物理 / 単振動

エレベーターの中のばね振り子と単振り子

★★★★ 難関単振動慣性力見かけの重力

問題

エレベーターの天井から、ばね定数 のばねで質量 のおもりを吊るしたもの(ばね振り子)と、長さ の糸に小さなおもりを吊るしたもの(単振り子)を並べて置く。重力加速度の大きさを 、円周率を とする。

(1) エレベーターが静止しているとき、それぞれの周期を求めよ。

(2) エレベーターが上向きに一定の加速度 で動いているとき、それぞれの周期はどうなるか。

(3) エレベーターのロープが切れて自由落下したとき、それぞれの運動はどうなるか。

(4) ばね振り子の周期がエレベーターの加速度によらない理由を述べよ。

ばね振り子単振り子加速度 a
エレベーターの天井に、ばね振り子と単振り子を並べて吊るす
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それぞれの周期の式に、何が入っていて何が入っていないかを見比べる。一定の大きさの力が加わったとき、復元力の「変位に比例する部分」は変わるか。

解答・解説

方針

加速するエレベーターの中では、重力と慣性力を合わせた「見かけの重力」を使う。単振り子の周期にはこの見かけの重力が入るので変わる。一方ばね振り子の周期は k と m だけで決まり、一定の力がいくら加わっても中心がずれるだけで周期は変わらない。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 2つの周期の式を並べて見比べるところから始める。

片方には が入っていて、もう片方には入っていない。 ここがすべてである。

加速するエレベーターの中では、重力と慣性力を合わせた「見かけの重力」を使う。 が入っている単振り子はその影響を受け、入っていないばね振り子は受けない。

なぜばね振り子が影響を受けないのかは、④で復元力の形から説明する。

① 静止しているとき。

② 上向きに加速しているとき。 エレベーターと一緒に動く立場では、おもりに下向きの慣性力 が加わる。重力と合わせた見かけの重力加速度は

倍である。

単振り子は

短くなった。ばね振り子は のままである。

③ 自由落下したとき。 見かけの重力が になる。

  • 単振り子 … 復元力そのものが消える。おもりを横にずらしても戻ってこない。振動しなくなる(糸が張っていれば、そのままの向きで浮いたままになる)
  • ばね振り子 … ばねの力は変わらないので、同じ周期 で振動し続ける。ただし振動の中心は、ばねが自然長になる位置へ移る
変位復元力Oばね(加速しても同じ傾き)振り子(傾きが変わる)自由落下
復元力と変位の関係。傾きが急なほど振動は速い。ばねの直線は加速度が変わっても傾きがそのままだが、振り子の直線は見かけの重力とともに傾きが変わり、自由落下では水平になって復元力そのものが消える

④ ばね振り子が影響を受けない理由。 つり合いの位置を原点にとって考える。見かけの重力が のとき、つり合いの伸びは である。そこから だけ伸ばすと、ばねの力は 、見かけの重力は だから、合力は

一定の力である は、つり合いの伸び とちょうど打ち消し合って消える。 残るのは だけで、 が入っていない。

したがって運動方程式は となり、 は見かけの重力によらない。一定の力は振動の中心をずらすだけで、周期を変えない のである。

まとめ 周期の式に が入っているかどうかで、加速の影響を受けるかが決まる。単振り子は が変わればそのまま変わり、ばね振り子は中心がずれるだけ。自由落下では、この違いが「止まる」と「振動し続ける」という劇的な差になって現れる。

発展 — 一歩先へ。 ③の性質から、無重量状態でも「ばね式の秤」なら質量を測れる ことが分かる。宇宙ステーションでは体重計が使えないが、ばねに人をつないで振動させ、その周期から として質量を出す装置が実際に使われている。

台ばかりが測っているのは重力に応じた「重さ」で、ばねの振動が測っているのは動かしにくさ、つまり「慣性質量」である。地上ではどちらも同じ値になるが、その一致は当たり前ではない。

(1) ばね振り子 、単振り子 約 (2) ばね振り子は変わらず、単振り子は 倍の 約 (3) ばね振り子はそのまま同じ周期で振動し、単振り子は復元力が消えて振動しなくなる (4) 重力(や慣性力)は振動の中心をずらすだけで、復元力の比例定数 を変えないから

別解

グラフの傾きで比べるルート。 復元力を変位の関数として描くと、2つの違いが一目で分かる。

ばね振り子では、合力は である。エレベーターが加速すると、一定の力 が加わるので直線が上下に平行移動する。傾きは のまま変わらず、 軸との交点(つり合いの位置)だけが動く。

単振り子では、復元力は である。 が変われば 直線の傾きそのものが変わる。

周期は「傾きの大きさ」で決まる( が傾きを質量で割ったもの)。だから

  • 平行移動しただけのばね振り子 … 周期は不変
  • 傾きが変わった単振り子 … 周期も変わる

自由落下では単振り子の直線が水平になり、傾きが 、つまり復元力が消える。これが③の「振動しなくなる」である。

式を追わずに「傾きが変わるか、平行移動か」だけを見れば、どの場面でも即答できる。

ポイント

  • ばね振り子の周期は だけ、単振り子の周期には が入る
  • 加速するエレベーターでは見かけの重力 を使う
  • 一定の力は振動の中心をずらすだけで、復元力の比例定数を変えない

よくある間違い

  • ばね振り子の周期も加速度で変わると考えてしまう。式に が入っていない
  • 自由落下でばね振り子も止まると考えてしまう。ばねの力は重力と無関係にはたらく
  • 下向きに加速するときも としてしまう。慣性力の向きを確かめる