物理 / 直流回路
無限に広がる抵抗の網
問題
同じ抵抗 の導線を、縦横に無限に広がる正方形の網の形につなぐ。格子点(交点)はすべて同じで、どの点からも 本の導線が出ている。
隣り合う つの格子点 A、B のあいだの合成抵抗を求めたい。次の手順で考える。
(1) 点 A から電流 を流しこみ、無限の彼方から取り出す。対称性から、A につながる 本の導線それぞれに流れる電流はいくらか。特に AB 間の導線に流れる電流を答えよ。
(2) 今度は、無限の彼方から電流 を流しこみ、点 B から取り出す。このとき AB 間の導線に流れる電流はいくらか。
(3) (1) と (2) を重ね合わせると「A から流しこみ、B から取り出す」状況になる。AB 間の導線に流れる電流と、AB 間の電位差を求めよ。
(4) 合成抵抗を求めよ。また、 点から 本の導線が出る網では、合成抵抗がどうなるかを答えよ。
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点だけから流しこむ状況なら、対称性で答えが出るのではないか。求めたい状況を、そうした単純な状況の和として作れないか。
解答・解説
方針
無限格子は直並列に分解できないが、対称性と重ね合わせの原理が使える。「 点から流しこむ」だけなら対称性で電流が等分される。 つの単純な状況を足して、求めたい状況を作るのが要点である。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 無限格子は、直列にも並列にも分解できない。まともに解こうとすると無限個の連立方程式になる。
ここで効くのが つの原理である。
つは対称性。 点から流しこんで無限遠へ逃がすだけなら、 方向はまったく対等なので電流は等分される。
もう つは重ね合わせ。回路が線形なので、 つの状況の解を足したものが、電流源を足した状況の解になる。求めたい「A から入れて B から出す」を、単純な つの和として作る。
① A から流しこむ。 A の 本は対等なので
AB 間の導線にも が、A から B の向きに流れる。
② B から取り出す。 こんどは無限遠から入れて B で取り出す。① と鏡のような関係なので、B につながる 本それぞれに が流れこむ。
AB 間の導線については、A から B へ向かう向きに である。
③ 重ね合わせ。 ① は「A から入れて無限遠へ」、② は「無限遠から入れて B へ」である。 つを足すと、無限遠での出入りが打ち消し合い、「A から入れて B から出す」が残る。
AB 間の電流は、どちらも同じ向きなので足し算になる。
この導線 本での電位差が、そのまま AB 間の電位差である。
④ 合成抵抗。
点から 本出る網では、① と ② がそれぞれ になるので
三角格子()なら 、蜂の巣格子()なら である。
まとめ 対称性で解ける単純な状況を つ用意し、重ね合わせて目的の状況を作る。無限に広がる回路でも、この 手で答えが出る。
発展 — 一歩先へ。 隣り合わない 点(たとえば斜めに つずれた点)のあいだの抵抗も同じ考え方で求められるが、計算はぐっと難しくなり、対角の場合は という値になる。円周率が出てくるのは、無限格子の問題がフーリエ変換(積分)に帰着するためである。
隣接の場合だけが対称性できれいに解けるのは、 本の導線が完全に対等だからである。「対称性が使えるかどうか」で難易度が桁違いに変わる、という好例になっている。
各 、 でも 、重ね合わせると で電位差 、合成抵抗は 、一般に
別解
有限の網から近づけるルート。 無限を直接扱うのが不安なら、有限の網で計算して極限を見る方法もある。
、、 …と正方形の網を大きくしていき、中央の隣り合う 点間の抵抗を計算する。網が大きくなるほど、値は に近づいていく。
小さい網では、外周が「切れている」ぶん電流の逃げ道が少なく、抵抗は より大きめに出る。網を広げるにつれて逃げ道が増え、値が下がって収束する。
この方法の利点は、対称性の議論に自信がないときの確認になることである。ただし手計算では でも大変なので、実際には対称性と重ね合わせで解くほうがはるかに速い。
「無限のほうが有限より簡単」という逆転が起きるのは、無限だからこそ完全な対称性が使えるからである。有限の網では外周が対称性を壊してしまう。
ポイント
- 1 点から流しこむだけなら、対称性で電流が等分される
- 線形回路では重ね合わせの原理が使える
- 2 つの単純な状況を足して、求めたい状況を作る
- 隣接 2 点間は 2R/n(正方格子なら R/2)
よくある間違い
- 直並列に分解しようとする(無限格子では分解できない)
- 重ね合わせのとき、AB 間の電流の向きを取り違えて引き算にしてしまう
- 合成抵抗を R/4 としてしまう(重ね合わせで 2 倍になる)