物理 / 気体の熱力学

熱機関を 2 段重ねても効率は変わらない

最難関編熱効率熱機関論証

問題

高温の熱源(温度 )と低温の熱源(温度 )のあいだで働く熱機関を考える。

いま、中間の温度 の熱源を用意し、次のように 台の機関を直列につなぐ。

機関 : から熱を受け取り、仕事をして、残りを に捨てる 機関 : 機関 が捨てた熱をそのまま受け取り、仕事をして、残りを に捨てる

どちらもカルノー機関で、効率は である。

高温 600 K低温 300 K機関 1機関 2400 K へ仕事仕事
2 台の熱機関を直列につなぐ。1 台目が捨てた熱を 2 台目が受け取る。

(1) 機関 、機関 の効率をそれぞれ求めよ。

(2) 機関 を受け取ったとき、それぞれの機関がする仕事と、最後に捨てられる熱を求めよ。

(3) 台を合わせた効率を求め、 のあいだで直接働く 台のカルノー機関の効率と比べよ。

(4) 中間の温度 をどう選んでも合計の効率が変わらないことを、文字式で示せ。

ヒントを見る

段目が受け取る熱は、 段目が捨てた熱である。合計の効率はどう定義されるか。

解答・解説

方針

各段の効率を出し、熱の流れを順に追う。合計の効率は「合計の仕事 ÷ 最初に受け取った熱」である。文字で書くと中間温度が約分で消えることが見える。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 段に分ければ効率が上がるのでは」と考えたくなる。実際に計算して確かめる問題である。

追うのは熱の流れだけでよい。 段目が捨てた熱がそのまま 段目の入力になる。

そして合計の効率は「取り出した仕事の合計 ÷ 最初に入れた熱」である。文字で書けば、中間温度が消えることがはっきり見える。

① 各段の効率。

② 熱と仕事の流れ。 機関 のうち を仕事にする。

残りの に捨てられ、機関 に入る。

最後に へ捨てられるのは である。

3000 J受け取る熱機関1の仕事 1000機関2の仕事 500捨てる熱 1500行き先機関 2 の仕事機関 1 の仕事
エネルギーの行き先。仕事の合計 1500 J は、1 台のカルノー機関の場合とまったく同じ。

③ 合計の効率。

一方、 のあいだで直接働くカルノー機関の効率は

まったく同じである。 段に分けても得はしない。

④ 中間温度によらないこと。 「効率 」は「 が残る割合」と読める。 段を通したあとに残る割合は、各段で残る割合の積である。

が約分で消える。

中間にいくつ段を入れても、両端の温度だけで決まる。

重要効率は「 の掛け算」で合成される。カルノー機関では中間温度が約分で消える

まとめ 段数を増やしても効率は上がらない。カルノー効率が「両端の温度だけで決まる上限」であることが、この計算からも確かめられる。

発展 — 一歩先へ。 では、なぜ実際の発電所では蒸気タービンを複数段にするのか。理由は効率ではなく、 段で大きな圧力差を扱うと羽根にかかる負担が大きすぎるからである。

理想的な機関なら段数は効率に関係しないが、現実の機関では各段の損失を小さく抑えるために分割が有利になる。「理想では差がないが、現実では差がある」という場面では、何が理想からのずれを生んでいるのかを見極めることが要点になる。

なお ④ の「残る割合の掛け算」という構造は、フィルターを何枚も重ねる場合や、複数の関門を通過する確率など、いろいろな場面に共通して現れる。

、仕事は で捨てる熱 、合計の効率 台の場合と同じ、 は約分で消える

別解

熱の比だけで追うルート。 仕事を計算せず、熱の比だけで進めることもできる。

カルノー機関では が成り立つ。これを 段に適用する。

辺々を掛けると が同時に消える。

つまり「入った熱のうち最後まで残って捨てられる割合」は、両端の温度比そのものである。仕事は差 だから、効率も直ちに出る。

この見方の利点は、段数がいくつでも同じであることがすぐ分かる点である。 段なら 個の比を掛けることになり、中間の温度がすべて次々に約分される。

「掛け算で消える形」を見つけると、場合の数が増えても結論が変わらないことが一目で分かる。

ポイント

  • 2 段目が受け取るのは 1 段目が捨てた熱
  • 効率は 1−e の掛け算で合成される
  • カルノー機関では中間温度が約分で消え、両端の温度だけで決まる
  • 段数を増やしても効率は上がらない

よくある間違い

  • 効率を足し算で合成してしまう(1−e の掛け算)
  • 2 段目の入力を Q_H としてしまう(1 段目が捨てた熱)
  • 中間温度を選べば効率を上げられると考える