物理 / 電流と磁場
直線電流が長方形コイルを引く力
問題
長い直線状の導線に電流 が流れている。同じ平面上に長方形のコイルを置き、電流 を流す。
長方形のうち直線と平行な 2 辺の長さは で、直線から近いほうの辺までの距離は 、遠いほうの辺までは である。近いほうの辺を流れる電流の向きは、直線電流と同じ向きである。 とする。
(1) 直線電流が、近いほうの辺の位置につくる磁束密度を求めよ。
(2) 近いほうの辺と遠いほうの辺が受ける力の大きさと向きを、それぞれ求めよ。
(3) 直線と垂直な 2 辺が受ける力の合計はどうなるか。理由とともに述べよ。
(4) コイル全体が受ける力の大きさと向きを求めよ。また、その結果を で表せ。
ヒントを見る
一様な磁場の中に置かれた閉じた回路なら、力の合計はどうなるだろうか。ここで力が残るとすれば、その原因はどこにあるか。
解答・解説
方針
直線電流のつくる磁場は距離に反比例するので、場所によって強さが違う。4 辺を 1 つずつ調べ、打ち消し合う分と残る分に分ける。平行な 2 辺は電流の向きが逆で距離も違うので差が残り、垂直な 2 辺は対称性で消える。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 閉じた回路を一様な磁場の中に置くと、各辺が受ける力は打ち消し合って合計は になる(向きを変えるはたらきだけが残る)。
ところが直線電流のつくる磁場は で弱くなる。場所によって強さが違うので、近い辺と遠い辺で受ける力の大きさが違う。この差が正味の力になる。
だから方針は「4 辺を 1 つずつ調べ、消える分と残る分を仕分ける」である。
① 近い辺の位置の磁束密度。
② 平行な 2 辺が受ける力。 電流が磁場から受ける力は である。
近いほうの辺は
向きは直線に近づく向き、つまり引力である。
遠いほうの辺の位置では
長方形を一周する電流は、向かい合う 2 辺で向きが逆になる。近い辺が直線電流と同じ向きなら、遠い辺は逆向きである。だから遠い辺が受けるのは直線から遠ざかる向きの力、つまり斥力である。
③ 垂直な 2 辺。 この 2 辺は、直線からの距離が から まで同じように変わり、電流の向きだけが互いに逆である。
だから直線から等しい距離にある部分どうしを比べると、受ける力は大きさが同じで向きが逆になる。全体を足すと打ち消し合って である。
④ 全体が受ける力。 残るのは平行な 2 辺の差である。
引力のほうが大きいので、コイル全体は直線に引き寄せられる。文字で書くと
まとめ 力が残ったのは、磁場が場所によって違うからである。一様な磁場ならどんな形の閉回路でも合力は で、回転させるはたらきしか残らない。
発展 — 一歩先へ。 を大きくしていくと となり、力は近い辺の分だけになる。遠い辺は「無限の彼方」に行って効かなくなる、と読める。
磁石が鉄くぎを引きつけるのも、同じ理由による。一様な磁場の中では、磁石(小さな電流の輪と同じもの)は向きを変えるだけで動かない。磁場が場所によって変わるからこそ、引き寄せる力が生まれる。
、近い辺 の引力・遠い辺 の斥力、垂直な 2 辺は打ち消し合う、全体は の引力で
別解
向きと大小関係だけで先に答えを出すルート。 数値を入れる前に、答えの形が決まってしまう見方がある。
まず向きを決める。近い辺は直線電流と同じ向きだから引力、遠い辺は逆向きだから斥力である。2 つは反対向きなので、差が残る。
次に大小を比べる。2 つの辺は長さも電流も同じで、違うのは距離だけである。磁場は だから、近いほうが必ず強い。つまり引力が勝つ。
ここまでで「コイルは直線に引き寄せられる」ことが、計算をせずに確定する。あとは差を計算するだけである。
この見方の利点は、検算になることである。もし計算の結果が斥力になったら、どこかで符号か向きを間違えている。
同じ論法で、コイルの電流を逆向きに流した場合も即座に分かる。近い辺が逆向きになるので斥力が勝ち、コイルは押しやられる。大きさは同じ である。
ポイント
- 一様な磁場では閉回路の受ける合力は 0。力が残るのは磁場が非一様だから
- 平行な 2 辺は向きが逆・距離が違うので、差が正味の力になる
- 垂直な 2 辺は対称性で打ち消し合う
- F=(μ0I1I2L/2π)(1/a−1/b)。b→∞ なら近い辺だけが残る
よくある間違い
- 4 辺すべてが同じ大きさの力を受けると考える(磁場は距離で変わる)
- 遠い辺の力の向きを引力としてしまう(一周する電流なので向かい合う辺は逆向き)
- 垂直な 2 辺の力を「磁場が変わるから残る」と考える(その 2 辺どうしが対称なので消える)