数学A / 図形の性質
三角形の重心
問題
の3本の中線の交点を とする。辺 の中点を とする。
(1) 中線 のとき、 と の長さを求めよ。
(2) のとき、中線 の長さを求めよ。
ヒントを見る
重心 は中線 を2つに分けている。頂点 に近いほうと、辺 に近いほうでは、長さの比が決まっている。図の と を見くらべてみよう。
解答・解説
方針
は3本の中線が集まる点(重心)だ。重心は中線を、いつも決まった比で分ける。頂点側と辺側、どちらが長いかに注目。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 重心について覚えることは、たった つでよい。
重心は、中線を頂点側から に分ける。 頂点に近いほうが 、辺に近いほうが — 頂点側が長い、と覚える。
(1) 中線 は、 つぶんにあたる。 つぶんは だから
(2) は つぶん。 つぶんは で、 は つぶんだから 。
比を「何個ぶん」で考えると、行き来が楽になる。 は全体の 、 は である。
つまり 。頂点 に近いほうが長く、辺の中点 に近いほうが短い。
(1) を に分ける。合計は 個分。
(2) は全体の にあたる。 なので、全体 は
発展 — 一歩先へ。 三角形には、重心のほかにも「 本の線が 点で交わる」点がいくつもある。五心と呼ばれる。
- 重心(): 本の中線の交点。三角形の面積の中心
- 外心(): 辺の垂直二等分線の交点。 頂点から等距離 → 外接円の中心
- 内心(): 角の二等分線の交点。 辺から等距離 → 内接円の中心
- 垂心(): 本の垂線の交点
- 傍心: 外側にできる円の中心( つある)
どれも「 本が 点で交わる」という、当たり前ではない事実を含んでいる( 本の直線は普通、三角形を作ってしまう)。
そして、驚くべき定理がある。
重心 、外心 、垂心 は、必ず同じ直線上に並ぶ。 しかも という決まった比で。
この直線をオイラー線という。 世紀の数学者オイラーが発見した、幾何学で最も美しい定理のひとつだ。
どんな三角形を描いても — 細長くても、ひしゃげていても — つの中心が、必ず一直線に並ぶ。実際に定規で描いて確かめてみてほしい。幾何には、まだ人を驚かせる力がある。
(1) (2)
別解
なぜ なのか。 その理由を つの角度から見よう。 つは物理の目、もう つは座標の目である。
見方1: 重心は「つり合いの点」。
三角形の つの頂点に、同じ重さのおもりを 個ずつ置く。この 点の重さがつり合う点 — それが重心だ( という文字も、重心を表す言葉の頭文字である)。
なぜ になるのか。 シーソーで考えよう。
と のおもり( ずつ)は、その中点 にまとめて の重さを置いたのと同じ働きをする(中点なら左右がつり合うから)。
すると三角形の重心は、「 に重さ 、 に重さ 」のつり合う点になる。
シーソーのつり合いは「重さ 距離」が等しいとき。
重い側(、重さ )が支点に近い。 てこの原理そのままだ。だから頂点側が つぶん、辺側が つぶんになる。
三角形の板を、鉛筆の先で支えるとしたら、重心の 点で支えられる — 物理的な意味がちゃんとある定理なのである。
見方2: 座標で確かめる。
頂点の座標を 、、 とすると、重心の座標は 点の平均になる。
一方、( の中点)は
この つから を書き直す。
これは「 と を に内分する点」の公式そのものだ( 側の重みが 、 側の重みが のとき、点は から見て の位置にくる)。
が中線 上にあり、 である — 座標だけで証明できた。しかも の式は 、、 について対称だから、他の 本の中線についても同じことが言える — つまり 本の中線が 点で交わることまで、同時に証明されている。
「 本が 点で交わる」という奇跡のような事実が、 という対称な式の中に、あっさり収まっている。対称性が、交点の存在を保証する — 数学の鮮やかさが見える瞬間だ。
ポイント
- 重心は中線を 2:1(頂点側 2、辺側 1)に分ける。
- 「頂点側が 2」を取りちがえないこと。長いほうが頂点側。
よくある間違い
- の向きを逆にする(頂点側が 、辺の中点側が )
- を中線の半分()としてしまう(正しくは 倍)
- (2)で から 、 の順に出すべきところ、いきなり としてしまう