「 1.5 個分右」。問題は「 から までの面積は?」と読み替えられた。

この目盛りで有名な数値を覚えておくと検算になる。 の内側は約 、 で約 。今回の答え は「()より右に半個分広い区間」の確率なので、 より少し大きい値として妥当だと、表を引く前から見積もれる。

正規分布の問題はすべて「 何個分か」の言葉で言い換えられる。 のまま考えず、まず目盛りを貼り替える癖をつけよう。

ポイント

  • 中央 をまたぐ範囲は で分けて足す。
  • 負の側は対称性で に。

よくある間違い

  • 標準化で でなく分散 で割る( の は分散の表記)
  • をまたぐ区間なのに と引いてしまう(またぐときは足す)
  • 表の値 を と混同する(表は からの面積)

問7二項分布の正規近似

★★ 標準二項分布正規分布正規近似

問題

枚の硬貨を 回投げて表が出る回数を とする。 が 回以上になる確率を、正規分布で近似して求めよ。ただし とする。

ヒントを見る

回数の分布(二項分布)を正規分布で近似するのが主題。近似先の平均と標準偏差を二項分布から作り、あとは標準化して表を引く。『以上』の確率は全体の半分から引く形になる。

解答・解説

方針

は 。 が大きいので正規分布 で近似できる。平均 、標準偏差 を出し、標準化して表を引く。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) は二項分布 。 を厳密に計算するなら 項の足し算になり、現実的でない。

そこで近似を使う。 が大きい二項分布は、同じ平均・分散をもつ正規分布 でほぼ置き換えられる。

平均 、分散 、標準偏差 。あとは正規分布の問題として標準化し、表を引くだけだ。「離散の山を、なめらかな釣鐘で置き換える」のが、二項分布の正規近似である。

重要二項分布 は、 が大きいとき正規分布 で近似できる

① 平均と標準偏差を出す。 。

よって はおよそ に従う。

② 標準化する。 を標準化。

③ 確率を求める。 。これは右のすそ野の面積で、 から を引く。

xyO1.5
N(200,10^2)を標準化。Z≧1.5 の右すそ 0.5-0.4332=0.0668

まとめ:回数の多い二項分布は で近似できる(正規近似)。平均 ・標準偏差 を出して標準化すれば、正規分布の確率として計算できる。 の形も要注意。

発展。 「二項分布は が大きいと正規分布に近づく」はド・モアブル=ラプラスの定理と呼ばれ、さらに一般化した中心極限定理(どんな分布でも、独立な和は正規分布に近づく)は統計学全体の基礎だ。身長・測定誤差など「小さな要因の足し合わせ」が正規分布になりやすい理由もここにある。

より精密には、離散の を連続の と半目盛りずらして近似する「連続性の補正」もある(大学レベル)。高校の答え に対し補正後は約 となる。近似の精度を上げる工夫まで含めて、この定理は実用の道具になっている。

答

約

別解

計算の前に「 回は多いのか?」を の物差しで見積もる習慣をつけたい。 回投げれば表は平均 回。ぶれの単位は 回だ。

回は「平均より 1.5 個分多い」ので、珍しさで言えば中の上、という位置づけがまず読める。()にはまだ届かないから、確率は数 % 台のはず、と当たりがつく。実際、 で、見積もりどおり約 だ。

この「まず で測る」感覚は答えの検算になるだけではない。もし問題が「 回以上」()なら 台になり、「この硬貨は歪んでいるのでは?」と疑い始める水準だ。これは後で学ぶ仮説検定の考え方の基礎である。

ポイント

  • ( 大)。
  • 。

よくある間違い

  • 近似に使う正規分布の分散を でなく や にしてしまう
  • 標準化で でなく分散 で割って とする
  • を表の値 のまま答える( から引く)

