数学II / 軌跡と領域

軌跡と領域 ★ 基礎の問題 全12問

教科書レベル。定義・公式の確認と基本操作

難易度: ★ 基礎·★★ 標準·★★★ 応用·★★★★ 難関·実戦編·最難関編

  1. 2点から等距離の点の軌跡
  2. 定点から一定距離の軌跡
  3. アポロニウスの円
  4. 直線の表す領域
  5. 円の内部・外部
  6. 連立不等式の領域
  7. 円ではさまれた領域
  8. 帯状の領域
  9. 連動する点の軌跡
  10. 絶対値を含む領域
  11. 3つの不等式の領域
  12. 領域と最大・最小

問12点から等距離の点の軌跡

★ 基礎軌跡垂直二等分線

問題

2点 、 から等距離にある点 の軌跡を求めよ。

ヒントを見る

軌跡はまず『求める点を とおいて条件を式にする』。距離のままだと根号が邪魔になる。 乗どうしで等しいとおくと、ずっと簡単な式になる。

解答・解説

方針

とおき、 を式にする。距離のままだとルートが出るので、両辺を2乗して整理する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 軌跡の問題は、手順が決まっている。

手順1: 求める点を とおく。 手順2: 条件を と の式で書く。 手順3: 整理する。それが軌跡の方程式。

条件は「 からの距離 からの距離」。

根号を避けるため、 乗して考える。

と が両辺で打ち消し合う。だから展開すると 次式が残り、直線になる。

距離の条件が 乗したことで直線の式になった。

重要2定点から等距離の点の軌跡はその線分の垂直二等分線

とおく。、2乗して

展開すると 、 が両辺で消える。

整理して

これは線分 の垂直二等分線。

xyOAB
AB の垂直二等分線が軌跡

発展。 「 点から等距離」を「 点から等距離」に変えると、どうなるか。

点 、、 から等距離の点を考えると、それは外心であり、 点を通る円の中心だ。求め方は垂直二等分線を 本引いて、その交点をとる。

  • の垂直二等分線
  • の垂直二等分線

この 本の交点が 点から等距離の点。( の垂直二等分線も、自動的にそこを通る。これが「 本の垂直二等分線が 点で交わる」ことの証明になっている。)

つの軌跡を交わらせると、 点が決まる。 この発想がGPS の原理そのものだ。

GPS はこう動く。

  • 衛星 からの距離が分かる → 球面上のどこか(軌跡は球)
  • 衛星 からの距離も分かる → つの球の交わり = 円
  • 衛星 からの距離も分かる → 点まで絞れる(片方は地球外なので除外)

「距離の条件」を重ねるほど、位置が絞り込まれる。

軌跡の問題は「条件から図形を求める」 が、GPS は「図形の交わりから点を求める」。同じ数学を逆向きに使っている。

スマホが現在地を求める計算も、距離の条件から点を決めるという点で同じ考え方である。 数学はいつのまにか生活の中で動いている。

答

直線 (線分 の垂直二等分線)

別解

この軌跡は「垂直二等分線」だ。 それを知っていれば、計算せずに答えが書ける。 つのルートを比べてみよう。

幾何ルート: 垂直二等分線を直接作る。

「 点から等距離の点の集まり その 点を結ぶ線分の垂直二等分線」。これは中学で習った事実だ。だから、線分 の垂直二等分線を求めればよい。

必要なのは つ。「通る点」と「傾き」。

通る点 中点。

傾き の傾きに垂直。

点 を通り、傾き の直線。

代数ルートと同じ答え。 しかも展開の計算が 度もない。

どちらを使うべきか。

  • 「 点から等距離」と分かっている → 幾何ルート(垂直二等分線)が速い
  • 条件が複雑(距離の比が など)→ 代数ルート( とおいて計算)

幾何ルートは速いが、使える場面が限られる。代数ルートは遅いが、どんな条件にも通用する。 両方持っておくのが強い。

答えの検算。 求めた直線上の点を つ選び、本当に 、 から等距離か確かめる。

点 (中点)で:

点 (。直線上)で:

両方とも等距離。 軌跡の問題では、求めた図形の上の点が本当に条件を満たすか(これを「逆の確認」という)を確かめる習慣をつけたい。

なぜ「逆の確認」が要るのか。 軌跡を求める計算は「条件 方程式」の向きに進む。しかし答えとして書くべきは「方程式を満たす点は、すべて条件を満たす」という逆向きの主張だ。

多くの場合、式変形が同値なので自動的に成り立つが、 乗したり、割り算したりすると、余計な点が紛れ込むことがある。

この 乗は同値だ(距離は 以上なので、 乗しても情報が失われない)。だから今回は安心してよい。しかし、常にそうとは限らない。次の問題(アポロニウスの円)で、その注意点が必要になる。

ポイント

  • 軌跡は とおいて条件を式にするのが基本。
  • 距離の条件は2乗して 、 を消す。

よくある間違い

  • 距離の式を2乗せずに、根号のまま計算しようとして行き詰まる
  • 展開したあと 、 が消えることに気づかず、2次式のまま答えてしまう
  • 求めた直線が本当に条件を満たすか(逆の確認)を書かない

問2定点から一定距離の軌跡

★ 基礎軌跡円

問題

定点 からの距離が である点 の軌跡を求めよ。

ヒントを見る

求める点を とおき、『 からの距離が 』をそのまま式にする。根号を避けるには 乗で書けばよい。式の形を見れば、どんな図形かはすぐ分かる。

解答・解説

方針

1つの定点からの距離が一定なら、軌跡は円になる。 を2乗して式にすればそのまま円の方程式。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 「定点からの距離が一定」という条件は、円の定義そのものである。

答えを先に言えば、中心 、半径 の円だ。しかし、軌跡の手順に沿って式で書く練習をしておこう。この手順が複雑な問題で役に立つ。

手順1: とおく。

手順2: 条件を式にする。

手順3: 整理する。 両辺を 乗して根号を外す。

これが答え。 中心 、半径 の円である。

乗しても情報は失われない(両辺とも 以上だから)。安心して 乗してよい。

重要定点から一定の距離にある点の軌跡は、その定点を中心とする円

とおく。、2乗して

これは中心 、半径 の円そのもの。

xyOA
中心 A(2,0)・半径3の円が軌跡

発展。 「定点からの距離が一定」という条件を、少し変えてみよう。いろいろな曲線が得られる。

条件 生まれる曲線
定点からの距離が一定 円
定点からの距離の和が一定 楕円
定点からの距離の差が一定 双曲線
定点と 定直線からの距離が等しい 放物線
定点からの距離の比が一定() アポロニウスの円

すべて「距離の条件」から生まれている。 次曲線(楕円・双曲線・放物線)は、円錐を平面で切った断面としても現れる(だから「円錐曲線」と呼ばれる)。距離の条件と円錐の切断という、まったく違う つの定義から、同じ曲線が得られる。

