物理 / 単振動
ばね自身の重さは周期をどう変えるか
問題
ばね定数 、自然長 、質量 の一様なばねの一端を壁に固定し、他端に質量 のおもりをつけて、なめらかな水平面上で振動させる。
ばねは全体が一様に伸び縮みし、固定端から距離 の点の速さは、おもりの速さの 倍であるとしてよい。
(1) おもりの速さが のとき、ばね自身がもつ運動エネルギーを と で表せ。
(2) 系全体の運動エネルギーを の形に書いたときの (有効質量)を求め、この振動の周期を求めよ。
(3) ばねの質量を無視して周期を計算すると、正しい周期より何 小さい値になるか。
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ばねのどの部分も同じ速さで動いているだろうか。全体の運動エネルギーを、おもりの速さだけで表せるかどうかがカギになる。
解答・解説
方針
ばねの各部は同じ速さでは動かない。固定端は止まっていて、おもり側の端はおもりと同じ速さである。微小部分の運動エネルギーを足し上げ、おもりの速さ だけで書き直す。エネルギーの形が になれば、周期は質量を置きかえるだけで出る。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 公式 は、ばねが軽いという前提の話である。ばねにも重さがあれば、ばね自身も動く以上、その運動エネルギーを勘定に入れなければならない。
ここで大事なのは、ばねの各部が同じ速さでは動かないことである。固定端は止まったまま、おもり側の端はおもりと同じ速さで動く。あいだは比例配分になる。
だから「ばね全体の運動エネルギーを、おもりの速さ だけで書き直す」ことができれば、系全体を 1 個の物体とみなせる。その見かけの質量が有効質量である。
① ばねの運動エネルギー。 固定端から距離 のところの、長さ の微小部分を考える。
質量は 、速さは である。運動エネルギーを足し上げる。
ばね全体は、「 の質量がおもりと同じ速さで動いている」のと同じだけのエネルギーをもつ。
② 有効質量と周期。 系全体の運動エネルギーは
位置エネルギーのほうは のままである。エネルギーの形が「」になっているので、この系は質量 の単振動とまったく同じように振る舞う。
③ 無視するとどれだけずれるか。 ばねの質量を無視した場合の周期は
正しい周期との比は
約 小さく見積もることになる。ばねがおもりの 3 分の 1 もの重さをもつと、この差は実験で十分に見える大きさになる。
まとめ ばねの質量は、そのままの値ではなく 3 分の 1 だけが効く。原因は、ばねの各部が固定端からの距離に比例した速さでしか動かないことである。
発展 — 一歩先へ。 係数 は、速さが場所について 1 次式で分布することの帰結である。 を から まで平均すると になる、というだけの話である。
ばねがさらに重くなると、「全体が一様に伸び縮みする」という前提そのものが成り立たなくなる。ばねの中を縦波が往復するようになり、決まった振動数が 1 つではなく、いくつも現れる。有効質量の考え方は、いちばん低い振動だけを取り出した近似だと言える。
ばねの運動エネルギーは 、 で 、約 小さい
別解
積分を使わず、分割して足すルート。 ばねを 等分し、 番目の小片を「質量 、速さ の小さなおもり」とみなす。
運動エネルギーの合計は
平方和の公式を使う。
を大きくすると、かっこの中は に近づく。
の正体が「平方和の という主要部」であることが、この計算でははっきり見える。積分を習っていなくても、数列の和だけで同じ結論にたどり着ける。
ポイント
- ばねの各部は固定端からの距離に比例した速さで動く
- ばね全体の運動エネルギーは、質量 ms/3 がおもりと同じ速さで動くぶんに等しい
- 有効質量 m+ms/3 に置きかえれば、あとはふつうの単振動
- 無視すると周期を約 5 % 小さく見積もる
よくある間違い
- ばねの質量をそのまま足して m+ms とする(効くのは 3 分の 1 だけ)
- ばね全体がおもりと同じ速さで動くと考える(固定端は止まっている)
- ばね定数のほうが変わると思う(変わるのは慣性の側で、k はそのまま)