問8標本平均の分布と確率

★★ 標準標本平均正規分布

問題

母平均 、母標準偏差 の母集団から大きさ の標本を抽出する。標本平均 が 以上になる確率を求めよ。ただし は正規分布に従うとみなし、 とする。

ヒントを見る

標本平均の従う正規分布(平均・標準偏差)をまず特定する。標準偏差が で縮むことを忘れずに。あとは標準化して表へ。

解答・解説

方針

標本平均 は正規分布 に従う。 の標準偏差 を出し、 を標準化して表を引く。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 個々のデータではなく「 個の平均 」を中心に考える。平均をとると、ばらつきは縮む。

中心は母平均 のまま、標準偏差は に縮む。あとはいつもの標準化だ。 は となり、「平均の分布」の上では という、かなり珍しい値になる。

重要標本平均 は正規分布 に従う(中心極限定理)

① の分布を出す。 平均 、標準偏差 。よって 。

② 標準化する。 。

③ 確率を求める。

xyO2
標本平均を標準化(σ/√n=1)。Z≧2 の右すそ 0.5−0.4772=0.0228

まとめ:標本平均は 。ふつうの正規分布の確率計算と同じだが、標準偏差が (母標準偏差ではない)なのが要注意。ここを間違えると標準化がずれる。

発展。 「標本平均 以上になる確率は 」と小さい。この小ささを逆に利用するのが、次に学ぶ推定と仮説検定だ。実際に が観測されたら、「母平均は本当に なのか?」と疑う根拠になる( を切る珍しさ、がよく使われる基準)。確率の計算問題がそのまま統計的判断の部品になっている。

母集団の分布が正規分布でなくても、 が大きければ の分布は正規分布に近づく(中心極限定理)。「平均をとると正規分布に均される」ことが、標本平均が統計学で特別扱いされる理由である。

答

約

別解

という縮み方は丸暗記でなく分散の足し算から導ける。標本の合計 を考える。各 の分散は で、無作為抽出なら互いに独立だ。独立な分散は足せるから

平均は 。 次変換で分散は係数の 乗倍だから

一般に で、分散は 倍、標準偏差は 倍になる。「和で 倍に増えた分散を、 で割る操作が 乗で入って 分の にする」 という2つの効果の差し引きとして、 が出てくる。

倍のデータで誤差半分、 倍でようやく 分の になる。精度は標本数の平方根でしか改善しない。調査のコスト感覚として覚えておく価値がある。

ポイント

  • 。
  • 標準偏差は (縮む)。

よくある間違い

  • の標準偏差を母標準偏差 のまま使い とする
  • の を にして とする(分散が 、標準偏差は )
  • を のまま答える()

問9母平均の信頼区間

★★ 標準推定信頼区間

問題

母標準偏差 の母集団から大きさ の標本を抽出したところ、標本平均は であった。母平均 に対する信頼度 の信頼区間を求めよ。ただし信頼度 では を用いる。

ヒントを見る

信頼区間は『標本平均 ± 幅』の形。幅は (標本平均の標準偏差)。まず標本平均の標準偏差を計算しよう。

解答・解説

方針

母平均の信頼区間は 。標本平均 、 を入れる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 標本平均 が得られた。母平均 そのものは分からない。だが、「 がこのあたりにいる」と幅で答えることはできる。それが信頼区間だ。

信頼度 の公式は

部品は つ。標本平均 、ばらつきの単位 、そして に対応する係数 。代入して 。

定理母平均の信頼度 の信頼区間:

① 標準誤差を出す。 。

② 信頼区間を計算する。 、。

xyO-1.961.96
標本平均の分布。中央±1.96(95%)の範囲が信頼区間に対応

まとめ:信頼区間は「標本平均を中心に、 標準誤差」。信頼度 は「この区間が母平均を含む確率が 」という意味。標準誤差 を正しく出すことが大事だ。

発展。 区間の幅は 。幅を半分にしたければ を 倍にする。つまり標本を 倍( 個)集める必要がある。「精度は でしか買えない」という標本平均の性質が、そのまま調査コストの見積もり式になる。

信頼度を に上げると係数は 、区間は広がる。「自信を持ちたければ幅を広く、幅を絞りたければ自信を下げるか標本を増やす」という、信頼度・幅・標本数の三すくみがこの 本の式に収まっている。