これらの曲線は天体の軌道にも現れる。ケプラーが発見した通り、惑星の軌道は楕円である(太陽が焦点の つ)。彗星の中には放物線や双曲線の軌道を描き、 度と戻ってこないものもある。

天体の軌道が 次曲線になる理由は、ニュートンの万有引力の法則( に比例)から数学的に導かれる。「距離の 乗に反比例する力」から、「 次曲線の軌道」が導かれる。力の法則と軌道の形が、数学で結びついている。

円の方程式を書くという作業は、天体力学の基礎になる。 数Cの「平面上の曲線」で、この続きを学ぶ。

答

円

別解

同じ円を、「媒介変数(パラメータ)」で表す方法を見ておこう。軌跡の問題で、 つ目の方法として役に立つ。

媒介変数表示。

中心 、半径 の円上の点は、角度 を使って

と書ける。 を から まで動かすと、点 が円を 周する。

確かめよう。 を使うと

媒介変数を消去すると、元の方程式に戻る。この つの表し方には、それぞれの役割がある。

表し方 形 得意なこと
方程式 「この点は円上か?」の判定
媒介変数 、 点を動かす、次々に生成する

「判定」と「生成」では、目的が違う。媒介変数が特に役に立つのは、「連動する点」の軌跡だ。たとえば「 がこの円上を動くとき、 と定点 の中点 の軌跡は?」という問題。

媒介変数なら、素直に計算できる。

これは、中心 、半径 の円の媒介変数表示だ。答えがそのまま読める。

「 を消去する」という作業が、軌跡を求めることになる。媒介変数の考え方はこの先ずっと使う。

  • 数C(平面上の曲線): サイクロイド、楕円、リサージュ曲線
  • 数III(微分・積分): 媒介変数表示された曲線の接線・長さ・面積
  • 物理: 時刻 を媒介変数として、物体の位置 を表す

「動くもの」を扱うには、媒介変数が要る。 円の方程式 は「そこにある」ことしか表さないが、、 は「どう動くか」まで表す。

静的な記述と、動的な記述。 つを行き来できるようになると、軌跡の問題の見晴らしがよくなる。

ポイント

  • 定点から一定距離 → 円。中心=定点、半径=その距離。

よくある間違い

  • 右辺を のままにする(2乗して にする)
  • 中心の符号を間違える(中心 なら )
  • の項を と書かずに省略して、式を見失う

問3アポロニウスの円

★ 基礎軌跡アポロニウスの円

問題

2点 、 について、 を満たす点 の軌跡を求めよ。

ヒントを見る

比の条件はまず根号の出ない形(両辺を整数倍してから 乗)に直してから座標を入れる。ていねいに整理し切ると、見覚えのある図形の式になる。

解答・解説

方針

は 。2乗して とし、、 で整理する。円になる(アポロニウスの円)。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 今度は「距離の比が一定」で、前問までと違って比が ではない。結果は直線ではなく、円になる(アポロニウスの円)。

手順は同じ。 とおいて、条件を式にする。

比の式を、掛け算の式に直すのが第一歩(内項の積 外項の積)。

乗して根号を外す。

展開して整理する。 、 の項が消えずに残る(係数が と で違うから)。

平方完成して

円である。 乗の項が消えるかどうかが、直線と円の分かれ目だった。

定理アポロニウスの円:2定点からの距離の比が一定( 以外)の点は、円をえがく

とおく。 より 。2乗して

展開して整理する。

両辺 で割り、平方完成する。

中心 、半径 の円。

xyOA
PO:PA=1:2 の軌跡は円(アポロニウスの円)

発展。 アポロニウスの円は 年前のギリシャの数学者アポロニウスにちなむ。彼は円錐曲線の研究者としても知られる。

この円は今も意外な場所で使われている。

つ目: 電波・音の強度。 つの発信源からの信号強度の比が一定になる場所は、アポロニウスの円を描く。信号の届く範囲の設計に使われる。

つ目: 双曲線航法。 距離の差が一定なら双曲線になる。電波の到達時間差から船や飛行機の位置を割り出す航法(ロランなど)は、この原理を使っていた。GPS 以前は、これが主な航法だった。

つ目: 複素数平面での表現。 数Cで複素数平面を学ぶと、アポロニウスの円は 行で書ける。

「 点からの距離の比が 」が、そのまま複素数の絶対値の比になる。 のときだけ直線(垂直二等分線)で、それ以外は円になる。 つの式が つの図形をまとめて表している。

もう一歩進んだ見方もある。 複素数平面で という変換( 次分数変換)を考えると、この変換は「円と直線」を「円と直線」に移すという性質を持つ(メビウス変換という)。

円と直線は、実は同じ仲間だった。 直線は「半径が無限大の円」とみなせる。アポロニウスの円で「比が なら直線」となったのは、このためだ。

点からの距離の比という条件は、複素関数論で学ぶ内容の基礎にもなる。

答

円

別解

計算せずに、アポロニウスの円を作図で求める方法がある。 「内分点と外分点が、直径の両端になる」という事実を使う。発想: 直線 上には、条件を満たす点が つある。

つ目: 線分 を に内分する点。

確かめる: 、。比は 。条件を満たす。

つ目: 線分 を に外分する点。

確かめる: 、。比は 。これも条件を満たす。

ここからが本題。この 点 、 は、求める円の「直径の両端」である。

中心は の中点。

半径は の半分。

計算ルートと同じ答えが、内分点・外分点だけで出た。なぜ、内分点と外分点が直径の両端になるのか。 を満たす点 から見ると、 は の二等分線、 は外角の二等分線になる(数Aで学んだ「角の二等分線と辺の比」の定理の逆)。

内角の二等分線と外角の二等分線は、必ず垂直( の半分 外角の半分 )。

から線分 を見込む角が、いつも直角。 ということは、タレスの定理より は を直径とする円の上にいる。これがアポロニウスの円である。

幾何の定理( 本の二等分線が垂直)が、代数の計算()と同じ答えを出す。大事な注意: 比が のときは、円にならない。

なら、 乗の項が打ち消し合って直線、つまり垂直二等分線になる。作図で言えば「外分点が無限遠に飛んでしまう」ので、円が無限に大きくなって直線になる。

つの数が違うだけで、図形の種類が変わる。 軌跡の問題では、「 乗の項が消えるかどうか」を、計算の途中で必ず意識したい。

ポイント

  • 距離の比が一定( 以外)→ 円(アポロニウスの円)。
  • 比は『たすきに2乗』 にして整理。

よくある間違い

  • 比 を と逆に立式する(正しくは )
  • 2乗するときに の を2乗し忘れる( になる)
  • 、 の係数 で全体を割るのを忘れ、平方完成でつまずく

問4直線の表す領域

★ 基礎領域

問題

不等式 の表す領域を図示せよ。

ヒントを見る

境界の直線をまず引く。不等号がどちら側を指すかは、試しに 点(原点など)を入れて確かめるのが確実。境界を含むかどうかも答えの一部。

解答・解説

方針

まず境界の直線 をかく。 なら直線より上側、 なら下側。等号がないので境界は含まず、破線でかく。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 不等式の領域は、まず境界線を引くところから始まる。

