物理 / 単振動
振り子時計はどれだけ狂うか
問題
周期 の振り子(長さ約 )を使った振り子時計がある。1日を 、地球の半径を とする。
周期が だけ長くなると、時計は1日あたり だけ遅れる。
(1) 気温が上がって振り子の棒が 伸びた。時計は1日にどれだけ遅れるか。
(2) この時計を高度 の山へ持っていくと、重力加速度は地表の何倍になるか。ただし高度 での重力加速度は、地表の値の 倍である。
(3) (2) の場所では1日にどれだけ遅れるか。
(4) 山の上で正しく動くようにするには、振り子の長さを何 mm 変えればよいか。
ヒントを見る
周期の式には L と g が平方根の中に入っている。L が 1 % 増えたら周期は何 % 増えるか。小さい変化なら、割合で考えるのがいちばん速い。
解答・解説
方針
T=2π√(L/g) の両辺の変化率を見る。長さと重力加速度がそれぞれわずかに変わったとき、周期の変化率は ½ΔL/L − ½Δg/g になる。平方根がついているので、変化率は半分になって効く。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 長さや重力加速度がわずかに変わったときの周期の変化を知りたい。そのたびに を電卓で計算し直すのは効率が悪いし、小さな差が丸め誤差に埋もれてしまう。
そこで 割合(変化率)で考える。 は に比例し、 に比例している。平方根がついているので、中身が 変われば は 変わる。
符号に注意する。長さが伸びれば周期は長くなり(遅れる)、重力が強くなれば周期は短くなる(進む)。この1本の式で(1)から(4)まで全部が処理できる。
① 棒が伸びたとき。 なので
1日あたりの遅れは
たった 伸びただけで、1日に9秒近く狂う。
② 山の上の重力加速度。 、 で と小さい。
約 倍、 だけ小さくなる。
③ 山の上での遅れ。
1日に43秒も遅れる。①の温度による狂いの5倍である。
④ 合わせ直す。 周期を元に戻すには にすればよい。
約 短くする。 振り子時計におもりの位置を上下させるねじが付いているのは、この調整のためである。
まとめ 変化率で見ると、 が「長さは半分、重力は逆向きに半分」という単純な足し算に化ける。 の狂いが1日で43秒になる、という感覚は、割合で計算してはじめて手に入る。
発展 — 一歩先へ。 振り子時計は、逆に使えば 重力加速度を測る道具 になる。周期を精密に測れば で が出る。
地下に密度の大きい鉱床があれば はわずかに大きくなる。この差を測って地下構造を探るのが重力探査で、石油や鉱脈の探索に使われてきた。 程度の差まで読める装置もある。振り子ひとつで地面の下が見える、というのは物理の面白いところである。
(1) 約 (2) 約 倍() (3) 約 (4) 約 短くする
別解
そのまま数値を入れて引き算するルート。 変化率の式を使わず、素直に2回計算しても確かめられる。
山の上の重力加速度は
周期は
差は 。1日の振動回数は 回だから、遅れは
③と一致した。
ただしこのルートには落とし穴がある。 と という、6桁目まで一致した2つの数の引き算になる。 電卓で4桁までしか出さなければ差が になってしまう。
小さい変化を扱うときは、大きい数どうしを引く前に、割合の式に直しておく ほうが安全である。①のような の話では、この差が致命的になる。
ポイント
- なので、変化率は
- 小さい変化では 。平方根なら半分、2乗なら2倍で効く
- 長さが伸びれば遅れ、重力が弱まっても遅れる。合わせ直すには
よくある間違い
- 長さが 伸びたら周期も 増えると考えてしまう。平方根なので半分
- 重力が小さくなると周期も短くなると考えてしまう。 は分母にあるので逆になる
- 大きい数どうしを引く形のまま計算し、桁落ちで差が消えてしまう。割合に直してから扱う