物理 / 気体の熱力学

ピストンで仕切られた 2 室

最難関編状態方程式等温変化第 1 法則

問題

断熱材でできたシリンダーを、なめらかに動く断熱のピストンで左右 つの室に分ける。はじめ、どちらの室にも同じ理想気体が入っていて、圧力 、体積 、温度 である。気体は単原子分子とする。

右室の壁だけは熱をよく通し、外の恒温槽(温度 )と接している。したがって右室の気体はつねに に保たれる。

左室に電熱線を入れてゆっくり加熱すると、ピストンが右へ動き、右室の体積が になったところで加熱をやめた。 とする。

ピストン左室(加熱)右室(等温)断熱の壁熱を通す
断熱のシリンダーを断熱ピストンで 2 室に分ける。右室の壁だけが熱を通し、恒温槽と接している。

(1) このときの右室の圧力を求めよ。また左室の圧力はいくらか。

(2) 左室の体積と温度を求めよ。

(3) 左室の気体がした仕事を求めよ。

(4) 左室に与えた熱を求めよ。また右室が外の恒温槽に出した熱はいくらか。

ヒントを見る

ピストンが静止しているとき、両側の圧力にはどんな関係があるか。まず状態が完全に決まるのはどちらの室か。

解答・解説

方針

ピストンがなめらかに動くので、両室の圧力はつねに等しい。右室は等温なのでボイルの法則で圧力が決まり、それが左室の圧力にもなる。左室は状態方程式で温度が出る。仕事は「左室が右室にした仕事」で、右室の等温圧縮の仕事に等しい。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 室あって未知数が多く見えるが、決められるところから決めていく。

ピストンがなめらかで質量が無視できるなら、両側の圧力はつねに等しい。そして右室は温度が固定されているので、体積さえ決まればボイルの法則で圧力が出る。

つまり「右室 → 圧力 → 左室」の順に確定する。左室の温度は最後に状態方程式で求まる。

仕事も同じ順序で考える。左室が押した相手は右室だから、左室がした仕事は右室がされた仕事に等しい。

① 圧力。 右室は等温だからボイルの法則が使える。

ピストンがつり合っているので、左室の圧力も同じ である。

② 左室の体積と温度。 全体の体積は変わらないので

状態方程式の比をとる。

③ 左室がした仕事。 左室が押しているのはピストンで、その先は右室である。ピストンは軽いので、左室がした仕事はそのまま右室がされた仕事になる。

右室は等温圧縮なので

重要軽いピストンを介した 室では、一方がした仕事 = 他方がされた仕事

④ 熱の収支。 左室について第 法則を使う。単原子分子だから

右室については、温度が変わらないので である。

負なので、右室は を恒温槽に放出している。押しこまれたぶんのエネルギーを、そのまま熱として外へ捨てていることになる。

369 J左室に与えた熱内部エネルギー 300 J仕事 69 J行き先内部エネルギーの増加右室にした仕事与えた熱
左室に与えた熱の行き先。仕事として渡った 69 J は、右室を素通りして恒温槽へ出ていく。

まとめ 「圧力が共通」「決まる室から決める」「仕事は受け渡し」の 点で、 室の問題はほどける。左室に入れた のうち、 は左室の内部エネルギーに、 は右室を通って外へ出ていった。

発展 — 一歩先へ。 もし右室も断熱だったら、右室は断熱圧縮で温度が上がる。すると同じ体積まで縮めるのに必要な圧力が大きくなり、左室の温度もさらに高くなる。

「相手の壁が熱を通すかどうか」で、同じ操作の結果が変わる。熱力学の問題では、まず各室の壁の性質(断熱か、熱を通すか)を確認するのが第一手になる。

右室・左室とも 、左室は 、仕事 、与えた熱 で右室が出した熱は

別解

エネルギーの流れを 本の図にするルート。 ④ の収支は、系全体で見るともっと簡単に確かめられる。

シリンダー全体(左室 + 右室)を つの系とみなす。外壁は断熱で、外とやりとりするのは「電熱線からの熱 」と「右室から恒温槽へ出る熱 」だけである。全体の体積は変わらないので、外に対する仕事は である。

右室は等温なので 、左室は だから

そして は右室が受けた仕事 に等しい(等温なので受けた仕事はそのまま熱で出ていく)。

個々の室で第 法則を書くより、系全体でエネルギーの出入りを数えるほうが見通しがよいことがある。「何が外と出入りするか」を最初に描いておくと、符号のミスも減る。

ポイント

  • 軽いピストンでは両室の圧力がつねに等しい
  • 状態が先に決まる室(温度が固定された側)から手をつける
  • 一方がした仕事は他方がされた仕事
  • 等温の室は、受けた仕事をそのまま熱として外に出す

よくある間違い

  • 両室の温度が等しいと考える(等しいのは圧力)
  • 左室の仕事を PΔV としてしまう(圧力が変化するので対数の式が必要)
  • 右室の内部エネルギーが増えると考える(等温なので 0)