境界は不等号を等号に変えた式。

この直線が平面を上下 つに分ける。 あとは「どちら側か」を決めるだけだ。

は「 が、直線の高さより大きい」。つまり直線より上側である。 について解けている不等式は、そのまま読める。

  • → 上側
  • → 下側

境界を含むかどうかは不等号で決まる。

  • 、(等号なし)→ 境界は含まない(破線で描く)
  • 、(等号あり)→ 境界を含む(実線で描く)

答案では破線か実線かを必ず描き分ける。

公式 は直線の上側、 は下側の領域

境界は直線 。不等号が なので、直線より上側が領域。等号がついていない()ので、境界の直線は領域に含まない(図では破線)。

xyO
直線の上側(境界は含まない=破線)

発展。 「不等式が領域を表す」という考え方は、最適化という大きな応用分野の基礎になる。

現実の問題はたいてい「制約」と「目的」でできている。

  • 制約(不等式): 予算は 万円以内、労働時間は 時間以内、材料は kg まで
  • 目的(最大化・最小化): 利益を最大にしたい、コストを最小にしたい

制約を満たす点の集まりが「領域」(実行可能領域)、目的を表す式が「目的関数」。

この形の問題を「線形計画問題」といい、第二次世界大戦中に軍需物資の輸送計画を立てるために本格的に研究された。 現在では

  • 工場の生産計画(どの製品を何個作るか)
  • 航空会社の乗務員スケジュール
  • 物流の配送ルート
  • 食事の栄養バランス(最小コストで必要な栄養を満たす献立)

あらゆる場面で、毎日、コンピュータが解いている。

変数が 個なら、平面に領域を描いて目で見られる(この単元でやっていること)。しかし現実の問題では変数が数千・数万個あり、領域は超高次元の多面体になる。もう図は描けない。

それでも解ける。 「最適解は必ず頂点にある」という原理(問題12で学ぶ)を使い、頂点を効率よく渡り歩くアルゴリズム(単体法)が開発されたからだ。

という単純な不等式に色を塗る作業。 物流やスケジュールを最適化する技術も、この考え方を発展させたものだ。

答

直線 の上側(境界を含まない)

別解

「上か下か」を、 すぐに確実に判定する方法がある。 テスト点を つ代入するだけだ。この技は について解けない複雑な不等式でも通用する。

代入判定法。

手順1: 境界線 上にない点を、 つ選ぶ。

いちばん楽なのは原点 。(境界が原点を通らないなら、これが最速。)

手順2: 不等式に代入して、成り立つか調べる。

正しい。

手順3: 結論。

「原点を含む側」が求める領域である。 原点は直線 ( 切片 )の上側にあるので、答えは直線の上側。

なぜこれでよいのか。 境界線は平面を つの領域に分ける。同じ領域内の点はすべて同じ判定結果になる(不等式の符号が変わるには、必ず境界を横切らねばならない)。だから代表 点で全体が決まる。

この方法の強みは について解けなくても使えることだ。

例: の表す領域は?

について解くのは面倒(平方完成が要る)。しかし原点を代入すればすぐに分かる。

原点は領域に含まれない。 この式は円 を表すので(中心 、半径 )、原点は円の内部にある。原点が含まれない → 領域は円の外部である。

行で決着した。

注意点が つ。

つ目: 境界線上の点をテスト点にしてはいけない。 等号が成り立ってしまい、どちらの側か判定できない。

つ目: 境界が原点を通るときは、別の点を選ぶ。 なら、原点は境界上なので使えない。代わりに を使えばよい( → その側)。

「代入 回で領域が決まる」。この手軽さは連立不等式(次の問題)で特に役に立つ。 本、 本の不等式があっても、テスト点を つ決めて全部に代入すれば、その点を含む領域かどうかがすぐに分かる。

ポイント

  • は上側、 は下側。
  • / は境界を含まない(破線)、/ は含む(実線)。

よくある間違い

  • 上側と下側を取り違える( なら上側)
  • 境界を含むかどうか(実線か破線か)を描き分けない
  • の係数が負の不等式(例: )で、 について解くとき不等号の向きを変え忘れる

問5円の内部・外部

★ 基礎領域

問題

不等式 の表す領域を図示せよ。

ヒントを見る

境界の円をかく。不等号が『』であることが、内側か外側か・境界を含むか、をすべて表している。『中心からの距離』の言葉で読み直してみよう。

解答・解説

方針

の内側か外側かを見る。 は内部、 は外部。等号つきなので境界の円も含む。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) の境界は円 (中心 、半径 )である。

この不等式を日本語で言い換える。

「原点からの距離が 以下の点の集まり」。つまり円の内部および周である。不等号の向きと、内外の対応。

  • → 内部(距離が半径より小さい)
  • → 外部(距離が半径より大きい)

「 だから内側」と丸暗記せず、「距離が短い 中心に近い 内側」と読む。 そうすれば間違えにくい。等号を含むので、境界(円周)も領域に入る。実線で描く。

公式 は円の内部、 は外部

境界は円 、半径 。 なので内部が領域。等号がついている()ので、境界の円も含む(図では実線)。

xyO
円の内部と周(境界を含む)

発展。 「原点からの距離が 以下」という条件は、次元を上げても同じ形をしている。

  • 次元: → 線分()
  • 次元: → 円板
  • 次元: → 球体
  • 次元: → 次元の球

式の形は変わらず、項が増えるだけ。そして、次のような事実がある。次元を上げると、球の「体積」はどうなるか。半径 の球の体積は

  • 次元(円):
  • 次元(球):
  • 次元:
  • 次元: ()
  • 次元:
  • 次元:
  • 次元:
  • 次元: ほぼ

次元を上げると、球の体積は増え続けるどころか、 次元をピークに減っていき、やがて に近づく。

直感に完全に反する。 高次元では、球はほとんど「体積を持たない」のだ(体積のほとんどが、球の表面近くの薄い殻に集中してしまう)。

この現象を「次元の呪い」といい、機械学習で深刻な問題を引き起こす。 高次元のデータ空間では、点どうしの距離がほとんど同じになってしまい、「近い」「遠い」の区別がつかなくなるのだ。

に色を塗るという素朴な作業。 その式をそのまま高次元へ持っていくと、人間の直感が通用しない結果が出てくる。高次元では、低い次元での直感が当てはまらない。

答

円 の内部および周(境界を含む)

別解

代入判定法で確かめる。 そして、中心がずれた円でも迷わない方法を身につけよう。代入判定。原点 を入れてみる。

原点は領域に含まれる。 原点は円の内部にあるから、領域は内部側。外の点でも確かめる。点 。

含まれない。 円の外にある点は確かに領域外だ。この方法なら、中心がずれていても大丈夫。

例: の領域は?

