物理 / 運動量と力積

砂袋は 1 個ずつ投げるほうが速い

最難関編運動量保存相対速度多段階

問題

なめらかな水平の氷の上に、質量 のそりが静止している。そりの上には質量 の砂袋が 2 個のせてあり、全体ははじめ静止している。

そりの上の人が、砂袋をそりから見て後ろ向きに速さ で投げる。人の質量はそりに含めるものとし、氷との摩擦は無視する。

(1) 砂袋を 1 個投げた直後の、そり(残りの砂袋 1 個をのせたまま)の速さを求めよ。

(2) 続けてもう 1 個を、同じくそりから見て後ろ向きに速さ で投げた。この直後のそりの速さを求めよ。

(3) はじめから 2 個をまとめて、そりから見て後ろ向きに速さ で同時に投げた場合、そりの速さはいくらか。

(4) (2)と(3)ではどちらが速いか。その理由を述べよ。

なめらかな氷そり 2mmm投げる向き
質量 2m のそりに、質量 m の砂袋が 2 個。そりから見て後ろ向きに速さ u で投げる。
ヒントを見る

速さ は地面から見た値ではない。ここを取り違えると 2 回目で必ず狂う。2 回目を考えるとき、直前に動いているのはどれで、その速度はいくらか。

解答・解説

方針

投げる速さが「そりから見て」であることに注意する。地面から見た砂袋の速度は、そりの速度から を引いたものになる。1 回ごとに、投げる直前の全体を系として運動量保存を立てる。2 回目は「そりの速度が でない」状態から始まる。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 この問題のしかけは「そりから見て速さ 」という一言にある。地面から見た砂袋の速度は、そのときのそりの速度に を足したものである。

だから 2 回目は、1 回目とは違う状況から始まる。同じ計算を 2 回くり返せばよい、とはならない。

そしてもう 1 つ。2 回目に投げるとき、そりは軽くなっている。同じ相対速度で投げても、軽いほうが大きく加速する。これが (4) の答えの正体である。

① 1 回目。 投げる直前、全体()は静止している。投げた直後、そり側は で速さ 、砂袋は地面から見て である。

② 2 回目。 投げる直前、そり側()は で動いている。投げた直後、そりは で速さ 、砂袋は である。

③ 同時に投げる場合。 直前は全体()が静止、直後はそり()が 、砂袋 2 個()が である。

④ 比べる。 だから、1 個ずつ投げるほうが速い。

1 個ずつ 2 回2 個いっしょに7.0 m/s6.0 m/s
同じ砂、同じ相対速度でも、分けて投げたほうが速くなる。

理由は速度の増分を見ると分かる。1 回に増える速さは、 の形をしている。

  • 1 回目:
  • 2 回目:

2 回目のほうが分母が小さい。すでに 1 個を捨てて軽くなっているから、同じ相対速度でもよく効くのである。同時に投げると、この「軽くなってから投げる」という得ができない。

まとめ 相対速度で投げ出す問題は、1 回ごとに「直前の全質量」で運動量保存を立て直す。分けて投げるほど速くなるという結論は、ロケットが燃料を連続的に噴射する理由そのものである。

発展 — 一歩先へ。 砂の総質量を変えずに 回に分けると、速さは の形で増え、 を大きくするほど速くなる。 の極限が、 というツィオルコフスキーの式である。いまの に対し、極限は で、確かに大きい。

、1 個ずつ投げるほうが速い

別解

「捨てるたびに乗り換える」見方。 各回の投げを、地面ではなくそのときのそりの立場から見ると計算がさらに軽くなる。

そりの立場では、投げる直前の全体は静止している。この立場で投げた直後、質量 の砂袋が で飛び、残り(質量 )が で進むから

は投げる直前の全質量である。つまり、1 回の投げで増える速さは、いつでも「投げる質量 ÷ 直前の全質量 × u」だと分かる。

あとは足すだけである。

速度の増分は立場によらないので、こうして足し合わせてよい。この形にしておくと、(4) の比較も分母を見るだけで終わる。

ポイント

  • 「そりから見て速さ u」は地面から見た速度ではない(そりの速度 −u)
  • 1 回で増える速さ=(投げる質量 ÷ 直前の全質量)× u
  • 軽くなってから投げるほど効くので、分けて投げるほうが速い

よくある間違い

  • 砂袋の地面から見た速度を −u としてしまう(そりが動いている分を忘れる)
  • 2 回目も「静止から投げる」として同じ式を使う
  • 2 回投げれば同時に投げた場合のちょうど 2 倍になると考える