答

別解

公式の がどこから来るかは、前の問題(標本平均の分布)から不等式を裏返すだけで導ける。標本平均 は に従う()。正規分布では の確率で に収まるから

ここで絶対値の不等式 を読み替える。「 が から 以内」と「 が から 以内」は、同じことを主語を替えて言っただけだ。

観測値 を入れると となり、公式と同じ区間が、意味つきで出てきた。「信頼区間 標本平均の届く範囲を、母平均の側から見直したもの」。この裏返しの一歩を一度自分で踏むと、公式の の中身を忘れなくなる。

ポイント

  • 信頼区間 ()。
  • 標準誤差 を先に出す。

よくある間違い

  • でなく をそのまま使い とする
  • を掛ける前の ( だけ)で区間を作る
  • 「母平均が区間に入る確率 」と断定的に書く(確率的なのは区間の側、という意味の注意)

問10母比率の信頼区間

★★ 標準推定母比率

問題

ある製品 個を無作為に調べたところ、 個が規格に合っていた。規格に合う母比率 に対する信頼度 の信頼区間を求めよ。ただし 、信頼度 では を用いる。

ヒントを見る

母比率でも考え方は同じで、標本比率 ± (標本比率のばらつき)とする。ばらつきの式に入れる値は、問題文にすべて書かれている。

解答・解説

方針

標本比率 。母比率の信頼区間は 。 を使う。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 今度は平均でなく割合(母比率 )の推定。標本比率は だ。

型は母平均のときと同じ「」。比率のばらつきの単位は

よって 。「推定値 標準誤差」という形は、平均でも比率でも変わらない。

定理母比率の信頼度 の信頼区間:( は標本比率)

① 標本比率を出す。 。

② 標準誤差を出す。 。

③ 信頼区間を計算する。 。

xyO−1.961.9695%
母比率の信頼区間: 標本比率 ±1.96×標準誤差(標準正規の中央95%)

まとめ:母比率の推定は「標本比率 標準誤差」。標準誤差は 。母平均のときの に対応する量が、比率では になる。

発展。 母比率の区間が母平均と同じ型になる理由: 規格に合えば 、合わなければ の変数の平均が比率 そのもの。– 変数の分散が だから、標本平均の公式 に を入れただけだ。比率の推定は平均の推定の特別な場合である。

なお本当は が未知なので、分散に を代用している(大きい では差が無視できる)。この代用や、別解の最悪評価 による標本数設計(「誤差 以内に必要な は?」)は、応用問題でよく出るテーマだ。

答

約

別解

という積には便利な上限があり、どんな でも 以下( のとき最大。和が一定の 数の積は等しいとき最大、の相加相乗と同じ理屈)。これを使うと、 の値を知らなくても誤差の上限が言える。 なら

つまり「 人調べれば、比率の誤差はどんな場合でも (約 ポイント)以内」。今回の が、この上限すれすれなのは が に近いからだ。

この最悪評価は実務の常識値になっている。世論調査で「、誤差 ポイント」と言われるのは の計算そのもの。 倍の精度には 倍の標本が要る。ここでも の壁がある。

ポイント

  • 信頼区間 。
  • は標本比率(調べた割合)。

よくある間違い

  • を とする( で割る)
  • を や 単独と取り違える
  • 区間の端の丸め()を雑にして不等号の向きと矛盾させる

問11独立な確率変数の和の分散

★★ 標準分散独立

問題

独立な確率変数 、 について 、 のとき、 と標準偏差 を求めよ。

ヒントを見る

独立なら分散は足せる。ただし標準偏差は足せない。分散を足してから最後にルートをとる、という順番を守ろう。

解答・解説

方針

、 が独立なら、分散は足せる()。標準偏差は分散の平方根。標準偏差そのものは足せない点に注意。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 使う道具は つで、独立なら分散は足せることだ。

標準偏差はその平方根で 。注意すべきは順序だ。足せるのは分散であって、標準偏差ではない。 と は別物だ。「分散で足してから、最後に平方根」の一方通行を守る。

公式、 が独立ならば (独立でないと成り立たない)