円の内部か外部かを、すぐに判定する。 中心 を代入してみると

中心が含まれない → 領域は外部。

「中心を代入する」のが円の内外判定の最速手だ。 中心は必ず「内部の代表点」だから、中心が含まれれば内部、含まれなければ外部だ。この判定は確実である。

そして、 つの領域の対応を整理しておく。

不等式 領域 境界
円の内部のみ 含まない(破線)
円の内部 周 含む(実線)
円の外部のみ 含まない(破線)
円の外部 周 含む(実線)

「内部か外部か」は不等号の向き、「境界を含むか」は等号の有無。 つは独立した情報である。

答案での描き方も大事な作法だ。

  • 領域: 斜線 or 薄い塗りつぶし
  • 境界を含む: 実線
  • 境界を含まない: 破線
  • 注記: 「境界を含む」「境界を含まない」と、必ず言葉でも書く

図だけでは、実線と破線の区別が採点者に伝わらないことがある。 言葉を 行添えるだけで、確実に伝わる。数学の答案はコミュニケーションでもある。

ポイント

  • は円の内部、 は外部。
  • / は境界の円を含む。

よくある間違い

  • 内部と外部を取り違える(距離が小さい方が内部)
  • 半径を としてしまう(右辺 は なので半径は )
  • 境界を含むこと( なので実線)を図や注記で示さない

問6連立不等式の領域

★ 基礎領域連立不等式

問題

連立不等式 の表す領域を図示せよ。

ヒントを見る

本ずつ処理する。各不等式の領域を薄く塗り、両方の色が重なった部分だけが答え。境界の扱いも不等号ごとに確認しよう。

解答・解説

方針

それぞれの不等式の領域(直線の上側・下側)を考え、両方を同時に満たす「共通部分(重なり)」が答え。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 連立不等式の領域は、「かつ」の領域、つまり共通部分だ。

本ずつ、別々に領域を描いて、重なった部分を取る。

本目 : 直線 の上側(境界を含む)。

本目 : 直線 の下側(境界を含む)。

この つの共通部分。

直線の交点を求めておくと、図が描きやすい。

交点 を頂点とする、くさび形(V字を横に倒したような形)の領域になる。

「かつ」は共通部分(重なり)、「または」は合併(どちらかに入っていればよい)。この区別をいつも意識する。

重要連立不等式の領域は各不等式の領域の共通部分(重なり)

は直線 の上側(境界含む)。 は直線 の下側(境界含む)。両方を同時に満たすのは、2つの領域が重なる部分。2直線ではさまれた部分になる。

xyO交点
2直線ではさまれた共通部分

発展。 連立不等式が表す領域には、「凸(とつ)」という重要な性質がある。

凸な図形とは: 図形内の任意の 点を結ぶ線分が、すべて図形内に収まるもの。

  • 凸: 円板、三角形、長方形、今回のくさび形
  • 凸でない: 三日月形、星形、ドーナツ(問題 の領域)

そして、次の事実が成り立つ。

なぜか。 次不等式が表す「半平面」はそれ自体が凸で、凸な図形の共通部分は必ず凸になるからだ( 点が両方に入っているなら、それを結ぶ線分も両方に入る)。この「凸性」が最適化を可能にしている。

凸な領域では、こんな都合のいいことが起こる。

  • 局所的な最適解がそのまま全体の最適解になる(「近所で一番よい点」が「全体で一番よい点」)
  • 最大・最小は必ず頂点(端)でとる( 次式の場合)
  • 効率的なアルゴリズムが存在する

凸でない領域だと、話はずっと難しくなる。 「近所で一番高い丘」が、実は全体で見れば低い丘かもしれない(局所最適解の問題)。機械学習の学習がうまくいかない原因の多くが、これだ。

「凸か、凸でないか」が、解ける問題と解けない問題の分かれ目になる。現代の最適化理論はこの境界線をめぐって発展してきた。

連立不等式に色を塗る作業が、なぜこれほど大事に扱われるのか。 それは、凸領域という「扱いやすい領域」を学ぶ基礎になるからである。

答

2直線 、 ではさまれた部分(境界を含む)

別解

代入判定法を連立不等式で使う。 テスト点を つ選んで全部の式に代入するだけで、その点が領域に入るか分かる。図の描き方もこれで確実になる。

テスト点 を選ぶ。( 直線のどちらの上にもない点なら、どこでもよい。)

本目に代入: → 。成り立つ

本目に代入: → 。成り立つ

両方成り立った → 点 は領域内。この 点を含む側が求める領域である。別の点でも試して、境界を確かめよう。

点 : ? → 偽( 本目を満たさない)→ 領域外

点 : 、 → 領域内

点 : 、 ? → 偽 → 領域外

「領域内の点」と「領域外の点」を何個か試すと、図の形が確信を持って描ける。この領域の形をもう少し詳しく見よう。 直線の交点 から、左向きに開いたくさび形である。

  • 上の境界: (右下がり)
  • 下の境界: (右上がり)
  • 直線は交点 で交わり、そこから左へ向かって開いていく

この領域は「無限に広がっている」。左方向へ、いくらでも伸びている(有界ではない)。

もし 本目の不等式( など)を足すと、領域は閉じて三角形になる。 問題11でそれをやる。不等式を 本足すごとに、領域は狭くなる。

共通部分をとるたびに、範囲が絞られていく。制約が増えるほど、選べる余地が減る。当たり前だが、これが最適化問題の基本だ(問題12で使う)。

答案の書き方のコツ。

  • 境界線を 本とも引く(実線・破線を区別する)
  • それぞれの不等式が表す側に、矢印や薄い斜線を入れておく
  • 共通部分を、濃く塗る
  • 「境界を含む」と注記する

段階で塗る(まず薄く つ、次に共通部分を濃く)と、自分でも間違えないし、採点者にも伝わる。

ポイント

  • 連立=すべての不等式を同時に満たす=領域の重なり。
  • 1つずつ領域をかいて、重なりを塗る。

よくある間違い

  • 「かつ」なのに、2つの領域を合わせた部分(合併)を塗ってしまう
  • 2直線の交点を求めず、図が正確に描けない
  • を上側と読み違える( なので下側)

問7円ではさまれた領域

★ 基礎領域

問題

不等式 の表す領域を図示せよ。

ヒントを見る

不等式が つ重なった形。内側の円と外側の円、それぞれの条件を『中心からの距離』の言葉で読むと、どんな形の領域か分かる。

解答・解説

方針

は半径1の円の外部、 は半径2の円の内部。両方を満たすのは、2つの円にはさまれたドーナツ形。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) は、 つの不等式を、まとめて書いたものだ。

