物理 / 電流と磁場
地磁気を測る(タンジェント検流計)
問題
半径 、巻数 の円形コイルを、その面が地磁気の水平成分と平行になるように鉛直に立てる。コイルの中心には、水平面内で自由に回れる小さな方位磁針を置く。電流を流していないとき、方位磁針はコイルの面と平行を向いて静止している。
コイルに電流 を流したところ、方位磁針は 振れて静止した。 とする。
(1) コイルが中心につくる磁束密度を求めよ。
(2) 地磁気の水平成分の大きさを求めよ。
(3) 電流を変えて振れ角を測るとき、 が電流に比例することを示せ。
(4) 角度の読み取りの誤差 の大きさが振れ角によらず一定だとすると、電流の測定の相対誤差 が最も小さくなるのは振れ角がいくらのときか。
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方位磁針が指すのは何の向きか。2 つの磁場は直交している。振れ角と 2 つの大きさは、どんな関係で結ばれるか。
解答・解説
方針
方位磁針は 2 つの磁場の合成の向きを指す。コイルの磁場と地磁気は直交しているので、振れ角の正接が 2 つの磁束密度の比になる。測りにくい地磁気を、測りやすい電流と角度から求める仕組みである。精度の議論は、比例の式を誤差に読みかえて考える。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 地磁気の強さを直接測るのは難しい。しかし「自分でつくれる磁場」と比べるだけなら、比の測定で済む。
方位磁針は磁場の向きを指す。コイルの磁場と地磁気が直交しているなら、指す向きは 2 つの大きさの比だけで決まる。つまり角度を読めば比が分かる。
比が分かれば、既知のコイルの磁場から未知の地磁気が求まる。「未知量を既知量との比で測る」という測定の基本形である。
① コイルの磁場。
② 地磁気の水平成分。 コイルの面は地磁気の水平成分と平行に立てられている。円形電流のつくる磁場はコイルの面に垂直だから、この 2 つの磁場は直交している。
方位磁針は合成した磁場の向きを指すので、直角三角形ができる。
なら だから
実際の地磁気の水平成分は ほどで、この値と合っている。
③ 電流との関係。 ① と ② を合わせる。
は測定のあいだ変わらないので、 は に比例する。この装置がタンジェント検流計とよばれるのはこのためである。
④ どの角度で測るのがよいか。 は に比例するので、 と書ける。角度に の読み取り誤差があると、電流の値には
の誤差が乗る。相対誤差を作ると
が一定なら、これが最小になるのは が最大のとき、すなわち
から離れるほど誤差は大きくなり、 では約 倍になる。だから電流を調整して、振れ角が 付近になるようにして測る。
まとめ 直交する 2 つの磁場の比が正接になる、という 1 つの関係だけで測定が組み立てられる。そして「比を測る装置は、比が のあたりで最も精度が高い」という性質もついてくる。
発展 — 一歩先へ。 「 付近が最良」という結論は、この装置に限らない。長さの比を読むメートルブリッジで、接点が中央付近にあるときに精度が高いのも同じ理由である。
どちらも「比を測る量が、読み取り誤差に対してもっとも鈍感になる点」を選んでいる。測定の設計では、公式そのものより、この種の感度の議論が効いてくる。
、地磁気の水平成分も 、、最良は
別解
1 点で決めず、グラフの傾きで決めるルート。 ② では 1 回の測定から を出したが、実験では電流をいろいろ変えて測るほうが確かである。
③ の関係から、横軸に 、縦軸に をとると、原点を通る直線になる。その傾きは
である。測定点を何点か取って直線を引き、その傾きから
と求める。
この方法には 2 つの利点がある。1 つは、多数の点を使うので読み取り誤差が平均化されること。もう 1 つは、直線が原点を通らなかったときに「方位磁針の初期の向きがずれていた」などの系統的な誤りに気づけることである。
1 点だけの測定では、こうした狂いがそのまま答えに入りこんでしまう。
ポイント
- 方位磁針は合成磁場の向きを指すので、直交する 2 つの磁場の比が tanθ になる
- 未知の地磁気を、つくれる磁場との比で測る
- tanθ は電流に比例する(タンジェント検流計)
- 相対誤差は 2Δθ/sin2θ。最良は θ=45°
よくある間違い
- コイルの面を地磁気に垂直に置いてしまう(それでは 2 つの磁場が平行になり、振れが起きない)
- θ ではなく 90°−θ を使ってしまう(電流を流さないときの向きが基準)
- 相対誤差ではなく誤差そのものを最小にしようとする(誤差だけなら小さい角ほど小さいが、測っている量も小さい)