物理 / 単振動

摩擦のあるばね振り子はどこで止まるか

最難関編単振動動摩擦エネルギー

問題

あらい水平な床の上に質量 の物体を置き、ばね定数 の軽いばねの一端をつなぐ。ばねの他端は壁に固定されている。物体と床のあいだの静止摩擦係数と動摩擦係数は、どちらも とする。

ばねが自然長のときの物体の位置を原点 O とし、ばねが伸びる向きを正として位置 をとる。物体を まで引いて静かにはなす。重力加速度の大きさを とする。

mO0.42 m
あらい床の上のばね振り子。ばねが自然長のときの物体の位置を O とし、右向きを正とする。

(1) はなしてから最初に折り返すまでの運動は単振動である。その振動の中心の位置と、最初に折り返す位置を求めよ。

(2) 折り返しの位置は、半往復するごとにいくら中心に寄るか。また 1 往復に要する時間は、摩擦がないときと変わるか。

(3) 物体が最後に止まる位置と、止まるまでに折り返す回数を求めよ。

(4) 止まるまでに物体が動いた道のりの合計を求めよ。

ヒントを見る

摩擦の向きは速度の向きだけで決まり、動いているあいだ大きさは変わらない。すると半往復のあいだ、物体は一定の横向きの力を受け続けている。それはばねの力とどう合わさるか。止まる条件は「速さが になること」ではない。

解答・解説

方針

摩擦力は大きさが一定で、向きだけが速度の向きで決まる。だから半往復のあいだは「一定の力が加わったばね振り子」、つまり中心がずれた単振動である。折り返しの位置を順に追い、止まる条件を「ばねの力が最大静止摩擦に負けること」と言いかえる。道のりはエネルギーの差から出す。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 摩擦があると振動はだんだん小さくなる。ここで「指数関数のようになめらかに減る」と思い込むと行き詰まる。

空気の抵抗は速さに比例するが、床の摩擦は速さによらず大きさが一定である。変わるのは向きだけで、右へ動くか左へ動くかで切りかわる。

だから半往復のあいだ、物体には「ばねの力 + 大きさ一定の力」がはたらく。一定の力が加わったばね振り子は、中心がずれるだけで、やはり単振動である。この見方に立てば、あとは折り返しの位置を追うだけになる。

① 左へ動くあいだの運動。 はじめ物体は から左へ動きだす。速度が負だから、動摩擦力は右向き、つまり正の向きにはたらく。大きさは

運動方程式は である。右辺をまとめると

これは中心が にずれた単振動である。

重要大きさが一定の力が加わったばね振り子は、振動の中心がずれるだけで、周期も振動の形も変わらない

② 最初の折り返し。 出発点 は、この中心から 離れている。静かにはなしたので、これがこの半往復の振幅である。

単振動は中心をはさんで対称だから、反対側の端は中心から同じ の位置になる。

③ 半往復ごとの減り方。 次は右へ動くので、摩擦は左向きになり、中心は に移る。 からの振幅は だから、次の折り返しは である。

折り返しの位置は と並ぶ。大きさは毎回同じだけ小さくなり、その値は

時間はどうか。どの半往復も同じ の単振動で、中心が移るだけである。だから半周期も 1 往復の時間も変わらない。

④ どこで止まるか。 動いているかぎり振幅は減り続ける。運動が終わるのは、折り返して速さが になった位置で、ばねの力が最大静止摩擦に負けたときである。

折り返しの列を見ると、 まではこの帯の外なので動き続ける。次の で初めて帯に入る。

よって物体は で止まる。折り返しの回数は 4 回で、かかった時間は半周期 4 つ分、つまり である。

0.42(はじめ)−0.320.22−0.120.02 で停止止まれる帯 |x| ≤ 0.05 m
折り返しの位置を上から順に並べたもの。半往復するごとに端が 0.10 m ずつ内側に寄り、灰色の帯に入ったところで動けなくなる。

⑤ 道のりの合計。 失われた力学的エネルギーは、すべて摩擦がうばった分である。摩擦力の大きさは一定なので、道のり に対して仕事は と書ける。

折り返しの位置から と足しても同じ値になる。

まとめ 大きさ一定の摩擦は「中心をずらす力」であって、周期を変えない。振幅は等差数列で減り、ばねの力が静止摩擦に勝てなくなった折り返し点で運動は終わる。

発展 — 一歩先へ。 速さに比例する抵抗(空気の抵抗)なら、振幅は等比数列で減る。等比数列は にならないので、理屈のうえでは永久に止まらない。床の摩擦は等差数列で減り、有限の時間できっちり止まる。「減り方が等差か等比か」は、身のまわりの振動が何にじゃまされているかを見分ける手がかりになる。

中心 ・折り返し 、半往復ごとに で周期は不変()、 で 4 回折り返して止まる、道のり

別解

エネルギーの帳簿だけで見るルート。 運動方程式を解かずに、折り返しから次の折り返しまでをエネルギーで追う。

端では速さが だから、そのときの力学的エネルギーは だけである。連続する 2 つの端の位置を (符号は逆)とすると、そのあいだに物体が動いた道のりは である。

左辺は と因数分解できる。両辺の共通因数を払うと

「半往復ごとに一定量ずつ減る」が、この 1 行で出る。うまくいくのは、摩擦の仕事が距離の和に、エネルギーの差が 2 乗の差になっていて、両方に同じ和が顔を出すからである。

ポイント

  • 大きさ一定の摩擦は振動の中心をずらすだけで、周期は変えない
  • 折り返しの位置は半往復ごとに 2μmg/k ずつ内側に寄る(等差数列)
  • 止まるのは「端に来たとき、ばねの力が最大静止摩擦に負ける」場所
  • 道のりの合計は、エネルギーの差を μmg で割れば出る

よくある間違い

  • 振幅が等比数列で減ると思い込む(速さによらない摩擦では等差数列になる)
  • 摩擦があると周期も長くなると考える(中心が移るだけで、周期は変わらない)
  • 「x=0 に戻って止まる」と決めつける(ばねの力が静止摩擦に負ける帯の中なら、中心からずれた位置でも止まる)