本ずつ読む。

  • → 半径 の円の外側
  • → 半径 の円の内側

この つの共通部分。

「原点からの距離が より大きく、 より小さい点の集まり」。つまりドーナツ形(円環)である。

両方とも等号がないので、内側の円周も外側の円周も含まない(どちらも破線)。距離の言葉で言い換えれば、答えは一目で分かる。

公式 は円の外部、 は内部。連立は共通部分

は半径 の円の外部、 は半径 の円の内部。両方を満たすのは、中心からの距離が と の間、つまり2つの円にはさまれたドーナツ形の部分。等号がない()ので、2つの境界の円はどちらも含まない(破線)。

xyO
半径1と2の円にはさまれた領域(境界含まず)

発展。 この円環の面積を求めてみよう。

ここで、大事なことに気づいてほしい。境界を含むかどうかは面積に影響しない。(境界を含まない)でも、(境界を含む)でも、面積はどちらも である。

なぜか。円周は「面積 」だから。

線には幅がない。 どんなに長い線を集めても、面積は のままだ。だから境界を足しても引いても、面積は変わらない。

これは意外に大事な事実である。 「点は大きさ 」「線は面積 」「面は体積 」のように、 つ下の次元のものは、上の次元では「無視できる」。

この考え方が積分の基礎になっている。 定積分 で、区間の端点を含めても含めなくても値は同じだ。端点は「幅 」だからだ。

しかし、油断は禁物。 「面積 の集合をいくら集めても面積 」は、有限個や可算無限個なら正しいが、非可算無限個になると崩れる(実際、円板は「面積 の線」を非可算無限本集めたものだ)。

この微妙さを厳密に扱うために、 世紀に「測度論」という理論が作られた。 「面積とは何か」「長さとは何か」を、根本から定義し直す理論だ。

「境界を含むか含まないか」という、答案の些細な注記。 これは、 年前の数学者たちが取り組んだ問題とつながっている。

答

半径1の円の外側かつ半径2の円の内側(ドーナツ形、境界を含まない)

別解

この領域はこれまでと違う性質を持っている。 そこに気づくと、図形の理解が一段深まる。まず、代入判定で確かめる。

点 : 。。領域内

点 : 。 ? → 偽 → 領域外(内側の円の中)

点 : 。 ? → 偽 → 領域外(外側の円の外)

点 : 。 ? → 偽 → 領域外(境界上なので含まない)

穴あきの輪(ドーナツ) の形が つの点で確認できた。さて、この領域の「新しさ」は何か。

これまでの領域(円板・くさび形・帯)は、すべて「凸」だった。 領域内の 点を結ぶ線分が、必ず領域内に収まっていた。しかし、ドーナツは凸ではない。

点 と点 は、どちらも領域内だ。しかし、この 点を結ぶ線分は、原点を通る。そして原点は穴の中、つまり領域外である。

これが「凸でない」ということ。

穴が開いている図形は、凸になれない。 ドーナツ、三日月、星形は、どれも「へこみ」や「穴」を持つ。なぜこの区別が大事なのか。

凸な領域では、 次式の最大最小が「頂点」で決まる(問題12)。しかし凸でない領域では、この便利な性質が失われる。最大値を探すのに、領域全体をくまなく調べなければならない。

「凸か、凸でないか」は、問題の難しさを大きく左右する。

さらに、この領域には「穴」がある。 数学では図形の穴の個数を位相的な性質として扱う。

  • 円板: 穴 個
  • ドーナツ(円環): 穴 個
  • の字: 穴 個

穴の個数は図形をどんなに変形しても(切ったり貼ったりしなければ)変わらない。この「変形しても変わらない性質」を研究するのがトポロジー(位相幾何学)だ。

有名な言い回し。「トポロジー学者は、コーヒーカップとドーナツを区別できない」。どちらも穴が つで、粘土のように連続的に変形すれば移り合うからだ。

という不等式に色を塗る作業は、 つの概念(凸性と位相)につながっている。 単純な図形ほど、豊かな性質を持っている。

ポイント

  • 2つの円の連立は内側・外側の共通部分(円環)。
  • 境界を含むかは各不等号の等号の有無で判断。

よくある間違い

  • 半径を と としてしまう(右辺は なので半径は と )
  • 内側の円の内部まで塗ってしまう(穴が開いたドーナツ形)
  • 2つの境界のどちらか一方だけを破線にする(どちらも等号なしなので、両方とも破線)

問8帯状の領域

★ 基礎領域絶対値

問題

不等式 の表す領域を図示せよ。

ヒントを見る

絶対値の不等式を、まず絶対値なしの形に直す。 の条件が無いことは何を意味するか。領域が縦にどこまでも伸びる理由を考える。

解答・解説

方針

は と同じ。 には条件がないので、 がこの範囲にある縦の帯全体が領域。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) の絶対値は、 からの距離である。

数直線で考えると、 と のあいだ。

ここで、重要な確認をする。 についての条件は つもない。

ということは、 はどんな値でもよい。 でも でも、 が と のあいだにありさえすれば、条件を満たす。だから領域は縦方向に無限に伸びる「帯」になる。

本の縦線 、 にはさまれた、縦に無限の帯状の部分(境界は含まない、破線)。

「 の条件がない は自由」。これを見落として、線分や長方形を描いてしまうのが典型的なミスだ。

公式 は (帯状の領域)

は と同じ。 には制限がないので、 がこの範囲にありさえすればよい。よって2直線 と ではさまれた、縦の帯が領域。境界は含まない(破線)。

xyO
-2<x<2 の縦の帯(境界含まず)

発展。 絶対値 は「原点からの距離」だった。では は?

点間の距離である。だから

数直線で、 を中心に左右 ずつ。 場合分けをせずに、すぐに答えが出る。この「距離として読む」感覚が極限の定義で大事な役割を果たす。

数IIIで学ぶ極限 の厳密な定義は、こうだ。

絶対値だらけだが、距離として読めば意味が見える。

  • → 「 が に、 より近い」
  • → 「 が に、 より近い」

「 を に十分近づければ、 は にいくらでも近くなる」。これが極限の意味だ。

絶対値は「近さ」を測る道具である。 という不等式に色を塗る作業は、この感覚を養っている。

数学のあらゆる場面で「近い」を扱うとき、絶対値(あるいはその一般化である「ノルム」)が使われる。 誤差、収束、近似は、すべて「距離が小さい」の言い換えだ。

答

の帯状の部分(境界を含まない)

別解

絶対値を場合分けで外してみる。 そして「絶対値記号の扱い方」を、 つの型に整理しておこう。この単元だけでなく、あらゆる場面で使う。

場合分けで外す。

のとき: なので

と合わせて、。

のとき: なので

と合わせて、。

つを合わせる。

「距離で読む」ルートと同じ答え。 ただし場合分けは手間がかかる。絶対値の外し方、 つの型。

型1: 距離として読む(最速)

