物理 / 単振動
振動する物体はどこで時間を過ごすか
問題
質量 の物体が、角振動数 、振幅 の単振動をしている。時刻 での位置は と表される。
(1) 周期と、振動の全エネルギーを求めよ。
(2) 1 周期のうち、物体が の範囲にいる時間は全体のどれだけか。分数で答えよ。
(3) 運動エネルギーの時間平均を求めよ。位置エネルギーの時間平均と比べよ。
(4) 速さの時間平均を求めよ。またそれは、最大の速さの何倍か。
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位置についての条件を、時刻についての条件に翻訳できるか。平均を出したい量が 2 乗の形をしていることに注意する。速さの平均は、定義に戻れば計算がいらない。
解答・解説
方針
「どこにいる時間が長いか」は、位置ではなく時刻に戻って測る。条件を満たす時刻の区間の長さを合計すればよい。エネルギーの平均は、正弦と余弦の 2 乗の 1 周期平均がどちらも であることを使う。速さの平均は、道のりを時間で割ればよい。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 単振動では、物体は端の近くでゆっくり、中心付近で速く動く。だから「どこにいる時間が長いか」には偏りがある。
時間の割合を出すには、位置の話を時刻の話に翻訳するのが早い。 を逆に読んで、条件を満たす時刻の区間を測ればよい。
エネルギーの平均は、正弦と余弦の 2 乗の平均を知っていれば計算がいらない。速さの平均も、定義(道のり ÷ 時間)に戻れば一瞬で出る。
① 周期とエネルギー。 周期は
速さは で、最大の速さは である。全エネルギーは、中心を通る瞬間の運動エネルギーに等しい。
② 中心付近にいる時間。 条件を時刻に翻訳する。
とおくと、 は 1 周期のあいだに から まで一定の速さで増える。だから時間の割合は、そのまま の区間の長さの割合になる。
となるのは
長さを足すと である。
真ん中の半分の幅に、時間の 3 分の 1 しかいない。残りの 3 分の 2 は外側で過ごしている。
③ エネルギーの時間平均。 運動エネルギーは
したがって
位置エネルギーは だから、同じ理由で である。
2 つの平均は等しく、それぞれ全エネルギーのちょうど半分になる。
④ 速さの時間平均。 定義に戻る。1 周期のあいだに物体が動く道のりは、端から端へ 2 回ぶんで である。
最大の速さ と比べると
まとめ 単振動の「平均」は、どの量の平均かで値が変わる。速さの平均は最大の 倍、2 乗の平均から出る速さは 倍(約 倍)で、一致しない。平均をとる前に「何を、どの重みで平均するのか」を決めておきたい。
発展 — 一歩先へ。 等しい時間ごとに物体の位置を打点すると、点は端の近くに混み合う。端では速さが になるので、そこに長くとどまるからである。
滞在時間の分布は に比例し、端で急に大きくなる。量子力学で調和振動子を扱うと、エネルギーの高い状態ほど、粒子の存在確率の分布がこの古典的な形に近づく。これは対応原理とよばれる考え方の、いちばん見やすい例である。
・、時間の割合 、運動エネルギーの平均も位置エネルギーの平均も 、速さの平均 で最大の 倍
別解
円運動の影で見るルート。 単振動は、等速円運動を横から見た影である。半径 の円周上を一定の速さで回る点を考え、その位置の一方の座標を とする。
円周上の点は一定の速さで回るので、時間の割合は中心角の割合に等しい。あとは「 となるのは円周のどの部分か」を数えるだけである。
が になるのは、円周を 12 等分する目盛りにちょうど当たる位置である。そこで切られる 4 つの弧を合わせると、円周の になる。
端に長くいる理由も、この絵で見える。円周上の点が端の近くを通るとき、点は動いていても影はほとんど動かない。逆に中心付近では、影が円周上の点と同じ速さで走る。
「円周上では時間が均等、影に落とすと不均等」という一言で、この問題の全体像が説明できる。
ポイント
- 位置についての条件は、時刻(位相)についての条件に翻訳して測る
- 中心の半分の幅にいる時間は、全体の 1/3 しかない
- sin² と cos² の平均はどちらも 1/2 なので、運動エネルギーと位置エネルギーの時間平均は等しく E/2
- 速さの平均は 4A/T で、最大の速さの 2/π 倍(2 乗平均から出る値とは別物)
よくある間違い
- 位置について平均をとってしまう(問われているのは時間での平均)
- 速さの時間平均を、最大の速さの半分だと決めつける(正しくは 2/π 倍)
- 運動エネルギーの平均を「最大値の半分」と混同する(たまたま一致するが、根拠は cos² の平均が 1/2 であること)