数学A / 図形の性質
方べきの定理
問題
円の2つの弦 、 が円の内部の点 で交わっている。、、 とする。
の長さを求めよ。
ヒントを見る
交点 から左右に伸びる長さのかけ算が、弦 側と弦 側で等しくなる。 と を等号でつないでみよう。
解答・解説
方針
円の中で2本の弦が交わるとき、交点から測った長さの「かけ算」が、2本で等しくなる(方べきの定理)。式を1つ立てれば が出る。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 本の弦が円の中で交わっている — 方べきの定理の出番だ。
「同じ弦の 本を掛ける。それが、もう 本の弦でも同じ値になる」。
掛ける相手を間違えないこと。 と は同じ弦 の上にある 本。 と は弦 の上の 本。 のように、違う弦どうしを掛けてはいけない。
つの点 から見て、どの弦を通っても「積」が同じ — この不変性が、方べきの定理の心臓部である。
交点 から両側に測った長さのかけ算が、2本の弦で等しくなる。式にすると
数を入れる。
左は なので
発展 — 一歩先へ。 方べきの定理も、逆が成り立つ。
長さの積を計算するだけで、 点が共円だと証明できる。 角度を測る必要すらない — これは強力だ。
さらに、方べきは数IIの「円の方程式」と直結する。 円 と点 について
符号にも意味がある。
- 正()→ は円の外
- → は円周上
- 負 → は円の内
つの式の符号が、点と円の位置関係を完全に語る。
そして、 つの円について「方べきが等しい点の集まり」を考えると、直線になる。これを根軸という( 円が交わるなら、その共通弦を延長した直線だ)。数IIの「 円の方程式を引き算する」という計算は、まさにこの根軸を求めている。
幾何(長さの積)と代数(円の方程式)が、方べきという つの量で結ばれている。 別々に見えた つの単元が、実は同じものを違う言葉で語っていた — 数学を学び進めると、こういう再会が何度も訪れる。
別解
方べきの定理の正体は、相似である。 証明を追えば、なぜ「積」という形になるのかが分かる。
と を見比べる。(対応する頂点の順番に注意 — と 、 と が対応する。)
組の角が等しいことを示す。
組目: 対頂角。
( 本の直線が交わってできる対頂角だから、当然等しい。)
組目: 円周角。
この つは、どちらも弧 に対する円周角である。だから等しい。
角が等しいので、相似。
相似なら、対応する辺の比が等しい。
たすきに掛ける(内項の積 外項の積)。
方べきの定理が証明された。 「積」の形が出てくるのは、比例式をたすきに掛けたからだったのだ。
円周角の定理が、離れた つの三角形を相似で結んでいる — 円の力である。
方べきの定理には つの型がある。 どれも同じ「積が一定」だが、点 の位置が違う。
型1(この問題): が円の内部。 本の弦が交わる。
型2: が円の外部。 本の割線を引く(円を 回ずつ横切る)。式の形はまったく同じ。
型3: が円の外部で、片方が接線。 接線の長さを とすると
接線のときだけ 乗になる — なぜか。接線は「 つの交点が重なった割線」だから、 になるのだ。極限で 点が 点に融合する — 接弦定理と同じ発想である。
つの型を、別々の公式として覚えてはいけない。 すべて「点 から円へ引いた直線の、 つの交点までの距離の積は一定」という つの事実の顔違いだ。
この一定値を"方べき"という。 中心からの距離を 、半径を とすると、方べきの値は に等しい — 点と円の位置関係を測る量なのである。
ポイント
- 方べきの定理:交点から測った長さのかけ算が、2本の弦で等しい。
- 接線が絡むときは (接線は2乗)になる。
よくある間違い
- のように、違う弦どうしを掛けてしまう
- 接線の場合()と混同して、2乗をつけたり外したりする
- が円の外にあるときは別の公式が要ると思い込む(内部でも外部でも式の形は同じ)