「 ならはさむ、 なら外側に飛ぶ」。この 行を覚えれば、単純な絶対値はすぐに外せる。

型2: 場合分け(確実)

中身の符号で場合分けする。 どんな複雑な式でも通用するが、時間がかかる。型3: 乗する( 乗が使える形のとき)

両辺とも 以上なので、 乗しても同値。 → →

のような形では、この 乗が特に役に立つ( → )。さて、この領域が「帯」になることを、もう 度確かめよう。

点 : → 領域内( がどんなに大きくても関係ない)

点 : 同じく → 領域内

点 : ? → 偽 → 領域外

座標だけで、すべてが決まっている。

もし条件が だったら? 今度は横方向の帯(、左右に無限)になる。

もし かつ だったら? つの帯の共通部分で、 辺 の正方形(の内部)である。

「条件のない変数は、自由に動く」。領域の問題では、この視点がとても大事だ。式に出てこない文字にこそ、注意を払う。

ポイント

  • → 。 自由なら縦の帯。
  • なら横の帯になる。

よくある間違い

  • の条件がないことを見落とし、線分や長方形を描いてしまう(縦に無限の帯)
  • を だけにする(負の側 も必要)
  • の場合と混同する( ははさむ、 は外側に分かれる)

問9連動する点の軌跡

★ 基礎軌跡連動型

問題

点 が円 上を動く。定点 と を結ぶ線分の中点 の軌跡を求めよ。

ヒントを見る

動く点 と求める点 、 つの点があるので文字を分ける。 の座標から逆に の座標を表し、 が円上にいる条件へ流し込む。これが連動型の軌跡の型だ。

解答・解説

方針

求めたい点を とおいて考える。 の座標を で表し、それを『 が円上にある』条件に代入する。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 「点 が動くと、それにつれて点 も動く」ので、連動する点の軌跡だ。

手順は決まっている。

手順1: 求めたい点を とおく。

手順2: 動く点 の座標を、、 で表す。

は と の中点だから

これを について解く。

手順3: 「 が円上にある」という条件に、代入する。

整理すると

つまずきやすいのは手順2だ。「 を 、 で表す」。逆に解くのがコツだ。 の条件は分かっているのだから、そこへ持ち込む。

重要連動する点の軌跡:求める点 で動点 を表し、 の条件式に代入する

、 とおく。 は と の中点なので

これを 、 について解く。

は円 上にあるので代入する。

両辺を で割って

xyOA
Q の円(大)と、中点 M の軌跡の円(小)

発展。 「連動する点の軌跡」を求める手順は、実は変数変換という一般的な考え方の実例である。

やったことを、整理し直そう。

  • 元の点: が円 上を動く
  • 移す規則: 、
  • 新しい点: はどんな図形を描くか

「規則を逆に解いて、元の条件に代入する」。これが変数変換の型だ。

この手続きは数IIIの「置換積分」とまったく同じ発想である。

「変数を取り替えて、扱いやすい形に移す」。これは数学のいろいろな場面で使われる方法だ。そして、コンピュータグラフィックスでは、これが日常の道具である。

D のコンピュータグラフィックスで、物体を動かす・回転させる・拡大するのは、すべて「座標の変換」だ。行列を使って、 つの式で表す。

回転・拡大・平行移動がこの 本の式に収まる。 画面上のすべての点が毎秒 回、この変換を受けている。

「 が動くと も動く」という素朴な問題。 その構造は D グラフィックスで使う座標変換と同じである。

答

円

別解

この軌跡は計算せずに「見える」。 幾何的な見方を身につけると、答えを予測してから計算に入れる。幾何ルート: 「 を中心に、 倍に縮める」

は線分 の中点である。つまり、 から見て のちょうど半分の位置にある。

これは、 を中心とする比 の相似変換(縮小)である。

が円を描くなら、 も円を描く。 相似変換は円を円に移すからだ。あとは、中心と半径がどう変わるかを見るだけ。

中心: 元の円の中心 が を中心に 倍される。

( と の中点が、新しい円の中心だ。)

半径: 倍される。

答え: 中心 、半径 の円。

計算ルートと同じ答えが、 行で出た。相似変換の視点を持つと、この手の問題の見通しがよくなる。

  • 「 と の中点」 → 中心の 倍縮小
  • 「線分 を に内分する点」 → 中心の 倍縮小
  • 「」 → 中心の 倍拡大

どの場合も、「元の図形と相似な図形」が軌跡になる。 円なら円、直線なら直線、放物線なら放物線になる。形は変わらず、大きさと位置だけが変わる。

答えを予測してから、計算で確かめる。 これが理想的な解き方だ。「答えはたぶん半径 の円だな」と分かっていれば、計算ミスに気づける。

そして「逆の確認」もこの見方で納得できる。求めた円 上の点は、すべて中点として実現するか?

する。 を円上のどこにとっても、 で対応する が定まり、それは必ず元の円 上にある(相似変換は 対 の対応だから)。

「もれなく、ダブりなく」対応している。 だから求めた円全体が軌跡である(一部を除く必要はない)。

軌跡の問題では、「除外点」があることも多い。 たとえば「 が円周上を動く。ただし 」という条件があれば、対応する を軌跡から除く必要がある。問題文の細かい条件を、最後まで追いかける。

ポイント

  • 連動型は『求める点で動点を表す → 動点の条件に代入』。
  • 中点の関係から動点の座標を逆算すれば解ける。

よくある間違い

  • の座標を 、 で表さずに、 の式のまま代入しようとする
  • の 倍を忘れる(中点の逆算なので2倍して引く)
  • の因数分解でつまずき、 で割り忘れる

問10絶対値を含む領域

★ 基礎領域絶対値

問題

不等式 の表す領域を図示せよ。

ヒントを見る

絶対値は場合分けで外す。 が正のときと負のときで境界の直線が変わる。まず境界のV字をかいてから、上下どちら側かを判定しよう。

解答・解説

方針

は の符号で場合分けする。 では 、 では 。2本の直線でできるV字の上側が領域。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) には絶対値があるので、まず外す。

中身 の符号で場合分けする。

のとき: なので

のとき: なので

つまり、右半分では直線 の上側、左半分では直線 の上側。

つを合わせると、原点から左右に開いた 字( のグラフ)の内側、つまり上側の領域になる。

のグラフは 字( で 、 で )。その上側だ。

境界を含む( なので実線)。

絶対値のグラフを描いてから、上下を判定する。この順序が確実である。

公式。場合分けで境界を作る

のときは 、 のときは 。境界は2本の直線 と でできるV字。その上側(内側)が領域。等号つきなので境界も含む。

xyO
y=|x| でできるV字の上側

発展。 という関数には、 つ有名な特徴がある。原点で尖っていることだ。

この尖りは微分で問題を起こす。 の傾きは

  • では
  • では
  • では?

