物理 / 直流回路

温度が変わっても値の変わらない抵抗

最難関編抵抗の温度変化直列設計

問題

金属の抵抗は温度とともに増える。温度が だけ変わったときの抵抗は

で表される。 を抵抗の温度係数という。

いま、 の金属でできた抵抗 と、 の半導体(サーミスタ)でできた抵抗 を直列につなぐ。

R1(金属)R2(サーミスタ)
温度係数の符号が逆の 2 つの抵抗を直列につなぐ。

(1) 直列につないだ合成抵抗を、 で表せ。

(2) 合成抵抗が温度によらなくなる条件を求めよ。

(3) 合計を にしたい。 をそれぞれいくらにすればよいか。

(4) (3) の組で のときの 、合計をそれぞれ求め、条件が満たされていることを確かめよ。また だけを使った場合の変化率と比べよ。

ヒントを見る

合成抵抗の式で、 の係数はどうなるか。それを にできるのはどんなときか。

解答・解説

方針

直列なので合成抵抗は和である。 を含む項をまとめ、その係数が になるようにすればよい。温度係数の符号が逆の材料を組み合わせるのが要点である。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 精密な測定器では、部屋の温度が変わるだけで抵抗値がずれると困る。

そこで、温度が上がると増える材料と、減る材料を組み合わせる。片方が増えたぶんを、もう片方が減って打ち消せば、合計は変わらない。

式にすると、 の係数を にするという条件になる。設計の問題が、 本の式に翻訳される。

① 合成抵抗。 直列だから和をとる。

② 温度によらない条件。 の係数が であればよい。

の符号が逆でなければ、この比は正にならない。だから「増える材料」と「減る材料」の組み合わせが必要になる。

重要温度依存を消すには、符号が逆の温度係数を、抵抗値の比で釣り合わせる

③ 値を決める。 で合計が だから

④ 確かめる。 のとき

金属側が 増え、サーミスタ側が 減って、ちょうど打ち消している。

いっぽう だけを使った場合は で、 の変化である。 の温度変化で もずれるのでは、精密な測定には使えない。

ΔTRO35251010R1(増える)R2(減る)合計は一定
温度による抵抗の変化。R1 の増加と R2 の減少がちょうど打ち消し合い、合計は水平になる。

まとめ 直列の和を書いて、 の係数を にする。それだけで「温度によらない抵抗」が設計できる。符号の逆の材料を組み合わせるのがカギである。

発展 — 一歩先へ。 同じ発想は、いろいろな場面で使われている。

時計の振り子では、温度で伸びる棒と縮む棒を組み合わせて、振り子の長さを一定に保つ(グリッドアイアン振り子)。

レンズでは、屈折率の温度変化が逆向きのガラスを貼り合わせて、ピント位置が温度で動かないようにする。

いずれも「 つの逆向きの効果を、比で釣り合わせる」という同じ構造をしている。 種類の材料では実現できない性質を、組み合わせでつくり出す——設計の基本的な手筋である。

なお、この打ち消しは 次の項についてのみ成り立つ。温度が大きく変わると 次以上の項が効いてきて、完全には消えない。

、条件は の合計 だけなら 変わる

別解

並列にした場合を考えるルート。 直列でなく並列でも、同じように温度依存を消せる。

並列では合成抵抗の逆数(コンダクタンス)が足し算になる。

が小さいとして を使うと

の係数が になる条件は

直列のときと比が逆になる。今回の値なら 、つまり で、合成は である。

直列と並列で条件が「逆比」になるのは、直列では抵抗が、並列ではコンダクタンスが足し算になるからである。「何が足し算になるか」を押さえておけば、条件式は自分で作れる。

ポイント

  • 直列の合成抵抗で ΔT の係数を 0 にする
  • 条件は R1α1+R2α2=0(符号が逆の材料が必要)
  • 抵抗値の比 2.5:1 で釣り合う
  • 打ち消しは 1 次の項についてのみ成り立つ

よくある間違い

  • 同じ符号の材料どうしで打ち消そうとする
  • 温度係数の比をそのまま抵抗の比としてしまう(逆比かつ符号に注意)
  • 並列でも直列と同じ条件が使えると考える(逆比になる)