① 分散を足す。 独立なので

② 標準偏差を求める。

まとめ:分散の加法性 は独立のときだけ(期待値の加法性はいつでも、と対照的)。そして標準偏差は足せない:。分散で足してから最後にルートをとる。

発展。 差にしても分散は足し算になる: 。 の分散は のままだからだ。引き算しても、ばらつきは打ち消し合わない。測定値の差をとると誤差はむしろ増える、という実験の常識がここにある。

独立でない場合は と共分散の補正が付く(大学レベル)。三平方の絵で言えば、直角でない三角形の余弦定理にあたる。独立(直交)はその特別にきれいな場合である。

答

、

別解

「分散は足せて標準偏差は足せない」を、三平方の定理の絵で覚える方法がある。

のばらつき と のばらつき を、直交する 辺のベクトルだと思う。独立な つのゆらぎは互いに無関係な方向を向いているから、合成したゆらぎは斜辺になり、長さは

直角三角形の斜辺の公式()そのものだ。斜辺は 辺の和より必ず短い()。標準偏差を単純に足すと過大評価になる理由が、三角形の絵から一目で分かる。独立なゆらぎは同時に最悪方向へ揃わないので、合成は「和」より穏やかになるのだ。

「独立 直交、合成 斜辺」。このイメージは統計だけでなく測定誤差の合成(物理・工学)でもそのまま使われている。

ポイント

  • 独立なら 。
  • 標準偏差は足せない。分散で足してからルート。

よくある間違い

  • 標準偏差を直接足して とする(足せるのは分散)
  • 独立の条件を確認せず分散の加法を使う(独立でなければ共分散の項が要る)
  • を など積で合成する

問12期待値・分散の線形性

★★ 標準期待値分散

問題

独立な確率変数 、 について 、、、 のとき、 と を求めよ。

ヒントを見る

期待値は係数がそのまま、分散は係数が 乗になって入る。この違いを意識して、それぞれの性質に当てはめる。

解答・解説

方針

期待値は線形なので 。分散は独立のもとで (係数は 乗になる)。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) の平均と分散は、 つの規則を組み合わせるだけで求まる。

期待値は線形。係数も足し算もそのまま通る。

分散は独立のもとで足せるが、係数は 乗になる。

「 は素直、 は 乗と独立性」という非対称をしっかり身につけるのが、この問題の目的である。

公式。独立なら

① 期待値。 線形にそのまま通す。

② 分散。 独立なので分散を足せる。係数は 乗。

まとめ:期待値は係数そのまま()、分散は係数の 乗()で足す(独立が前提)。 と で係数の扱いがちがう( と )ことを、いつも意識する。

発展。 期待値の線形性 は、実は独立でなくても常に成り立つ。独立性が要るのは分散の加法だけだ。この非対称は使い分けの要点で、複雑な確率の問題(絡み合った変数の期待値)ほど「期待値なら独立性不要」が役に立つ。

のような重み付き和は、ポートフォリオ(資産配分)の収益とリスクの計算そのもの。期待収益には係数がそのままかかり、リスク(分散)には 乗でかかる。金融工学の第一歩がこの公式のペアである。

答

、

別解

「どっちが 乗だったか」を試験場で思い出す道具として、単位(次元)で確かめる方法を知っておくと強い。 の単位を cm だとしよう。期待値 も cm で、値と同じ単位だ。だから の平均は素直に 倍。

一方、分散は「ずれの 乗の平均」だから単位は cm で、面積の単位を持つ。長さを 倍にすれば面積は 倍。 の「 乗」は、単位が 乗の量であることの当然の帰結だ。

標準偏差 で cm の単位に戻る。「 と は cm、 は cm」という次元感覚があれば、 のような式は単位が合わない時点ですぐに誤りと分かる。公式の暗記に加えて、物理のような検算の手段がひとつ増える。

ポイント

  • 。
  • 独立なら 。

よくある間違い

  • 分散の係数を 乗せず とする
  • 期待値まで 乗して とする(素直なのは の方)
  • 独立の断りなく分散の加法を使う(答案に「独立だから」の一言を書く)