数学A / 確率
くじ引きと乗法定理(非復元)
問題
当たりくじ3本、はずれくじ7本の合計10本のくじがある。A, B の2人がこの順に1本ずつ引く。引いたくじはもとに戻さない。
(1) A が当たる確率を求めよ。
(2) A も B も当たる確率を求めよ。
(3) B が当たる確率を求めよ。
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引いたら戻さないので、2人目の確率は1人目の結果で変わる。(2)は『 当たり』のあと『残りの中で 当たり』をかける。(3)は が当たる道すじ( 当たり/ はずれ)をすべて足す。
解答・解説
方針
引いたくじを戻さない(非復元)ので、Bの確率はAの結果で変わる。
こういうときは、乗法定理『』を使って、順に確率をかけていく。
(3)の『Bが当たる』は、Aが当たった場合とはずれた場合に分けて足す。結果は(1)と同じになる — くじは引く順番によらず公平、という有名な話だ。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 「引いたくじはもとに戻さない」— だから が引いた後、くじは 本に減る。 の確率は、 の結果に左右される。
(2)「 も も当たる」は、 段階で考える。
- が当たる:
- その後、 が当たる: 残り 本のうち当たりは 本 →
の分母を のままにしないこと。 これが乗法定理()だ。
(3)「 が当たる」は、 が当たった場合とはずれた場合の つの道がある。両方を足さないといけない。
さて、答えは(1)と同じ になる。 偶然だろうか — それとも?
(1) 10本中当たりは3本だから、Aが当たる確率は
(2) Aが当たった後、くじは残り9本、当たりは2本。Aが当たり、続けてBも当たる確率は、順にかけて
(3) Bが当たるのは、次の2つの場合に分かれる(同時には起きない)。
- Aが当たり、Bも当たる:
- Aがはずれ、Bが当たる:
(Aがはずれた後は、残り9本中当たり3本のまま。)これらを足して
(3)の答えが(1)と同じ になったのは、偶然ではない。くじを引く順番は当たりやすさに関係しない — 先に引いても後で引いても、当たる確率は同じだ。これは「くじ引きの公平さ」として知られる大事な性質だ。
発展 — 一歩先へ。 (3)で使った「 つの道を足す」計算は、全確率の定理と呼ばれる。
「 が当たる」という出来事を、 の結果で場合分けして分解し、それぞれの重み(確率)を掛けて足す。知らない事実(A の結果)を、すべての可能性にわたって"ならす" — 確率の平均化操作である。
この定理は、次に学ぶベイズの定理の分母として必ず登場する。「陽性である確率」を求めるとき、「病気で陽性」と「健康で誤って陽性」の つの道を足す — まったく同じ構造だ。
そして、くじの公平性はもっと強い形で成り立つ。 本のくじ(当たり 本)を 人が順に引くとき、何番目の人も当たる確率は 。証明は「全員の当たる確率の合計 当たりの本数 」と「全員が対等」という対称性から一瞬で出る。
「対称性から結論する」 — 計算に埋もれる前に、構造を見る。この目が、遠回りを何度も救ってくれる。
(1) (2) (3)
別解
(3)の答えが(1)と同じ になったのは、偶然ではない。この事実を、計算せずに見抜く方法がある。くじ引きの公平性の話だ。
発想の転換: くじを「引く」のではなく、「あらかじめ一列に並べる」と考える。
本のくじを、引く順番どおりに横一列に並べたと思ってほしい。
本の当たりは、この 個の場所のどこかに、まったくランダムに散らばっている。
は 番目の場所を、 は 番目の場所を受け取るだけ。では問おう — 番目の場所が当たりである確率と、 番目の場所が当たりである確率に、差はあるだろうか?
あるはずがない。 どの場所も対等で、 個の場所のうち 個が当たりなのだから、どの場所も当たりである確率は 。
くじ引きは、引く順番によらず公平なのである。 番目に引こうが最後に引こうが、当たる確率は変わらない。
もちろん、計算でも確かめられる。 が当たるには つの道がある。
- が当たり → も当たり:
- ははずれ → が当たり:
この つは排反なので足して
きれいに ✓。
なぜ直感は「先に引くほうが有利」と思うのか。 が当たりを引いてしまえば、 の当たる確率は に下がる — これは事実だ。しかし がはずれれば、 の確率は に上がる。
この つが、ちょうど打ち消し合う。 「 が当たって不利になる場合」より「 がはずれて有利になる場合」のほうが起こりやすい( 対 )ので、ならしてみれば元どおり — これが の内訳だ。
の結果を「知らない」限り、 は 番目と同じ立場にいる。 情報がなければ、順番は意味を持たない。「知る」ことが確率を変える — 条件付き確率の核心が、ここにも顔を出している。
ポイント
- 戻さない(非復元)ときは、順にかける
- 後の人の確率は、前の人の当たり・はずれで場合分けして足す
- くじの当たる確率は、引く順番によらない(公平)
よくある間違い
- (2)でBの分母を10のままにする(Aが引いた後は9本)
- (3)でAがはずれた場合を忘れ、 だけで答えてしまう
- (3)で「先に引くほうが有利」と思い込む(順番によらず確率は等しい)