物理 / 運動量と力積
水の流れが壁を押す力
問題
断面積 のノズルから、速さ で水を水平に噴き出し、正面の広い壁に垂直に当てる。水の密度は とする。
当たった水は跳ね返らず、壁に沿って横へ広がって流れ去るものとする。
(1) 1秒間に壁に当たる水の質量を求めよ。
(2) 水が壁に及ぼす力を求めよ。
(3) もし水が同じ速さでまっすぐ跳ね返るとしたら、力は何倍になるか。
(4) ノズルの先を絞って断面積を半分にした。ポンプが送り出す水の量(1秒あたりの質量)は変えないものとして、壁が受ける力を求めよ。
ヒントを見る
1秒間に壁へ届く水は、断面積 S で長さ v の柱ぶんである。その柱がもっていた運動量が、1秒のあいだにすべて失われる。力積と運動量の関係を「1秒あたり」で書いてみる。
解答・解説
方針
衝突が「1回きり」ではなく連続して起こる場合は、1秒間に運ばれる運動量を数えるとよい。1秒間に当たる水の質量に速度の変化を掛ければ、それが1秒あたりの運動量の変化、つまり力になる。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 これまでの衝突は「1回の出来事」だった。ここでは水が絶え間なく当たり続けるので、同じやり方が使えない。
そこで 1秒間に運ばれる運動量 を数える。1秒間に壁へ届く水は、断面積 で長さ の柱ぶんである。その柱がもっていた運動量が、1秒のあいだにすべて失われる。
力積と運動量の関係を1秒あたりで書けば
となり、力がそのまま「1秒あたりの運動量の変化」として求まる。連続して当たる問題は、1回ぶんではなく1秒ぶんを切り出す のが定石である。
① 1秒間に当たる質量。 1秒間に壁へ届くのは、断面積 、長さ の柱である。
② 壁に及ぼす力。 この の水は、速さ で来て、壁に垂直な向きの速度を失う(横へ流れ去るので、壁に垂直な成分は になる)。1秒あたりの運動量の変化は
壁が水に及ぼす力の大きさがこれに等しく、作用反作用より水が壁に及ぼす力も
③ 跳ね返る場合。 速度が から に変わるので、速度の変化は になる。1秒あたりの運動量の変化も2倍で
2倍 である。1個の球が壁で跳ね返るとき力積が になるのと同じ理屈が、連続の場合にも効いている。
④ ノズルを絞る。 1秒あたりに送り出す質量 が同じで断面積が半分なら、 より速さは2倍の になる。
2倍 になった。力は と の積なので、 を変えずに を上げれば、そのぶんだけ強くなる。
まとめ 連続して当たる流れの力は「1秒あたりの運動量の変化」で読む。跳ね返らせれば速度の変化が2倍、ノズルを絞れば速さが上がって力が上がる。どちらも同じ1本の式から出てくる。
発展 — 一歩先へ。 ②の答えは という形をしている。両辺を で割ると、壁が受ける圧力は
大気圧のおよそ4倍である。消防のホースが手を離すと暴れるのは、この反作用が数百ニュートンにもなるためである。
なお、飛行機の翼や風車が受ける力も、根は同じ「流れの運動量を曲げる」ことにある。空気を下向きに曲げた反作用が揚力になる。
(1) (2) (3) 倍 (4)
別解
短い時間 を切り出して数えるルート。 「1秒あたり」と決め打ちせず、微小な時間で書くと、単位のつじつまがはっきりする。
時間 のあいだに壁へ届く水は、長さ 、断面積 の柱である。その質量は
この水は運動量 をもっていて、壁に当たってそれを失う。力積と運動量の関係より
両辺を で割ると が消えて
時間が消えるので、どれだけの時間で切り出しても同じ力になる。 定常的に流れているかぎり力は一定である、ということがこの計算から分かる。
この形は「落ちてくる砂が受け皿に及ぼす力」や「ロケットの推力」でも同じである。 の部分を「1秒あたりの質量」と読み替えれば、どの場面でも使い回せる。
ポイント
- 連続して当たる流れは「1秒あたりの運動量の変化」で力を読む
- 跳ね返らないなら 、まっすぐ跳ね返るなら2倍
- の形で覚えると、流量 と速さ のどちらを変えたかで判断できる
よくある間違い
- 1個の物体の衝突と同じように、1回ぶんの力積で答えてしまう。連続の場合は時間あたりで数える
- と書いてしまう( が1つ足りない)。質量の流れに速度を掛けるので が2つ要る
- ④で断面積が半分だから力も半分、としてしまう。送る質量が同じなら速さが2倍になる