数学A / 図形の性質
チェバの定理
問題
の内部の点で3本の線 、、 が1点で交わっている。ここで は辺 上、 は辺 上、 は辺 上の点である。
、 のとき、 を求めよ。
ヒントを見る
頂点から辺へ引いた3本の線が1点で集まっている。このとき、辺を分ける3つの比を三角形に沿ってぐるっとかけ合わせると、ある決まった値になる。分かっている2つの比を先に代入してみよう。
解答・解説
方針
3本の線が1点で交わるときに使える、比のかけ算の公式がある。3つの辺の比をぐるっとかけると になる、というものだ。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 三角形の内部の 点から、 頂点を通る線が 辺を切っている — この形はチェバの定理の出番だ。
急所は、比の"向き"をそろえること。 分子・分母の文字を見てほしい。
と、三角形を一周している。 前の分母の文字が、次の分子の文字になる — しりとりのように連なるのだ。
この向きさえ守れば、あとは代入して解くだけである。
三角形の頂点 辺 次の頂点…とぐるっと一周する順に、辺を分ける比をかけると になる、という式だ。
分かっている値を入れる。
左の2つをかけると なので
発展 — 一歩先へ。 チェバの定理は、逆も成り立つ。
この逆こそが本当に強力だ。「 本の線が 点で交わることを証明せよ」という難問が、比の積を計算するだけの作業に変わる。
たとえば「 本の中線は 点で交わる(重心の存在)」の証明。中線なら 、、 だから
チェバの逆より、 点で交わる。証明終わり。
同じ手で「 本の角の二等分線は 点で交わる(内心の存在)」も証明できる。角の二等分線の定理から などとなり、 つ掛けると分子分母がきれいに約分されて になるのだ。
「 本が 点で交わる」という奇跡のような主張が、掛け算 回で片づく。 チェバの定理の逆は、五心の存在証明を統一的に与える — 定理の逆に、本当の力が宿っている好例である。
別解
公式を使わず、「重り」で解く方法がある。質量法(てこの原理)と呼ばれ、慣れると暗算で答えが出る。
発想: 頂点に重りを置いて、シーソーでつり合わせる。
点 は 上のシーソーの支点だと思う。 ということは、 側の腕が長く、 側の腕が短い。
てこの原理: 重い側が支点に近い。 腕の長さと重さは反比例するから
に 、 に を置く。
次に、点 で同じことをする。 だから
の重りはもう と決まっている。 比 を保つには、 の重りは の 倍で 。
これで 頂点の重りが決まった。
あとは を読むだけ。 は 上の支点だから、てこの原理で
チェバの定理と同じ答え ✓。公式を 度も使っていない。
なぜこれでうまくいくのか。 頂点に重りを置くと、その全体の重心がちょうど 本の線の交点になる。「 と の重りをまとめると に の重りを置いたのと同じ」「 の と の がつり合う点が交点」— 本の線が 点で交わることまで、この見方は説明してくれるのだ。
質量法の強み。
- 比の向きを間違えない(重りの比は、腕の長さと逆 — これだけ)
- 暗算しやすい(整数の重りを次々に決めるだけ)
- 公式を忘れても解ける
弱点は、外分がからむとき(メネラウスの定理の状況)。そこでは「負の重り」を使う必要が出てきて、少し扱いにくい。内部で交わるチェバ型なら質量法、外に飛び出すメネラウス型なら公式 — 使い分けるとよい。
物理の直感が、幾何の定理を解く。 数学の道具は、 つの分野に閉じていない。
ポイント
- チェバは「3本が1点で交わる」ときの比の関係。3つの比のかけ算 = 1。
- 比を書く順番は、三角形を一周する向き(頂点→辺の点→頂点)にそろえる。
よくある間違い
- 比の向き( か か)がばらばらだと合わない。一周する向きに統一する
- 積を でなく他の値に等しいとしてしまう(チェバの定理の右辺は必ず )
- 質量法で重りの比を腕の長さと同じ向きにしてしまう(重りは腕の長さと逆比)