左から近づくと 、右から近づくと で、 つの値が食い違う。

したがって では微分できない(微分不可能という)。関数はつながっている(連続である)のに、傾きが定まらない。

「連続だが微分できない点」。その代表例がこの 字の頂点である。

この事実は機械学習で実際に問題になる。 誤差を測る関数として (絶対誤差)を使うと、誤差が の点で微分できない。学習アルゴリズムは微分を頼りに進むので、そこで動けなくなってしまう。

だから多くの場合、( 乗誤差)が使われる。 乗ならどこでも滑らかで、微分できるからだ(統計の分散が 乗を使う理由の つでもある)。

「尖っている」か「滑らか」か。 この違いが、道具の使い勝手を決める。

さらに、次の事実もある。 世紀に、「どこでも連続なのに、どこでも微分できない関数」(ワイエルシュトラス関数)が発見された。 字の尖りが 点どころかすべての点にあるような関数だ。

当時の数学者たちは「病的な関数だ」と嫌悪した。 しかし現代では、そうした関数こそがフラクタルとして、株価の変動や海岸線の形を記述している。

の つの尖り。 そこから、滑らかさとは何か、という問いが始まる。

答

2直線 ()と ()の上側(V字の内側、境界を含む)

別解

この領域を、「角度」で読む見方がある。 図形的な直感が働くようになり、応用にもつながる。まず、代入判定で形を確かめよう。

点 か 判定
領域内
領域内
領域内
領域外
領域外
境界上(含む)

「真上」は領域内、「真横」や「真下」は領域外。

角度で読む。

原点から見て、点の方向を角度 ( 軸の正の向きから測る)で表すと、この領域は

「真上を中心に、左右 ずつ開いた扇形(無限に広がる)」 である。

なぜ か。 境界の直線 の傾きが 、つまり の直線だからだ。 は 。

この見方の便利さ。

「 の領域内の点は、 座標が 座標の絶対値以上」。つまり横に進んだ距離より、上に進んだ距離のほうが大きいということだ。傾きが より急な方向にある点、と読める。

別の見方: は、 つの不等式の「かつ」に書き直せる。

なぜ「かつ」なのか。 は と の大きいほうだから、 が 以上ということは、 が 以上でもあり、 以上でもあるということ。

以上 両方以上。

この書きかえは役に立つ。 絶対値を外す場合分けが不要になり、連立不等式(問題6でやったこと)に帰着する。 直線 、 の上側の共通部分、と読めばよい。

逆に、 なら?

今度は「または」になる。 は と の大きいほうだから、 がそれ以下ということは、大きいほうより下にいればよい。片方だけ満たせば十分だ。

なら「かつ」、 なら「または」。 混同しやすいが、 の意味に戻れば必ず判断できる。

絶対値は「 の言いかえ」だと見ておくと、場合分けの迷いが減る。

ポイント

  • 絶対値は符号で場合分けして境界を2本つくる。
  • はV字の内側(上側)。

よくある間違い

  • のグラフをV字でなく直線1本だと思ってしまう
  • の側で とすべきところを のままにする
  • を「または」でつないでしまう( のときは「かつ」。 は と の大きいほう)

問113つの不等式の領域

★ 基礎領域連立不等式

問題

連立不等式 、、 の表す領域を図示せよ。また、この領域は何という図形か答えよ。

ヒントを見る

つの不等式を つずつ境界線にして、順に領域を狭めていく。最後に残った形の頂点を全部求めれば、何という図形かも答えられる。

解答・解説

方針

は 軸の右、 は 軸の上、 は直線 の下側。3つの共通部分は三角形になる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 本の不等式を、 本ずつ読んで、共通部分を取る。

  • : 軸の右側(境界を含む)
  • : 軸の上側(境界を含む)

この つで、すでに「第 象限(の周を含む部分)」に絞られた。

  • : 直線 の下側(原点側)

この直線は 点 と を通る( 切片と 切片を打てば、すぐ引ける)。

つの共通部分は 点 、、 を頂点とする三角形(周を含む)になる。

本の直線が領域を三方から囲い込んだ。 制約が増えるほど、領域は狭く、そして閉じていく。

重要連立不等式の領域は共通部分。境界の直線で囲まれた図形になる
  • : 軸より右(軸を含む)
  • : 軸より上(軸を含む)
  • :直線 の下側(直線を含む)

3つを同時に満たすのは、頂点が 、、 の三角形の周および内部。

xyO(3,0)(0,3)
3つの境界で囲まれた三角形

発展。 この三角形は現実の問題では「実行可能領域」と呼ばれる。

具体例で見てみよう。

「 個 時間かかる製品 A と、 個 時間かかる製品 B を作る。作業時間は 時間まで。製品の個数は 個以上。」

  • : 製品 A の個数 →
  • : 製品 B の個数 →
  • 時間の制約 →

この三角形が「作れる組み合わせ」の全体である。現実の問題では、制約はもっと多い。

  • 材料の制約:
  • 予算の制約:
  • 需要の上限:

制約が 本あれば、 角形(あるいはもっと複雑な多面体)になる。

変数も 個とは限らない。 製品が 種類あれば、 次元空間の多面体になる。もう図には描けない。

それでも「最適解は頂点にある」という原理は生きている。

問題は頂点の個数だ。 高次元の多面体は、頂点が天文学的な数になりうる( 変数・ 制約なら、理論上は 個以上)。全部調べるのは不可能。

そこで開発されたのが「単体法(シンプレックス法)」( 年、ダンツィーグ)。すべての頂点を調べるのではなく、「隣の頂点で、値がよくなるほうへ」と渡り歩くアルゴリズムだ。

しかも、この方法は実用上きわめて速い。 個の頂点があっても、たいてい数十回の移動で最適解に着く。

現代の物流・生産計画・金融でも、この方法が使われている。 「 世紀で最も重要なアルゴリズムの つ」と呼ばれるゆえんだ。

本の不等式で三角形を描く作業。 実際の最適化の技術もこの作業を発展させたものだ。

答

3点 、、 を頂点とする三角形の周および内部

別解

この先(最大最小)では、「頂点」を正しく求めることが必要になる。 頂点の出し方を確実にし、領域の性質も確かめておこう。頂点の求め方: 境界線を 本ずつ連立する。

本の境界線は

本ずつ組み合わせて、交点を求める。

  • : 、 →
  • : 、 →
  • : 、 →

つの頂点が出た。

注意: 交点が必ず頂点になるとは限らない。 求めた交点が他のすべての不等式を満たすかを確認する必要がある。

たとえば、もし ではなく のような条件が混じっていたら、 は を満たさないので頂点にならない(領域外)。今回は 点とも、すべての不等式を満たす。

  • : 、、
  • : 、、
  • :

