物理 / 単振動

谷の曲がり具合が周期を決める

最難関編単振動近似曲率半径

問題

なめらかな谷の断面が、最下点を原点として ( の単位は m)で表される。この谷に質量 の小球を置き、最下点の近くで往復させる。小球は谷面から離れず、摩擦はないものとする。重力加速度の大きさを とする。

xyO小球2.0−2.00.4
なめらかな谷の断面 y=0.10x²(x, y の単位は m)。小球はこの面に沿って最下点のまわりを往復する。

(1) 最下点から水平に だけずれた位置で、小球にはたらく力のうち谷面に沿う向きの成分を求めよ。 が小さく、接線の傾きが に比べて小さいとしてよい。

(2) (1) の結果から、この運動が単振動であることを示し、周期を求めよ。周期は質量によるか。振幅によるか。

(3) この谷を、最下点で同じ曲がり方をする円(半径 )で置きかえる。 を求め、長さ の糸をもつ単振り子の周期と比べよ。

(4) 振幅が のとき、最下点を通る速さを求めよ。

ヒントを見る

戻そうとする力は、重力のうち谷面に沿う成分である。傾きが小さいとき、角度の正弦と正接をどう扱えるか。得られた係数は何を表しているか。

解答・解説

方針

谷に沿って戻そうとする力を、ずれ の 1 次まで書く。 の形になれば単振動で、係数から周期が決まる。放物線を最下点で近似する円の半径(曲率半径)を出すと、単振り子との対応が見える。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 単振り子の周期が糸の長さで決まることは知っている。では、糸のない谷ではどうなるか。

答えを先に言えば「底の曲がり具合」である。どんな形の谷でも、底のごく近くでは放物線で近似できる。だから底での曲がり方だけが周期を決める。

やることは 1 つで、戻そうとする力を の 1 次まで書き、 の形になるかを確かめることである。

① 谷面に沿う力。 位置 での谷面の傾きは

斜面の傾き角を とすると である。重力のうち谷面に沿う成分は で、向きは坂を下る側、つまり最下点へ戻る向きである。

が小さいと も小さく、 と扱ってよい。また、谷に沿って測った距離も水平の でよい。

負号は「ずれと逆向き」を表す。

重力沿う成分
谷面に沿う成分だけが往復運動をつくる。傾きを強調して描いてある。

② 単振動と周期。 運動方程式に入れる。

の形だから単振動である。

質量 は両辺から消えたので、周期は質量によらない。また の 1 次だけが残ったので、振幅にもよらない。

重要加速度が と書ければ単振動。 は「ずれ あたりに戻ろうとする加速度」

③ 曲率半径との関係。 半径 の円の底の部分は

と書ける。これを と比べると

一方、長さ の単振り子の周期は

② とぴったり一致する。

円の中心R = 5.0 m
最下点で谷にぴったり寄り添う円。その半径 5.0 m が、対応する単振り子の糸の長さにあたる。
重要底の曲率半径が の谷での微小振動は、長さ の単振り子と同じ周期 になる

④ 最下点の速さ。 単振動の最大の速さは である。

まとめ 単振り子の「糸の長さ」の正体は、軌道の曲がり具合である。だから糸がなくても、底の曲率半径さえ分かれば周期が出る。

発展 — 一歩先へ。 振幅を大きくすると 以外の効き方が出てきて、等時性はくずれる。この谷で振幅を にすると、周期は微小振動より約 長くなる。

振幅によらず完全に等時になる曲線もあり、それがサイクロイドである。ホイヘンスはこれを見つけて振り子時計の精度を上げようとした。「等時性は近似にすぎない」と知ったうえで、近似が効く範囲を押さえておきたい。

(質量にも振幅にもよらない)、 で単振り子と同じ周期、

別解

エネルギーの形から読み取るルート。 力を分解しなくても、エネルギーの式から が読める。

最下点を基準にすると、位置エネルギーは高さ を使って

これは の形である。ばねの位置エネルギー と見比べると、この谷はばね定数

のばねとして振る舞うと分かる。運動エネルギーは のままだから

力を接線方向と法線方向に分ける手間が要らないぶん、こちらのほうが速い。位置エネルギーが変位の 2 乗に比例していれば、その係数からばね定数にあたる量が読めるという見方は、浮きの振動でも気体の振動でも同じように使える。

ポイント

  • 戻そうとする力を x の 1 次まで書いて a=−ω²x の形にできれば単振動
  • 谷の周期は底の曲率半径 R だけで決まり、長さ R の単振り子と同じ
  • 質量にも(小さい)振幅にもよらない
  • 位置エネルギーが ½Kx² の形なら、その K がばね定数にあたる

よくある間違い

  • 谷面に沿う距離と水平のずれ x を区別しすぎて先に進めない(傾きが小さいときはどちらでもよい)
  • sinθ を残したまま計算して単振動の形にできない(1 次までの近似が要点)
  • 曲率半径を放物線の係数そのもの(0.10)としてしまう(R=1/(2a) で 5.0 m)