数学A / 図形の性質

内接円と接線の長さ

★ 基礎内接円接線の長さ

問題

の内接円が、辺 とそれぞれ点 で接している。 とする。

IABCPQR756
内接円と接点 P・Q・R。同じ頂点からの接線は等しい

の長さを求めよ。

ヒントを見る

同じ頂点から出る2本の接線は長さが同じだ。だから 。この3つの長さを とおいて、3辺の式を作ってみよう。

解答・解説

方針

1つの頂点から円に引いた2本の接線は、長さが等しい。この「等しい接線」を文字でおいて、3辺の長さで連立すると解ける。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 内接円の問題では、円外の 点から引いた 本の接線の長さは等しい — これが唯一にして最強の武器だ。

同じ頂点から出る 本の接線は、同じ長さ。 だから、求める長さを

文字で置く。すると 辺の長さが、この 文字で表せる。

文字・ 式の連立方程式になった。図形の問題が、代数の問題に化けたのだ。

定理円外の1点から引いた2本の接線の長さは等しい

この定理から、同じ頂点から出る接線は等しい。そこで

とおく。各辺は2つの接線に分かれるので

3つを全部たすと、左辺は が2回ずつ出るので

あとは引き算だ。 から を引くと

同じように

まとめ:よって

発展 — 一歩先へ。 「円外の点から引いた 本の接線は等しい」— この事実は、対称性から一瞬で分かる。

と円の中心 を結ぶ直線を軸として、図全体を折り返す。円は自分自身に重なり、 本の接線は入れかわる。折り返して重なるのだから、長さは等しい。

もちろん、直角三角形と三平方の定理でも証明できる()。しかし対称性による説明のほうが、計算なしで本質を突いている

「図形に対称軸があるか?」と問う癖をつけたい。対称性が見つかれば、多くの等式が計算せずに得られる。

  • 二等辺三角形 → 底角が等しい(折り返せば重なる)
  • 円 → 中心を通る直線で折り返せば重なる
  • 正多角形 → 何本もの対称軸を持つ

「同じものは同じ」と言い切れる根拠が対称性だ。難しい計算を始める前に、まず図を眺めて、折り返せる軸がないかを探す — 幾何を得意にする、いちばんの近道である。

別解

この連立方程式には、 行で解ける鮮やかな手がある。そして、その過程で覚えておくと一生使える公式が手に入る。

式を、すべて足す。

左辺は 、右辺は

つの和が、いきなり出た。

ここで という数の正体を見ておこう。 辺の和(周の長さ)は 。その半分が だ。周の長さの半分 と書く。

あとは引き算だけ。

から、 を引くと

同様に

連立を解く手間がまったくない ✓。

そして、これが公式になる。

( で、 は周の半分。)

「頂点 からの接線の長さ ( の向かいの辺)」。 — 検算も一瞬だ。

なぜ (周の半分)が出てくるのか。 辺は つの接線に分けられ、それぞれが同じ長さのペアになっている。だから は「周の半分」にちょうど等しい — 本の接線を、ペアごとに 本ずつ拾ったものなのだ。

この は、内接円まわりの公式で必ず主役になる。

  • 面積: ( は内接円の半径)
  • ヘロンの公式:
  • 接線の長さ:

ヘロンの公式に が出てくるのは偶然ではない。 それは接線の長さだったのだ。 年前から知られる公式の中に、内接円の影が潜んでいる — 知ると、公式の顔つきが変わって見える。

ポイント

  • 同じ点から引いた接線は等しい → 接線の長さを文字でおくのが定石。
  • 3辺を全部たすと になる。半分にして、各辺を引けば1つずつ求まる。

よくある間違い

  • 同じ頂点から引いた2本の接線が等しいことに気づかず、文字を6個も置いてしまう
  • を別の文字で置いて連立が解けなくなる
  • 公式 を「 を含む辺」と取り違える( の向かいの辺 )