エネルギー保存の使い方と運動量保存との使い分け
文: KOSNiZ·最終更新: 2026年9月6日
エネルギー保存は物理基礎から物理まで、力学の多くの場面で使います。運動方程式で解けない曲面上の運動や、ばねと斜面の組合せも、エネルギーの収支を書くだけで解けるのが利点です。ただ、「いつ使えるか」「摩擦があるときどう書くか」「運動量保存とどう使い分けるか」で迷う人も多くいます。
帳簿として書く
エネルギー保存の式は「最初の状態のエネルギーの合計 + 途中でされた仕事 = あとの状態のエネルギーの合計」です。運動エネルギー 、重力の位置エネルギー 、弾性エネルギー の3つを、最初と後の2つの状態で表にします。
摩擦などの非保存力がなければ、合計は変わりません(力学的エネルギー保存)。摩擦があれば、「最初の合計 − 摩擦がした仕事の大きさ = あとの合計」です。摩擦の仕事は で、減った分は熱になります。
このサイトの仕事と力学的エネルギーでは、この帳簿を「エネルギー棒グラフ」として図にしてあります。状態ごとに位置・運動・弾性・熱を積み上げた棒を並べ、保存されていれば棒の高さが等しくなります。式を立てる前に、この棒グラフを頭に描いてください。
いつ使えるか
エネルギー保存が使えるのは、「途中の時間や力の大きさが不要で、高さや速さの変化だけを問われている」ときです。曲面上を滑る物体の速さ、振り子の最下点の速さ、ばねで打ち出された物体の到達高さ、これらは運動方程式では解きにくく(加速度が場所で変わる)、エネルギー保存なら1本の式です。
逆に、時刻や加速度を問われたら運動方程式、衝突や分裂の瞬間の速度を問われたら運動量保存です。「何を問われているか」で道具を選ぶ判断は、物理の勉強法で運動方程式・運動量保存・エネルギー保存の使い分けとしてまとめてあります。
基準と符号
位置エネルギーの基準(高さ0の位置)は、最初に1か所決めて、最後まで動かしません。基準より下は負の位置エネルギーです。基準を途中で変えてしまうのは、よくある失点です。
弾性エネルギーの は自然長からの伸び(縮み)で、ばねの長さではありません。鉛直ばねでは、つり合いの位置と自然長が違うので、「自然長・つり合いの位置・端」の3点を数直線に書いてから式を立ててください。
摩擦の仕事は必ず負(エネルギーを減らす)です。「最初 − 摩擦 = あと」と、引く向きを固定すると符号で迷いません。
運動量保存との使い分け
衝突・分裂の瞬間は、運動量は保存されますが、運動エネルギーは( なら)減ります。逆に、衝突以外の区間(斜面・振り子)では、運動量は変わりますが力学的エネルギーは保存されます。衝突の瞬間は運動量、それ以外の区間はエネルギー、と区間ごとに使う法則を分けてください。
弾道振り子(弾丸が木片に食い込んで振り上がる)は、この分け方の代表例です。衝突は運動量保存、振り上がりはエネルギー保存で、2本の式を順につなぎます。運動量と力積の応用「弾道振り子」と、単振動の応用「弾丸の衝突とばね振動」で、この2段階の解き方を練習できます。
エネルギー保存が広がる場面
円運動では鉛直面内の円運動の速さをエネルギー保存で求め、張力や垂直抗力を運動方程式で求める、という2段構えになります。単振動では、 が一定であることから、途中の速さ が出せます。万有引力の場合は、位置エネルギーを という「井戸」として扱い、脱出速度 を求めるのが典型です。
電磁気でも同じ考え方が使えます。電場中の荷電粒子は を位置エネルギーとして加速され、コンデンサーの極板操作では「電池の仕事 + 外力の仕事 = 静電エネルギーの増加 + 熱」の帳簿を書きます。詳しい説明は電場と電位の記事のコンデンサーの節です。熱力学の第1法則 も、熱と仕事と内部エネルギーの帳簿です。
つまずきやすいところ
よくあるのは、「運動量が保存されるならエネルギーも保存される」という思い込みです。非弾性衝突では運動エネルギーが減ります。摩擦のある往復運動で、上りと下りの摩擦の仕事を1回分しか引かない誤りも目立ちます。往復なら2回分です。垂直抗力が仕事をすると思い込んでいる人もいます。垂直抗力は運動の向きと垂直なので、仕事をしません(だから曲面上の運動でエネルギー保存が使えます)。
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