数学A / 確率
条件付き確率(基本)
問題
あるクラス40人のうち、男子は24人で、そのうち自転車通学は18人である。女子16人のうち自転車通学は10人である。このクラスから1人を選んだところ、自転車通学の生徒だった。この生徒が男子である確率を求めよ。
ヒントを見る
『自転車通学だった』とわかっている前提での確率。だから母数は全員ではなく『自転車通学の人』。その中で男子が占める割合を出す。
解答・解説
方針
「〜だったとき、…である確率」は条件付き確率だ。
ポイントは、条件『自転車通学だった』がつくと、考える範囲(分母)が、クラス全体40人から自転車通学者だけにせまくなること。
このせまくなった中で、男子の割合を求める。まず自転車通学者が全部で何人かを、先に押さえよう。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 「自転車通学の生徒だった」と分かってしまった後の確率を聞かれている。
ここが急所だ。情報が入った瞬間、世界が狭くなる。
もう 人のクラス全体は関係ない。自転車通学の生徒だけの世界に入り込んで、その中で男子の割合を見ればよい。
- 自転車通学の生徒: 男子 人 女子 人 人
- そのうち男子: 人
分母は ではなく 。 「条件がついた」とは「分母が入れかわった」ということ — 世界が縮むのが条件付き確率の正体である。
条件付き確率では、条件がつくと『考える全体』がせまくなる。ここでは『自転車通学だった』という条件がついたので、分母はクラス全体ではなく自転車通学者だけになる。
自転車通学の生徒は、男子18人 + 女子10人 = 28人。この28人が新しい『全体』だ。そのうち男子は18人なので、選んだ生徒が男子である確率は
記号で書くと、 を『男子』、 を『自転車通学』として
条件付き確率のコツは「条件がついたら、分母をその条件の中に取りかえる」こと。全体40人で割って とすると、条件『自転車通学』を使えていない。
発展 — 一歩先へ。 つの条件付き確率をつなぐ橋が、ベイズの定理である。
「 のもとでの 」から「 のもとでの 」へ向きを反転させる公式だ。人数の表で言えば、行を見る確率と列を見る確率を行き来する道具になる。
この定理が強力なのは、原因と結果をさかのぼれるからだ。
- 「病気なら陽性が出やすい」(原因 → 結果)は、医学が教えてくれる
- 知りたいのは「陽性が出た。では病気か?」(結果 → 原因)
観測から原因を推定する — これがベイズの定理の役割である。迷惑メールの判定(「この単語が出た。ではスパムか?」)、医療診断、機械学習の分類器 — 現代の情報技術は、この定理の上に立っている。
そして忘れてはならないのが、式の中の — もともとの割合(事前確率)だ。病気の人が 人に 人しかいないという事実が、 として効いてくる。「めったにないことは、証拠が出てもやはりめったにない」 — この当たり前を、数式が忘れずに教えてくれる。
という小さな分数から、ここまで来た。条件付き確率は、確率論のいちばん深い場所への入口である。
別解
定義の式から出すルートを見ておこう。そして、取り違えると人生を左右しかねない罠を紹介する。
定義式で解く。
それぞれ 人を分母にして計算する。
割り算すると
が約分で消えた。 人数のまま とやったのと、結局は同じ計算である。「分母を付け替える」という直感が、定義式そのものだったわけだ。
まず、 の表で全体を把握しておく。
| 自転車 | 自転車でない | 合計 | |
|---|---|---|---|
| 男子 | |||
| 女子 | |||
| 合計 |
求めたのは「自転車の列( 人)の中で、男子( 人)の割合」。列を つ選んで、その中を見る — 表があれば一目瞭然だ。
さて、ここからが本題。逆向きの確率と混同してはいけない。
こちらは「男子の行( 人)の中で、自転車( 人)の割合」。 であって、 とはまったく違う数である。
同じ を、違う分母で割っている。 どちらの世界に入り込むかで、答えが変わるのだ。
この取り違えは、現実に深刻な誤りを生む。 有名な例を挙げよう。
- ある病気の検査で、病気の人が陽性になる確率は
- では、陽性だった人が病気である確率も か?
答えは「否」。病気の人がもともと 人に 人しかいないなら、陽性者の大半は「健康なのに誤って陽性になった人」で埋め尽くされる。陽性者が本当に病気である確率は 程度にしかならない、ということが起こる。
条件と結果を入れかえると、確率はまるで変わる。 裁判で「犯人ならこの証拠が残る確率は高い」を「この証拠があるなら犯人である確率は高い」とすり替える誤り(検察官の誤謬と呼ばれる)も、まったく同じ構造だ。
「どちらの世界の中で数えているのか」を、いつも意識する。 条件付き確率は、その一点に尽きる。
ポイント
- 条件付き確率
- 条件がついたら、分母をその条件の範囲に取りかえる
- まず条件を満たす全体()の人数を、先に求める
よくある間違い
- 分母をクラス全体40にして としてしまう
- 『男子かつ自転車』と『自転車のうち男子』で、分母を取り違える
- 条件を逆にした確率(男子のうち自転車 )と混同する(条件と結果を入れかえると値が変わる)