物理 / 運動量と力積

ベルトコンベアに砂を落とす

★★★★ 難関運動量の流れ仕事摩擦熱

問題

水平なベルトコンベアが、一定の速さ で動いている。その上に、真上から砂を静かに(初速 で)一定の割合 で落とし続ける。

落ちた砂はベルトの上をしばらく滑ったのち、ベルトと同じ速さになって一緒に運ばれていく。ベルトの速さは常に に保たれているものとする。

(1) ベルトの速さを保つために、モーターがベルトに加えなければならない力を求めよ。

(2) モーターがしている仕事率を求めよ。

(3) 砂が得ている運動エネルギーは、1秒あたりいくらか。

(4) (2) と (3) の差はどこへ行ったか。理由とともに述べよ。

ベルト 3.0 m/s砂 2.0 kg/sホッパーモーターが回す
一定の速さで動くベルトの上に、初速 0 の砂を一定の割合で落とし続ける
ヒントを見る

1秒間に何 kg の砂が、どれだけ速度を変えるかを数える。力が求まったら、モーターの仕事率と砂の運動エネルギーの増え方を別々に計算して見比べる。

解答・解説

方針

落ちた砂は速さ 0 から v になる。1秒あたりに q だけの質量がその変化をするので、1秒あたりの運動量の変化が qv、これが要る力である。仕事率は力×速さで求まるが、砂が得る運動エネルギーはその半分にしかならない。差は滑りによる熱である。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 落ちた砂は速さ から になる。この変化を起こすには力積が要る。

砂は連続して落ち続けるので、1回ぶんではなく 1秒ぶん を切り出して数える。1秒間に だけの質量が から になるのだから、1秒あたりの運動量の変化は 、これが要る力である。

ここまでは素直だが、この問題の山場は後半にある。力と速さからモーターの仕事率を出し、砂が得る運動エネルギーと比べると ぴったり半分 しか届かない。差がどこへ消えたのかを説明できるかが問われている。

① 必要な力。 1秒間に の砂が、速さ から になる。1秒あたりの運動量の変化は

砂を加速するのは、砂とベルトのあいだの摩擦力である。その反作用がベルトを後ろへ引くので、ベルトの速さを保つにはモーターが

の力で押し続けなければならない。

② モーターの仕事率。 ベルトは速さ で動いているから

③ 砂が得る運動エネルギー。 1秒間に の砂が速さ になるので

④ 差はどこへ行ったか。 モーターは を供給しているのに、砂の運動エネルギーは しか増えていない。

18 Wモーターの供給砂の運動 9 W摩擦熱 9 W行き先砂の運動エネルギーモーターの供給摩擦熱
供給した 18 W のうち、砂の運動エネルギーになるのは半分の 9 W。残りは滑りによる摩擦熱

残りの は、砂とベルトが滑るあいだに生じる摩擦熱 になっている。

なぜちょうど半分になるのかを見ておく。砂が速さ から になるあいだ、ベルトはずっと で動いている。同じ時間に

  • ベルトが動く距離 …
  • 砂が動く距離 … 平均の速さが なので

摩擦力 は同じ大きさで両方に逆向きにはたらくから、ベルトが失う仕事は 、砂が受け取る仕事は 差の が、滑った距離ぶんの摩擦熱 である。ベルトが失うぶんのちょうど半分が砂に渡り、半分が熱になる。

重要静止したものを、一定の速さで動く相手に摩擦で引きずって加速すると、**供給したエネルギーのちょうど半分が必ず熱になる**。摩擦係数の大小によらない

まとめ 力は「1秒あたりの運動量の変化」で出る。ところがエネルギーの帳簿を合わせると半分が足りない。滑っている以上、摩擦熱が出るのは避けられない。運動量の勘定とエネルギーの勘定は別々に立てる のが鉄則である。

発展 — 一歩先へ。 「必ず半分が熱になる」は、電気の世界にも同じ形で現れる。起電力 の電池でコンデンサーを空の状態から充電すると、電池がする仕事 のうちコンデンサーに蓄えられるのは だけで、残りの半分は必ず抵抗で熱になる。抵抗の値によらない点まで同じである。

どちらも「速度(電位)の差があるまま押し込む」ことが原因で、差を小さく刻んで少しずつ運べば損失を減らせる。ベルトの場合なら、砂をあらかじめベルトの速さに近づけてから落とせばよい。

(1) (2) (3) (4) 差の は、砂とベルトが滑ることで生じる摩擦熱になる

別解

砂1粒を追いかけるルート。 全体を1秒でまとめず、砂1粒に注目しても同じ答えが出る。

質量 の砂粒がベルトに落ちる。摩擦力 を受けて加速し、時間 で速さ に達する。

このあいだに砂粒が進む距離は 、ベルトが進む距離は なので、滑った距離は

摩擦熱は「摩擦力×滑った距離」だから

砂粒が得た運動エネルギー と等しい。 が約分で消える ので、床がざらざらでもつるつるでも熱の量は同じである。つるつるなら長く滑り、ざらざらなら短く滑るが、その積は変わらない。

この見方だと「なぜ半分か」が、滑った距離が加速に使った距離の半分であることに帰着する。全体を1秒でまとめるルートが速いのに対し、こちらは によらない理由まで見せてくれる。

ポイント

  • 連続して落ちる砂には「1秒あたりの運動量の変化」で力を出す。
  • モーターの仕事率 に対し、砂が得るのは で半分
  • 差は滑りによる摩擦熱。摩擦係数によらず、必ず半分が熱になる

よくある間違い

  • モーターの仕事率と砂の運動エネルギーが等しいはずだと考えて、計算が合わないと悩む。滑る以上、熱が出る
  • 力を ではなく と書いてしまう。ここでは摩擦係数も砂の総量も分からなくてよい
  • 砂が動く距離をベルトと同じとしてしまう。加速中の砂の平均の速さはベルトの半分である