物理 / 直流回路
充電の熱は減らせるか
問題
電気容量 のコンデンサーを、抵抗を通して起電力 の電池で充電する。
(1) 充電が完了したとき、コンデンサーに蓄えられるエネルギーと、電池がした仕事を求めよ。差はどこへ行ったか。
(2) (1) の熱は、抵抗の値を変えると変わるか。理由とともに答えよ。
(3) 次に、 の電池でいったん充電し、そのあと の電池につなぎかえる( 段階充電)。それぞれの段階で発生する熱を求め、合計を (1) と比べよ。
(4) 段階に分けた場合、熱の合計はどうなるか。
ヒントを見る
電池がする仕事と、コンデンサーに蓄えられるエネルギーを別々に計算する。段階を分けると、 回あたりの電圧の差はどうなるか。
解答・解説
方針
回の充電では、電池がした仕事の半分が必ず熱になる。これは抵抗によらない。段階を分けると、各段で「電池の電圧」と「コンデンサーの電圧」の差が小さくなるので、熱が減る。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 コンデンサーの充電では、電池がした仕事のちょうど半分が熱になる。これは有名な結果だが、「半分は避けられないのか」と考えてみる。
熱が出るのは、電池の電圧とコンデンサーの電圧に差があり、その差が抵抗にかかるからである。
だとすれば、電圧の差を小さくしていけば熱は減らせるはずである。段階を分けて少しずつ充電する、という発想が出てくる。
① 回で充電する場合。 最終的な電荷は である。
蓄えられるエネルギーは
電池がした仕事は、電荷 を電圧 で押し出したぶんである。
差の は、抵抗で熱になっている。
② 抵抗によらない理由。 上の計算に抵抗 はまったく出てこない。 も も、 と だけで決まる。
抵抗を大きくすれば充電はゆっくり進み、電流は小さくなる。しかし時間が長くかかるので、発熱の合計は変わらない。抵抗を に近づけても(導線だけでも)、 は必ず熱として失われる。
③ 段階に分ける。 まず で充電する。
電池の仕事は 、蓄えられたのは 。熱は差の である。
次に につなぎかえる。追加の電荷は 、電池の仕事は 。蓄えられたエネルギーの増加は 。熱は である。
回で充電したときの半分になった。
④ 段階。 同じ計算をくり返すと、各段の熱はどれも等しく になる。段が 個あるので
を大きくすれば、熱はいくらでも小さくできる。 段階なら である。
まとめ 「半分が熱になる」は、 段階で充電する場合の話である。電圧差を小さく保ちながら充電すれば、熱は に減らせる。
発展 — 一歩先へ。 の極限では熱が になる。これは「無限にゆっくり、電圧差を保たずに変化させれば損失がない」という、熱力学の可逆過程と同じ構造である。
実際の電子回路では、この原理がスイッチング電源に使われている。コンデンサーを直接電池につなぐのではなく、コイルを介して少しずつエネルギーを移すことで、損失を大きく減らしている。
「差があるところで損失が生まれる」——温度差での熱伝導でも、電圧差での充電でも、同じことが起きている。
蓄えられるのは 、電池の仕事は で差の は熱、抵抗の値によらない、 段階では合計 で半分、 段階では 倍
別解
電圧-電荷のグラフの面積で見るルート。 ③ の結果は、グラフを描くと計算せずに見える。
横軸に電荷 、縦軸に電圧をとる。コンデンサーの電圧は で、原点を通る直線である。
電池がした仕事は「電池の電圧 × 移動した電荷」なので、電池の電圧を高さとする長方形の面積になる。コンデンサーに蓄えられたエネルギーは、直線の下の三角形の面積である。
熱は、その差(長方形から三角形を引いた部分)にあたる。
回で充電する場合、長方形の高さは で一定なので、三角形の上に大きな三角形が残る。これが である。
段階にすると、長方形が つの段に分かれて直線に近づく。段の上に残る三角形は小さくなり、面積は半分になる。
段階なら、階段が直線にどんどん近づいていく。 で階段が直線に一致し、余りの面積が になる。
「階段で曲線を近似する」という図を思い浮かべれば、 という答えが自然に見えてくる。
ポイント
- 1 回の充電では電池の仕事の半分が必ず熱になる
- その熱は抵抗の値によらない(ゆっくりでも同じ)
- 段階を分けると各段の電圧差が小さくなり、熱が減る
- n 段階では熱は 1/n 倍。極限では損失なし
よくある間違い
- 抵抗を小さくすれば熱が減ると考える
- 電池の仕事を ½QE としてしまう(電池は電圧一定なので QE)
- 2 段階目の熱を計算するとき、すでに蓄えられている分を引き忘れる