点とも本物の頂点。 三角形が確定した。この領域の性質を、 つ確認しておこう。

性質1: 有界である。 領域が無限に広がっていない(有限の範囲に収まっている)。 本目の が「ふた」をしたからだ。もしこれがなければ、第 象限全体という無限の領域になっていた。

性質2: 凸である。 次不等式の共通部分なので、必ず凸(問題6の発展で見た通り)。三角形は確かに凸だ。

性質3: 面積が計算できる。

底辺 、高さ の直角三角形。「有界かつ凸」の つが揃うと、最適化がうまくいく。

これが、次の問題(領域と最大最小)の理論的な根拠になる。

なぜ頂点なのか、直感的に説明しよう。 次式 の値は、直線を平行移動させると連続的に変わる。領域内で を大きくしていくと、直線はだんだん領域から出ていく。その最後の瞬間、直線は必ず「角(頂点)」に触れている。

辺に沿って触れる場合もある(そのときは辺全体が最大値をとる)が、そのときも端の頂点は最大値をとっている。だから「頂点だけ調べれば十分」である。

この単純な原理が線形計画法という応用分野の基本になっている。 頂点は有限個しかないから、全部調べれば必ず最適解が見つかる。

ポイント

  • かつ で第1象限に限定。
  • さらに斜めの直線で切ると三角形になる。

よくある間違い

  • 、 を見落として、直線 の下側全体を塗ってしまう
  • の境界線を、 と を通る直線だと気づかず、正確に引けない
  • 求めた交点が他の不等式を満たすか確認せず、領域外の点を頂点にしてしまう

問12領域と最大・最小

★ 基礎領域最大最小

問題

点 が連立不等式 、、 の表す領域を動くとき、 の最大値を求めよ。

ヒントを見る

領域をかいてから、 の値が同じ点の集まり(直線)を平行移動させるイメージを持とう。値が最大になるのは、直線が領域のどこに引っかかる瞬間か。頂点で調べれば確実。

解答・解説

方針

とおくと傾き一定の直線。 を大きくすると直線が動く。領域と直線が接する『頂点』で最大になる。頂点の値を全部調べる。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) 「領域内を動く点で、 の最大値」を求めるので、線形計画法の問題だ。

発想の要点: とおいて、直線と見る。

傾き の直線で、 が変わると「平行移動」する。 が大きいほど、直線は上へ動く( 切片が だから)。求めたいのは、「この直線が領域と共有点を持つ範囲で、 を最大にする」こと。

直線を領域の中で上へ上へと動かしていく。 領域から離れる直前の が最大値だ。そして、離れる瞬間に直線が触れているのは、必ず「頂点」である。

領域の頂点は 、、 の つ。 ここを全部調べればよい。

重要領域での1次式 の最大・最小は、領域の頂点で起こる

は傾き の直線。 を大きくすると直線は上へ動き、領域からはみ出す直前(=領域の頂点)で最大。領域は頂点 、、 の三角形。各頂点で を計算する。

一番大きいのは での 。よって最大値は 。

xyO(0,4)
x+2y=k の直線を動かすと頂点(0,4)で最大

発展。 この解法(直線を平行移動させて、領域との接点を探す)は、目的関数が 次式でなくても使える。

例: 同じ領域で、 の最大値・最小値は?

円を大きくしたり小さくしたりして、領域と接する瞬間を探す。

  • 最小: 円を小さくしていくと、原点 で領域に触れる →
  • 最大: 円を大きくしていくと、いちばん遠い頂点で領域から離れる → か で

「 定数」の図形を描いて、領域と接する瞬間を探す。これが一般的な方法だ。目的関数が変わると、動かす図形も変わる。

目的関数 「」が表す図形 動かし方
直線 平行移動
円 拡大・縮小
原点を通る直線 回転
双曲線 拡大・縮小

「 の最大」なら、原点から領域内の点へ引いた直線の「傾き」の最大を考える。図で考えればすぐに分かる。

この「等高線を動かす」という発想は、大学の最適化理論でも中心的な道具である。目的関数の等高線(値が等しい点の集まり)を描き、制約領域と接する点を探す。その接点で、等高線と制約の境界が接するという条件(ラグランジュの未定乗数法)が、最適性の判定条件になる。

高校でやっている「直線を動かす」作業は、その最も簡単な場合だ。

図形的な直感が最適化の理論に直結する。 数式を見るだけでなく、「この式が のとき、どんな図形か」と問う習慣を持ちたい。

答

最大値 (点 のとき)

別解

「頂点を全部調べる」ルートを実行し、そのうえで「なぜ頂点でよいのか」を、直線を動かす絵で確かめよう。頂点の値をすべて計算する。領域は 点 、、 を頂点とする三角形。 の値は

頂点 の値
← 最大

最大値は 、点 でとる

ついでに最小値も分かる。 で だ。「頂点を全部調べるだけ」でよく、微分も、複雑な計算も要らない。 個の値を比べるだけ。

なぜこれで正しいのか。直線を動かして確かめる。 という直線を、 を変えながら動かしてみよう。

  • : 直線 は原点を通る。領域と接している(原点で)
  • : 直線は少し上へ。頂点 を通り、領域を横切っている
  • : 直線は頂点 を通る。領域とギリギリ接している
  • : 直線はさらに上へ。もう領域と交わらない

が限界。 これ以上大きくすると、直線は領域から離れてしまう。そして、その限界の瞬間、直線は頂点 に触れていた。

これが「最適解は頂点にある」ことの、視覚的な証明である。

なぜ頂点なのか。 直線を平行移動させると、領域との共有部分は「面 → 線分 → 点 → 消滅」と減っていく。最後に残る点が頂点になる(領域が多角形なら、角が最後まで残る)。

特別な場合: 辺全体が最大値をとることもある。もし目的関数が だったら?(傾き )境界の辺 と平行になる。すると、この辺の上のすべての点で となり、最大値をとる点が無数にある。

それでも「頂点を調べれば見つかる」。辺の端の頂点 と も、確かに という最大値をとっている。だから頂点だけ調べれば、最大値そのものは必ず見つかる。

この保証が線形計画法を実用的にしている。 無限個ある領域内の点を、有限個の頂点に絞り込めるからだ。

答案の書き方。

「直線を動かす」という言葉を、必ず書く。 頂点の値を計算しただけでは「なぜ最大と言えるのか」の説明になっていない。論理の筋道を示すのが、答案である。

ポイント

  • 領域での1次式の最大最小は頂点でとる。
  • を動かして、領域に触れる最後の頂点をさがす。

よくある間違い

  • 頂点を全部調べず、目についた1つだけで答えてしまう
  • とおいたとき、 が大きいほど直線が上に動くことを意識せず、逆の頂点を選ぶ
  • 領域の頂点を求め間違える( なので、頂点は と )