数学A / 確率

記録が更新される回数の期待値

最難関編期待値対称性

問題

1から までの番号が1つずつ書かれた 枚のカードをよく混ぜて一列に並べる。左から順に見ていき、それまでに見たどのカードの番号よりも大きい番号のカードが現れたとき、そのカードを「記録」と呼ぶ(先頭のカードは必ず記録である)。

(1) のとき、記録の枚数の期待値を求めよ。

(2) 一般の について、記録の枚数の期待値を求めよ。

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枚数の分布(ちょうど何枚になる確率)を求めにいくと沼にはまる。「 枚目が記録である確率」だけなら — 先頭 枚のうち最大がどこにあるかだけの話にならないか。期待値は場所ごとに足せる。

解答・解説

方針

記録の枚数の分布を求めにいかず、「 枚目が記録かどうか」に分解して期待値を足す。 枚目が記録になるのは、先頭 枚の中で最大の番号がちょうど 枚目にあるときで、対称性からその確率は

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 記録の枚数 の分布(ちょうど何枚になる確率)を求めるのは難しい。だが期待値だけなら、道がある。

を「 枚目が記録なら1、そうでなければ0」という 個の量 の和に分解する。期待値は、各場所の確率の和になる。この分解が強力なのは、互いに独立でなくても「和の期待値=期待値の和」が成り立つからだ。

あとは「 枚目が記録」を、「先頭 枚の中の最大が 枚目にある」と読み替えれば、対称性で確率が出る。

重要期待値の線形性: (独立でなくても成り立つ)

枚目が記録になる確率。 枚目が記録 ⟺ 先頭 枚のうち最大の番号が、ちょうど 枚目にある。よく混ぜてあるから、先頭 枚の中で最大がどの位置にあるかは、 か所とも同様に確からしい。よって

枚目より後のカードは判定に関係しない。この読み替えのきれいなところだ。

② 期待値を足し上げる((2)の答え)。

の値((1)の答え)。

まとめ: 「個数の期待値」は、場所ごとの0か1の量に分解して確率を足すのが定石だ。 枚目の判定が先頭 枚の内部だけで決まり、最大の位置の対称性から になる。分布を求めずに、期待値だけ先に取れる。

発展 — 一歩先へ。 答えの (調和数)は、 を増やしてもゆっくりしか育たない。カード100枚でも期待値は約 枚。記録は対数の速さでしか増えない。ちなみにこの調和数、 では決して整数にならない(本サイトの集合と命題の最難関に、その証明がある)。

(1) (2)

別解

を数えて信じる(具体で確かめるルート)。 という確率が腑に落ちないときは、 通りを位置ごとに数えてみるとよい。

枚目が記録になる並びは何通りか。「先頭 枚の最大が 枚目にある」並びを数えると

  • 1枚目: どの並びでも記録。 通り()
  • 2枚目: 先頭2枚の大きい方が2枚目に来る並び。 通り()
  • 3枚目: 先頭3枚の最大が3枚目。 通り()
  • 4枚目: 全体の最大(4)が末尾。 通り()

どの位置でも、ちょうど 通り。確率にすれば だ。

記録の総数は 。期待値は で、(1)の答えと一致する。

一般論(対称性)と、小さな全数調査。両方から同じ数が出たとき、理解は確信に変わる。

ポイント

  • 枚数を「各位置が記録か(0か1)」の和に分解する。
  • 枚目が記録の確率は (先頭 枚での最大の位置の対称性)。
  • 、一般には

よくある間違い

  • 分布(ちょうど 枚になる確率)を求めようとして沼にはまる。期待値だけなら線形性で分解するのが近道。
  • どうしが独立でないから線形性が使えない、と思い込む。和の期待値は独立性なしで常に和。
  • 枚目が記録」の確率を と誤る。判定に関わるのは先頭 枚だけで、その中の最大の位置が一様に か所。