物理 / 電流と磁場
一様な磁場をつくる(ヘルムホルツコイル)
問題
半径 、巻数 の円形コイル 2 つを同じ軸上に間隔 で向かい合わせに置き、どちらにも同じ向きに電流 を流す。
1 つのコイルが軸上につくる磁束密度は、コイルの中心から軸方向に だけ離れた点で
である。 とする。
(1) 2 つのコイルの中点における磁束密度を、 を用いて表せ。
(2) 中点では、軸方向の位置についての磁束密度の変化率(1 階微分)が になる。その理由を述べよ。
(3) 中点のまわりで磁束密度を位置の 2 次まで展開したとき、2 次の項の係数が になる間隔 を求めよ。
(4) (3) の間隔にしたときの、中点の磁束密度の値を求めよ。
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中点をはさんだ左右で、2 つのコイルの役割は入れかわるだけである。そこから 1 階微分について何がいえるか。次に効いてくるのはどの項か。
解答・解説
方針
「一様な磁場がほしい」を式に翻訳すると、「中点のまわりで、位置を変えても磁束密度が変わらないようにしたい」となる。1 階微分は対称性から自動的に になるので、残る 2 階微分を にする条件を探す。それが間隔の決定条件である。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 「できるだけ一様な磁場をつくりたい」という要求を、そのまま式にする。
中点の磁束密度を とし、少しずれた点での値を の多項式として書く。
一様にしたいのだから、 に依存する項を消したい。1 次の項は左右対称という理由で自動的に消える。だから勝負は 2 次の項で、それを消すように間隔 を選ぶ。これがヘルムホルツ配置の考え方である。
① 中点の磁束密度。 中点から見ると、2 つのコイルはどちらも だけ離れている。同じ向きの電流なので、磁場は同じ向きになり、単純に足せる。
② 1 階微分が消える理由。 中点を原点にとると、2 つのコイルは にある。中点から ずれた点での磁束密度は
に比例する。 を に変えると、2 つの項が入れかわるだけで和は変わらない。つまり で、 は偶関数である。
偶関数には奇数次の項が現れないので、1 次の項は である。左右対称な配置にした時点で、1 階微分は自動的に消えている。
③ 2 次の項を消す条件。 とおくと である。微分を 2 回する。
だから、 が条件になる。
共通の因数 でくくって払う。
間隔を半径と同じにすればよい。
④ そのときの磁束密度。 ① に を入れる。
を使って
まとめ 対称に置けば 1 次が消え、間隔を半径に等しくとれば 2 次も消える。だから中央付近では位置を変えても磁束密度がほとんど変わらない。実際、中点から 以内では変化が に収まる。
発展 — 一歩先へ。 同じ考え方を進めると、コイルを 3 つ以上使って 4 次の項まで消す配置もつくれる。より広い範囲で一様な磁場が得られ、精密測定に使われる。
逆に、わざと不均一にする使い方もある。2 つのコイルの電流を逆向きにすると、中点で磁束密度が になり、位置に比例して変化する場ができる。原子を捕まえる磁気トラップは、この配置を利用している。
、対称性から 1 階微分は 、、
別解
山と谷の境目として探すルート。 微分の計算に入る前に、答えの見当をつけておく方法がある。
コイルの間隔がとても狭いとき、2 つはほぼ 1 つのコイルとして働く。すると中点は磁束密度が最も大きい場所、つまり山の頂上になる。
逆に間隔がとても広いとき、それぞれのコイルの近くが強く、まんなかは弱い。中点は谷底になる。
山から谷へ連続的に変わるのだから、その途中に「山でも谷でもない」間隔が必ずある。そこでは中点のまわりの曲線が平らになり、これがまさに 2 次の係数が になる条件である。
こう見通してから ③ の計算をすると、 という答えが「山と谷の境目」という意味をもって受け取れる。図の 3 本の曲線は、この 3 つの場合をそのまま描いたものである。
ポイント
- 一様にしたいという要求は「展開の x に依存する項を消す」と翻訳できる
- 左右対称な配置では 1 次の項が自動的に消える(偶関数)
- 2 次の項が消える条件が d=R(ヘルムホルツ配置)
- 中点の磁束密度は (4/5)^{3/2}·μ0nI/R
よくある間違い
- 2 つのコイルの磁場をベクトルとして向きを考えずに足す(同じ向きの電流だから同じ向きになることを確認する)
- 中点で 1 階微分が 0 になることを条件と取り違える(それは対称性から自動的に成り立つ)
- 巻数 n を磁場の式に入れ忘れる、あるいは 2 つのコイルで二重に数える