物理 / 単振動
振り子で重力加速度を測る — 何往復数えるか
問題
長さ の単振り子を使って重力加速度 を測る。長さはものさしで の精度で測れ、時間はストップウォッチで測るが、押すタイミングのずれのため測定値には の誤差がつく。周期はおよそ である。円周率を とする。
なお、 で、いくつかの量の積や商で表される量の相対誤差は、各量の相対誤差を(指数の絶対値を掛けて)足し合わせたものになる。
(1) 1往復だけを測って周期とした場合、周期の相対誤差は何 % か。
(2) 10往復ぶんの時間を測って10で割った場合はどうか。
(3) (2) のとき、 の相対誤差は何 % か。長さの誤差も含めて答えよ。
(4) の相対誤差を 以内にするには、最低何往復ぶんを測ればよいか。
ヒントを見る
測定回数を増やしても、ストップウォッチを押す誤差は増えない。その誤差を何で割ることになるかを考える。また g の式で T が何乗で入っているかを見る。
解答・解説
方針
ストップウォッチの誤差 ±0.2 s は、何往復ぶんを測っても同じ大きさでつく。だから n 往復ぶんを測って n で割れば、周期1回あたりの誤差は 1/n になる。g は T の2乗に反比例するので、周期の相対誤差は2倍になって効く。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 ストップウォッチの誤差 は、1往復を測っても100往復を測っても同じ大きさ でつく。押し始めと押し終わりの2回しか押さないからである。
ということは、長い時間を測ってその回数で割れば、周期1回あたりの誤差は小さくなる。 往復ぶんを測れば誤差は になる。これが「まとめて測る」ことの意味である。
もうひとつの要点は、 で が 2乗 で入っていること。周期の相対誤差は2倍になって に伝わる。2乗で効く量は、精度もそのぶん厳しく要求される。
① 1往復だけ測る。 測定値は である。
② 10往復ぶんを測る。 測定値は 。これを10で割ると
測る手間はほとんど変わらないのに、精度は10倍になった。
③ の相対誤差。 で、 は1乗、 は 乗である。
長さの相対誤差は
したがって
時間の誤差が圧倒的に効いている。 長さをこれ以上ていねいに測っても、ほとんど改善しない。
なお測定値そのものは
で、誤差は だから と書ける。
④ 以内にする。 長さの誤差 はどうにもならないので、時間のぶんを 以内にすればよい。
往復ぶんを測ると だから
50往復、時間にして約100秒である。これで が 、およそ の精度で求まる。
まとめ 同じ道具でも、測り方を変えるだけで精度は桁で変わる。押す誤差が回数によらないことを使って に薄め、2乗で効く量には人一倍気を配る。この2つが測定の基本になる。
発展 — 一歩先へ。 「まとめて測って割る」は、系統的なずれを薄める一般的な手口である。同じ考えは、気柱の共鳴で第1共鳴点と第2共鳴点の 差 をとると開口端補正が消える、という話にも現れる。
一方で、この方法にも限界がある。50往復もすると振幅が空気抵抗で目に見えて減る。振幅が小さくなると周期はごくわずかに短くなるので、回数を増やしすぎると別の系統誤差が入ってくる。 精度を上げる工夫は、どこかで別の誤差とぶつかる。
(1) (2) (3) 約 (4) 往復
別解
絶対誤差のまま追いかけるルート。 相対誤差の公式を使わず、値そのもので上下の幅を計算しても確かめられる。
②の場合、周期は から のあいだにある。それぞれで を計算すると
幅は 、中心の値 に対して片側 である。
長さの を足して となり、③と一致する。
周期を小さくしたほうが が大きく出る ことも、この計算なら符号を含めて見える。 が分母の2乗にあるからである。
相対誤差の公式は速いが、「なぜ2倍か」を実感しにくい。1度はこのように両端を計算して、幅が確かに2倍になっていることを確かめておくとよい。
ポイント
- ストップウォッチの押す誤差は回数によらない。 往復ぶんを測れば相対誤差は
- で は2乗。周期の相対誤差は2倍になって伝わる
- どの量の誤差が効いているかを見比べ、効く側の精度を上げる
よくある間違い
- 10往復測ると誤差も10倍になると考えてしまう。押す回数は2回のままなので誤差は増えない
- の相対誤差を としてしまう。 は2乗なので2倍して足す
- 長さをもっと精密に測れば精度が上がると考えてしまう。ここでは時間の誤差が20倍効いている